2009年から毎年2月に開催されている恵比寿映像祭も今年で15回目。
2023年2月3日(金)から『恵比寿映像祭2023「テクノロジー? Technology?」』として開幕しました。
恵比寿映像祭は各種展示と映像の上映の他にワークショップやライブイベント、トークセッションから構成されていますが、作品展示についてはいち早くほぼ全てを見てきたのでレポートしたいと思います。
15日間の恵比寿映像祭の期間中に足を運んでみようという方の参考になるよう、各展示会場の見どころなどをまとめてみました。
恵比寿映像祭2023
2023年のテーマは「テクノロジー?|Technology?」。テクノロジーがサポートする多種多様な映像表現の実践を検証し、アートと技術との可能性を考察していきます。
会場は恵比寿ガーデンプレイスの東京都写真美術館(写美)がメイン会場的位置付け。多くの来訪者の目に触れるセンター広場でも展示が行われますし、恵比寿〜代官山〜中目黒にかけての様々なギャラリー、アートスペースも連携会場として映像祭に参加しています。
写美など多くの展覧会場は入場無料ですが、映画上映、トークセッションなど有料のイベントもあります。また上映やワークショップなどは開催日が限られているものもありますので、詳しくは恵比寿映像祭の公式サイトで確認してください。
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東京都写真美術館
メイン会場的な位置付けとなる東京都写真美術館では3F、2F、B1Fの展示室を使ってイベントが開催されています。すべて入場無料ですが入場にはオンラインでの日時指定予約が推奨されています。
また1Fのホールでは上映プログラムが組まれていて、目玉はたぶんリトアニア出身の映像作家ジョナス・メカスの生誕百年記念プログラム。他にもアメリカのメディア・アーティスト、ペギー・アーウィッシュ特集や実験映画の飯村隆彦特集、そして東京国際ろう映画祭などが予定されています。もしかしたら上映の隠れたサブテーマはInclusive(インクルーシブ)かもしれません。
写真美術館3F – コミッション・プロジェクト
写美の3F展示室ではこの映像祭のために制作された映像作品が発表されています。
▲選出されたのは荒木悠、葉山嶺、金仁淑、大木裕之という4人のアーティスト。
このうち金仁淑と大木裕之の作品は撮影禁止です。
猫のメークや目の周りに星型のメークをしたミュージシャンの映像が流れています。猫や星型? 世界的なロックバンドKISS・・ではなくてそのコピーバンドのライブ映像と彼らの楽屋裏の映像からなる作品です。
絶命した動物をCGで蘇らせた作品。
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コンピュータ・グラフィックス
3FのロビーではCG(コンピュータ・グラフィックス)の作品をLD(レーザー・ディスク)で連続上映しています。
1967年から1988年、コンピュータで画像を描くこと自体が新しかった時代からCGが一般的になるまでの〈コンピュータ・グラフィックス アンソロジー〉、1989年から1992年のCGがさらに一般化した時代の作品群〈コンピュータ・グラフィックス アクセス89-92〉の2本です。
▲どこから探してきたのかSONYのトリニトロンカラーテレビと、動いているのが奇跡のようなパイオニアのレーザー・ディスク再生機。最後の力を振り絞って人類がこれまで制作してきたCG映像を流し続けています。
それぞれの作品のリストも掲出されていますが、リストを読んでいるだけでタイムスリップしそうです。時間に余裕があれば全編続けて見てみたいです。
▲3Fロビーのモニターと同時に2Fロビー(ミュージアムショップ前)のスクリーンでも上映されています。
内容は同じですからこちらでゆっくり見るのも良いでしょう。
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写真美術館2F
2F展示室はアートと技術の関係がテーマです。
▲2Fの目玉はアメリカのダンサー、トリシャ・ブラウンの映像だと思うのですが、残念ながら撮影禁止です。
グレイトフル・デッドのUncle John’s BandをBGMに踊る姿など思わず見入ってしまう作品です。
暗い会場の天井から吊り下げられたモニターに写真が映っていますがよく見ると画像が動いているという作品です。
▲モノクロ画像のようで時々カラーが混じってくるところが面白い。
映像を表現するのに大事な液晶ディスプレイにパイプを突き刺し破壊しながら何か映像を表示させようというアンビバレントな作品。
普段は気にもしない液晶モニターの構造もよく分かります。
▲これは上海出身のアーティスト、ルー・ヤンの映像作品。でも中国とか出身のアーティストはポップカルチャー史を持たないせいないか、なんとも独特ですね。
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写真美術館B1F
B1Fにはアーティストたちによる都市や自然を使った表現の歴史がテーマですかね。
▲杉浦邦恵や山沢栄子といった作家たちの写真作品が並んでいます。
▲自然と産業の関係性についてのインスタレーションを行う梅沢英樹+佐藤浩一のユニットによる作品。
床に置かれた照明器具みたいなの。これも実は作品、インスタレーションの一部かもしれません。
で、B1Fの目玉は展示室の一番奥にあるインドネシア出身アーティスト、フィオナ・タンの「リフト」。それと展示室入口ロビーで上映されている50年代に活動した日本の芸術グループ「実験工房」(名付け親は瀧口修造)のオートスライドによる映像です。どちらも撮影禁止ですが必見です。
実験工房の映像に協力として出てくる ”東京通信工業” は今のSONYです。
恵比寿ガーデンプレイス センター広場
ガーデンプレイスのセンター広場にも作品が展示されています。
ただしこれは日が暮れてから見てください。
▲東京2020オリンピック・パラリンピックエンブレムで一躍有名になったデザイナーの野老朝雄(ところ・あさお)とドローン演出を手掛けた平本知樹、井口皓太の3人による作品《FORMING SPHERES》です。
これ、開幕数日前から製作が始まっていて、野老さんの作品だからきっと巨大な市松模様の球体が出現するんだろうなぁと思っていました。でも2月3日の朝に来てみたら確かに市松模様の球体はあるけどサイズが思っていたものより全然小さい。
作品の説明を聞くと、どうやら昼間の明るいところで見てもよく分からないらしいのです。なので鑑賞のタイミングは日没後がお勧めです。
でも日没は17時過ぎ、作品が見られるのは20時までですから、その間の3時間が勝負です!
▲日が暮れて夜になれば、市松模様の球体が光っているのも分かりますし、それらが影を落として地面に市松模様を描いているのもよく分かります。
これは動画で見てもらうのが分かりやすいですね。
▲一番派手に動いている時です。
10分に1回くらい、こんな感じの作品が見られます。
恵比寿ガーデンシネマ
しばらく休館していた恵比寿ガーデンシネマ(YEBISU GARDEN CINEMA)もセンタープラザのリニューアルに合わせて再開しています。
▲ガーデンシネマでは恵比寿映像祭の一環として、2月10日に中国映画が上映される予定です(有料)。
でも1月27日(金)から2月16日(木)までジム・ジャームッシュ特集で連日の映画が上映されています。正直恵比寿映像祭のプログラムとしての映画を見るより、ジャームッシュをきちんと観ておいた方が良いと思います。
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地域連携プログラム
恵比寿映像祭は写真美術館をメイン会場として恵比寿周辺のギャラリーなどでも展開されています。
その中からいくつかご紹介します。
MA2 Gallery
恵比寿ガーデンプレイスにもほど近いMA2galleryでは小瀬村真美の「Before and Beginning」展を開催しています。これがとてもよかったです。
個人的には今回の恵比寿映像祭で一番好きな作品でした。
▲過去の”変な絵画”からインスピレーションを得て、それを写真で再現する作品です。
▲今回は映像作品も展示されていて、この本棚に展示されているのはタブレットに映し出される30分の映像。よーく見ていないと静止画と思ってしまいます。
写美まで来たら絶対併せて観ておくべき展覧会です。
日仏会館
日仏会館も恵比寿ガーデンプレイスの近く。というより敷地的には斜向かいの施設です。
▲ここでは「オートメイテッド・フォトグラフィ」というスイスのECAL/ローザンヌ大学の学生たちの作品を展示しています。
また日仏会館のホールでは2月10日(金)に斬新なMVでも有名なミシェル・ゴンドリーの長編映画「ムード・インディゴ うたかたの日々」が上映されます。ボリス・ヴィアン原作「うたかたの日々」をミシェル・ゴンドリーの映像で観られる機会です。
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NADiff a/p/a/r/t
恵比寿のNADiff a/p/a/r/t のビルでも展示が行われています。
▲NADiff(ナディッフ)のウィンドウ・ギャラリーではシシヤマザキの作品が上映中。
地下の展示室では大竹彩子の展覧会「VIVTONE」が開催されていますが、それは恵比寿映像祭とは無関係な展覧会です。
MEM
エレベーターで3Fへ上るとギャラリーMEM。
大竹伸朗とか森山大道とかいろいろなジャンルの作家たちからインスピレーションを得たような作品です。
AL
代官山にも近い「AL」も会場です。
ギャラリーの中では唯一、有料の会場で500円。その代わりお茶かコーヒーがいただけます。
▲佐藤好彦、メガネ、毛利悠子ほかの作品が展示されていますが、ひときわ目を引くのがこの作品。ダブルネックギターならぬクインタプル・ギター?
▲本物のフェンダー・マスタングを使っているみたいです。マスタングが代名詞なチャーさんが見たらなんと言うでしょう。
▲ストラスキャスターを12本使った作品も。これ、実際に演奏するパフォーマンスをしたら絶対面白いと思います。
▲パフォーマンス系はこの自家発電ポールダンス。写真左に見えるポールダンス用のポールを手で回すと電気が発生して、照明が付いたりラジカセから音が出ます。鑑賞者が自分でポールを回してもいいですし、作者パフォーマンスを披露したりするそうです。
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アートフロントギャリー
代官山の現代美術ギャラリー、アートフロントギャラリーも会場。恵比寿から代官山までは歩いて移動できる距離なので、写美と併せて訪問しておきたいです。
展覧会は「ディストピア:記憶の変遷」。現代におけるディストピアがテーマです。
女性が極端に抑圧されているアフガニスタンなどイスラム教の戒律が厳しい地域でも、女性がスケボーをすることだけは許さている、そうした状況にインスピレーションを得たのだそうです。
▲手前鋭利な断面を見せる石はウクライナの作家、ジャンナ・カディロワによる「パリャヌィツャ」。石のパンという作品です。
もちろん2022年制作です。
N&A Art SITE
代官山のアートフロントから目切坂を下りた中目黒のギャラリー「N&A Art SITE」でも展覧会を開催しています。
展覧会は「Paradise Reborn: Rewilding Palmyra ー楽園の再生:パルミラ環礁の再自然化ー」。ハワイ在住のアーティストでもある日系アメリカ人、タイジ・テラサキの展覧会です。
InstagramのAR作品もあり飽きない展覧会です。
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恵比寿近隣のギャラリー
あと、恵比寿近隣のいくつかのスポットでも展示が行われています。
▲広尾にも近い老舗ギャラリー 工房親で展示されているのはブラジルのアーティスト、アナイ・カレニンの作品。
▲工房 親の裏にはMuCuLというアートスペースがあり、ここでは佐藤慶子の「みかがみ」という映像作品が上映されています。
あと、プログラムには「景丘の家」でも展示作品があるように記載されていますが、実際に訪問したところ展示はありませんでした。ワークショップは開催するみたいです。
POETIC SCAPE
恵比寿からはちょっと遠いですが、中目黒のPOETIC SCAPE(ポエティック・スケープ)も会場です。
▲恵比寿映像祭としての参加は兼子裕代の「APPEARANCE」展。
主にカリフォルニアの人々の歌う姿を捉えた写真たちです。
▲中目黒駅からもかなり歩く住宅街の一角のアートスペースがPOETIC SCAPEです。ジャニーズファンの方ならキムタクの自宅の近くと説明すればだいたいどのエリアか分かってもらえるかと思います。
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「Technology?」をめぐるシールラリー
恵比寿映像祭の各会場で配布しているシールを集めるとオリジナルトーロバッグがもらえる『Technology?」をめぐるシールラリー』も実施されています。
シールは会場ごとに異なるのでそれだけでも記念になりますし、トートバッグは映像祭のガイドブックや作品リスト、フライヤーなどを入れるのにぴったりなサイズなので映像祭を巡る際にも便利に使えます。
トートバッグをもらうにはシールを3枚集めるだけ。3ヶ所も回るのは大変そうに見えますが、至近距離にある日仏会館、センタープラザ、写美でシールを貰えば写美ですぐにトートバッグと引き換えてもらえます。
会期は2月19日(日)までと短いですが、今の映像文化を知る良い機会です。写美を中心に恵比寿や代官山と徒歩圏内に多くの会場があるので休日にひと回りしてみてはどうでしょうか。
恵比寿映像祭2023 基本情報
イベント名 | 恵比寿映像祭2023 「テクノロジー? Technology?」 |
期間 | 2023年2月3日(金) 〜 2月19日(日) 15日間、月曜休み コミッションプロジェクト(写美3F)のみ3月26日(日)まで |
会場 | 東京都写真美術館、恵比寿ガーデンプレイスセンター広場 近隣のギャラリー等 |
時間 | 10:00 〜 20:00 (最終日は18:00まで) 各ギャラリーにより詳細は異なる |
料金 | 無料 上映など一部プログラム、一部ギャラリーは有料 |
予約 | オンラインによる日時指定予約推奨 |
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