南麻布のドイツ大使館の壁に《大阪・関西万博 2025》の開催にちなんで《万博建築の変遷 ドイツパビリオン 1851−2025年》という壁画が登場しています。
港区内には数多くの大使館があるのですが、そのうち広尾駅近くの南麻布に位置するのが「ドイツ連邦共和国大使館」、通称 ”ドイツ大使館” です。
南部坂を挟んで有栖川宮記念公園と隣接しています。元麻布から南部坂を下って広尾に抜けようとすると、右側に有栖川公園、左側にナショナル麻布の手前までずっと壁が続いているのが分かります。この壁の内側がドイツ大使館とドイツ大使公邸です。
戦前は永田町にあったドイツ大使館ですが、空襲で建物は焼失したうえ、戦後はGHQに土地を接収されてしまったそうです。日本もドイツも敗戦国だったのでアメリカに文句は言えなかったのでしょう。
その後、日本政府が補償の意味もあって(当時の)1円でこの南麻布の土地を(当時の)西ドイツへ売却したのだそうです。
▲この壁には毎年その年にちなんだ壁画が描かれ道行く人の目を楽しませてくれます。
2021年は日独交流160年記念、2022年はアインシュタイン来日100年、2023年は「ドイツ発見(Discover Germany)」をテーマにした観光写真、2024年はベルリンと東京の友好都市提携30周年記念アート「BERLIN ✕ TOKYO」でした。
そして2025年は《大阪・関西万博 2025》ちなんでの《万博建築の変遷 ドイツパビリオン 1851−2025年》です。
建築家であり作家、キュレーター、画家でもあるトーマス・シュリーファース(1964生)が描いた、1851年ロンドン万博からの174年間にドイツを体現したドイツパビリオンの絵が描かれています。
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大阪・関西万博 2025
関西圏以外での盛り上がりは今ひとつで普段の話題に上がることも少ないですが、2025年4月13日(日)から10月13日(月)までの会期で、大阪では「EXPO 2025 大阪・関西万博」が開催されています。
▲壁画の一番広尾寄り(下方)、大使館正門のところには大阪・関西万博ドイツパビリオンを含む絵が展示されています。
大阪・関西万博でのドイツパビリオンは「循環経済(サーキュラーエコノミー)」をテーマにしたもので、タイトルは「わ! ドイツ」です。
循環の環(わ)でもあるので、環状の建物がいくつも並んでいるようです。
大阪万博 1970
日本で万国博覧会が開催されるのは大阪・関西万博が20年ぶり3回目。その間にXX博覧会という名称の ”特別博” も開催されていますが、一般博(現在は 登録博覧会)は1970年大阪、2005年愛知、そして2025年の大阪・関西の3回だけです。
▲1970年の大阪万博でのドイツパビリオン(当時は西ドイツ館)。当時は東西に分裂していた時代で東ドイツは不参加でしたが ”西ドイツ館” と名乗っていたようです。
資料によるとメインの展示室は地下にあり、地上には球形のコンサートホールが設置されていたようです。
▲このコンサートホールでは連日ドイツの現代音楽の作曲家カールハインツ・シュトックハウゼンが自身の《Spiral(シュピラール,螺旋)》を生演奏していたそうです。
今では考えられないような豪華なイベントですが、当時の日本の一般聴衆がどこまで理解できたんでしょうね。
(100万人が聴いたと書かれている資料もありますがホールの収容人員を鑑みるとちょっと眉唾です)
▲ドイツ大使館の壁に展示されるトーマス・シュリーハースの作品。
南部坂を下から登ると最新の万博から最初のロンドン博へ遡って見ることができますし、上から広尾側へ見ていけばロンドン博から大阪・関西万博へと時系列に沿って見ることができます。
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万博におけるドイツ館
2025年の大阪・関西万博、1970年の大阪万博と見てきたので、遡って過去の万博でのドイツ館/西ドイツ館を見てみます。
▲大阪万博1970とその前のカナダのモントリオール万博1967。
テント状の建物が西ドイツ館で、設計はまだ若手だったフライ・オットー。彼はハノーヴァー万博2020での日本館を坂茂と協働して手がけています。
モントリオール万博はバックミンスター・フラーのアメリカ館やアビタ67団地など建築分野では今なお話題になり、入場者数も5,000万人を超える(大阪・関西万博の目標値の2倍)など大成功した万博として記憶されています。
第二次世界大戦直前、ドイツはナチス・ドイツの時代で日本とは日独防共協定などを締結していた頃です。
19世紀最後の国際博覧会で、ヨーロッパの辺境から工業国家へ変貌するドイツの様子が伺えます。
▲南部坂の一番上には1851年のロンドン万博から2020年のドバイ万博(コロナのため実際は2021年開催)までのドイツ館/西ドイツ館をまとめた絵画が展示されています。
▲こうやってドイツ館の歴史を俯瞰して見せられると、もし大阪・関西万博に行く機会があったらドイツパビリオンも見ておこうかなぁという気になりますね。
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ドイツ大使公邸と庭園
この壁面のインスタレーション以外にもドイツ大使館と大使公邸は見ておくポイントがあります。
実はこの土地は日本政府が1円で売却する前は小泉策太郎という政治家の敷地でした。彼は古美術収集家だったので立派な庭園を築き集めた美術品を庭園に配置していたようなのです。
▲今でもその庭園や四阿などは残っているのですが、ドイツ大使館には一般公開のようなイベントはないのでドイツ大使館から招待でもされない限り内部に入って鑑賞することはできません。
坂の上の大使公邸正門脇に建つ「不老門」刻まれた立て石。詳しい由来は不明ですが小泉策太郎が収集した品のようです。
▲これは大使館の敷地の東端の「武家門」。
これも小泉策太郎がどこからか移設してきたもので詳しい由来は不明。もっともドイツ大使館は何か資料を持っているかもしれませんが。
ドイツ大使館沿いに南部坂を上り、大使館の先の角を右へ曲がった少し先からまたドイツ大使館の壁が続きます。その途中にこの「武家門」があります。柵越しで見ることになりますがいったいいつ頃のものか、どこから持ってきたのか観察してみて欲しいです。
さらに武家門のある壁沿いに道なりにどんどん進むとフランス大使公邸に突き当たります。ドイツ大使館とフランス大使館て意外と近いんですね。
ドイツ大使館の場所とアクセス
麻布十番や元麻布側からの場合、元麻布運動場やありすいきいきプラザから広尾の方へ下って行くと四角い黒い建物が見えてきます。
▲ドイツ大使館の本館です。
ここから有栖川公園の下まで続く坂道が「南部坂」。港区には名前の由来も同じもう一つの ”南部坂” がありますが、こちらは忠臣蔵とは関係ない南部坂です。
広尾駅からは1番出口を出て有栖川公園の方に向かい、ナショナル麻布から南部坂を上がればするにドイツ大使館です。
ドイツ大使館の壁画の場所
ドイツ大使館の南部坂沿いの壁に描かれています。
麻布十番と広尾の間は歩ける距離なので、壁画を見ながら麻布十番から広尾へ、あるいはその逆向きで散歩してみるのも楽しいでしょう。
有栖川公園やナショナル麻布を訪問する際はドイツ大使館の壁画も併せて見学してみてください。
ドイツ大使館 基本情報
名称 | 駐日ドイツ連邦共和国大使館 |
住所 | 港区南麻布 4-5-10 |
最寄駅 | 広尾駅 |
開館時間 | 月曜〜木曜の11:00 – 12:00(ビザ・パスポートの受取) |