南麻布のドイツ大使館
数多い港区内の大使館のうち広尾駅近くの南麻布に位置するのが「ドイツ連邦共和国大使館」、通称 ”ドイツ大使館” です。
南部坂を挟んで有栖川宮記念公園と隣接しています。元麻布から南部坂を下って広尾に抜けようとすると、右側に有栖川公園、左側にナショナル麻布の手前までずっと壁が続いているのが分かります。この壁の内側がドイツ大使館とドイツ大使公邸です。
戦前は永田町にあったドイツ大使館ですが、空襲で建物は焼失したうえ、戦後はGHQに土地を接収されてしまったそうです。日本もドイツも敗戦国だったのでアメリカに文句は言えなかったのでしょう。
その後、日本政府が補償の意味もあって(当時の)1円でこの南麻布の土地を(当時の)西ドイツへ売却したのだそうです。
▲ドイツ大使館の正門前から南部坂の上を見たところ。セキュリティ的に正門を撮影するのはNGなので横からだけです。
坂の上の大使公邸の正門までコンクリートの壁が続いているのが分かります。この壁が今日のテーマです。
ちなみに左に見える木々が有栖川公園です。
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日独交流160周年の壁画
1861年に当時の江戸幕府とプロイセン王国が修好通商条約を締結したのが正式な日独関係の始まりということになっているので、今年2021年はそれから160周年にあたります。
この160周年を記念して様々なイベントが行われているのですが、そのうちの一つがこのドイツ大使館の壁画を使った作品です。
この壁にはドイツ語を学びましょうみたいな小規模なものから。ベルリンの壁崩壊25周年の壁画のような大作まで、いつも何かしらの作品が描かれていたり、交流の場として機能しています。
でも今回のように壁全体を大作で埋め尽くすようなイベントは初めてかもしれないです.
フォン・シーボルトと北里柴三郎
▲南部坂の上の方、大使公邸の正門に近いところに描かれているのは、フィリップ・フォン・シーボルトと北里柴三郎。
医者であり博物学者でもある人物です。日本で最初の女医となる ”オランダおいね” こと楠本イネの父親でもありますね。シーボルトというとオランダ人かと思っていましたが実はドイツ人だったんですね。
またシーボルトは日本からの追放が解けて再来日した際、今の飯倉公園のところにあった外国人向け宿泊施設に住んでいました。また楠本イネは晩年に異母弟のハインリヒ(小シーボルト)が建てた麻布の家に住んで亡くなったということで、シーボルトもイネもなにかと麻布に縁のある二人です。
北里柴三郎は日本の細菌学の偉人です。ドイツ留学してコッホの下で研究しています。そして彼の伝染病研究所は芝公園、愛宕町と移転し最終的に今の白金に落ち着き北里大学になっています。
それより何より、2024年から千円札紙幣の肖像に使われますから、数年後にはみんながよく知るお馴染みな顔になる予定です。
この壁画の作品解説はこちらをどうぞ。(Instagramが開きます)
ピナ・バウシュと森鴎外
森鴎外は明治の文豪にして帝国陸軍の軍医のトップ。明治時代の医者ですからドイツ語はばっちり。ドイツ留学の経験もあります。
留学時代のドイツ人女性との恋愛をベースに書き上げたのが代表作となる小説「舞姫」。
そしてピナ・バウシュはドイツのコンテンポラリーダンスの舞踊家、つまり舞姫ですね。
森鴎外の肖像も書いてあるなぁとだけ思ってたのですが、女性の方がピナ・バウシュだと気づいて思わず唸りましたね。そういう組み合わせだったのかと。
作品解説はこちらをどうぞ。
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クニフラーと中川清兵衛
▲右の日本人は中川清兵衛という人物。日本初の国産ビール醸造技師だそうです。
明治初期にドイツに渡ってビールづくりを修行し、帰国後は開拓使麦酒醸造所(今のサッポロビール)の開業に貢献したそうです。
作品解説はこちらをどうぞ。(Instagramが開きます)
サッカーと弓道
ドイツと言えばサッカー。ワールドカップで4回の優勝を誇る強豪国ですね。▲ということで、壁画にもフットボールが登場します。
それと弓道。空手や柔道など日本の武道はドイツでも人気があるそうです。
この壁画の解説はこちらをどうぞ。
東西ドイツ統一やダイバーシティ
▲さらにいくつか日本とドイツ縁の人物が続き、壁の一番下の壁画です。
東西ドイツ統一を喜ぶ人物と桜などが描かれています。
この壁画の解説はこちらをどうぞ。
坂の下から順番に見ていくと、ありきたりな友好モノから始まって、舞姫と舞姫でおぉっとなって、最後にこの地と縁も深い科学者で終わるという構成が見事ですね。
壁画を鑑賞するなら坂の下から始めることをおすすめします。
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ドイツ大使公邸と庭園
壁画以外にもドイツ大使館と大使公邸は見ておくポイントがあります。
実はこの土地は日本政府が1円で売却する前は小泉策太郎という政治家の敷地で、彼は古美術収集家だったので立派な庭園を築き集めた美術品を庭園に配置していたようなのです。
▲今でもその庭園や四阿などは残っているのですが、ドイツ大使館には一般公開のようなイベントはないのでドイツ大使館から招待でもされない限り内部に入って鑑賞することはできません。
坂の上の大使公邸正門脇に建つ「不老門」刻まれた立て石。詳しい由来は不明ですが小泉策太郎が収集した品のようです。
これも小泉策太郎がどこからか移設してきたもので詳しい由来は不明。もっともドイツ大使館は何か資料を持っているかもしれませんが。
ドイツ大使館沿いに南部坂を上り、大使館の先の角を右へ曲がった少し先からまたドイツ大使館の壁が続きます。その途中にこの「武家門」があります。柵越しで見ることになりますがいったいいつ頃のものか、どこから持ってきたのか観察してみて欲しいです。
この武家門の反対側に広い空き地が広がっています。南麻布のこんな場所にもったいないと思ってしまいますが、この土地はクウェート政府が所有する土地です。たぶん三田の聖坂のクウェート大使館をここに移転する予定なんじゃないでしょうか。
↑すいません、クウェート政府ではなくカタール政府でした。麻布学園中高と隣接しているカタール大使館がこっちへ移転するのかもしれませんね。
あと武家門のある壁沿いに道なりにどんどん進むとフランス大使公邸に突き当たります。ドイツ大使館とフランス大使館て意外と近いんですね。
ドイツ大使館は中が全然見えませんが、フランス大使公邸のパーティーは中が見えることがあるので通りかかった際はちょっと覗いてみてもいいかもしれません。
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ドイツ連邦共和国大使館
▲麻布運動場やありすいきいきプラザから広尾の方へ下って行くと四角い黒い建物が見えてきます。
ドイツ大使館の本館です。
▲大使公邸の正門の先から坂の下の方まで壁が続いています。▲有栖川公園の中からも大使館の建物と壁画の一部を見ることができますよ。
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ドイツ大使館の壁画の場所
ドイツ大使館の南部坂沿いの壁に描かれています。
広尾の駅からなら有栖川公園の方へ歩いて、有栖川公園とナショナル麻布の間の坂道、南部坂を少し登るとドイツ大使館です。
麻布十番と広尾の間は歩ける距離なので、壁画を見ながら麻布十番から広尾へ、あるいはその逆向きで散歩してみるのも楽しいでしょう。
たぶん2021年末までは今の日独交流160周年の壁画は残っていると思いますが、また来年以降も別の壁画が描かれたり、他の楽しい企画が予定されていると思います。
有栖川公園やナショナル麻布を訪問する際はドイツ大使館の壁画も一緒にチェックしたいですね。
ドイツ連邦共和国大使館
港区区 南麻布 4-5-10
開館時間 : 月曜 – 木曜の 11:00〜12:00 (ビザ・パスポートの受取)