南麻布のドイツ大使館
数多い港区内の大使館のうち広尾駅近くの南麻布に位置するのが「ドイツ連邦共和国大使館」、通称 ”ドイツ大使館” です。
南部坂を挟んで有栖川宮記念公園と隣接しています。元麻布から南部坂を下って広尾に抜けようとすると、右側に有栖川公園、左側にナショナル麻布の手前までずっと壁が続いているのが分かります。この壁の内側がドイツ大使館とドイツ大使公邸です。
戦前は永田町にあったドイツ大使館ですが、空襲で建物は焼失したうえ、戦後はGHQに土地を接収されてしまったそうです。日本もドイツも敗戦国だったのでアメリカに文句は言えなかったのでしょう。
その後、日本政府が補償の意味もあって(当時の)1円でこの南麻布の土地を(当時の)西ドイツへ売却したのだそうです。
▲ドイツ大使館の正門前から南部坂の上を見たところ。坂の上の大使公邸の正門までコンクリートの壁が続いているのが分かります。
この壁には毎年その年にちなんだ壁画が描かれ道行く人の目を楽しませてくれます。
2021年は日独交流160年記念、2022年は何故かアインシュタインでした。そして2023年は「ドイツ発見(Discover Germany)」をテーマにした写真です。
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ドイツ連邦共和国
第二次大戦後、西ドイツと東ドイツ(ドイツ民主共和国)に分断されていたドイツが再統一されたのが1990年。再統一後まだ30年ちょっとしか経っていないのですね。
日本との関係では、1861年に当時の江戸幕府とプロイセン王国が修好通商条約を締結したのが正式な日独関係の始まりということになっていて、もう160年以上の歴史があります。その間、いろいろ影響を受けたり同盟を結んだりと日本とは深い関係にある国です。
ドイツ発見(Discover Germany)の壁画
2023年の壁画は写真パネルが貼られています。
「ドイツ発見」ということで、16ある連邦州の都市や観光地など自慢の風景写真が展示されています。
パンデミックもひと段落したみたいだし、休みを取ってドイツへ観光旅行にでも出かけようかという気になる、気にさせる壁画です。
全部見ると16州全部回った気分になれます。
▲坂の一番下には南ドイツのヴィプリンゲン修道院の図書館。ロココ調の美しい図書館の部屋の写真から始まります。
写真で左端はポツダムにあるオランジュリー宮殿。ルネサンス様式ですけど日本でいえば江戸時代末期の建築です。
それより日本人にとっては忘れられない地名、ポツダムって旧東ドイツだったんですね。
では気に入った写真、場所を紹介します。本当は全部で16枚あるので、ここで紹介し切れなかった残りはぜひドイツ大使館へ足を運んでみてください。
ベルリン
旧西ドイツの映画や音楽からは享楽的で退廃的な都市というイメージがありますが、もちろんこうした歴史を感じる建物や景観もあるわけです。
かつては旧東ドイツの中の飛び地のように西ベルリンがあったのは知っているのですが、よく地図を見るとドイツの中では東の端、ほとんどポーランドとの国境にも近い場所なんですね。
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ハンブルグ
ビートルズファンなら一度は行ってみたいハンブルグ。
▲リーゼントに革ジャンで、ヤバいクラブの箱バンとして連日連夜ロックンロールを演奏していたビートルズ・・・なイメージですけど、実際は洗練された港町のようです。
日本でいったら横浜、神戸といったところでしょうか。
フランクフルト
金融や商工業の街として日本人も多く住んでいるというフランクフルト。
だだっ広いエリアの真ん中に高層ビルが建ち並ぶ様子はサンフランシスコなどアメリカの都市みたいにも見えます。
ブラウンシュヴァイク
北部ニーダーザクセン州ブラウンシュヴァイク市の旧市役所庁舎。
第二次大戦で多くが破壊されたんでしょうけど、地方ではこのように古い建物がそのまま残っているのでしょう。
フロイデンベルグ
一番可愛いのがここ。中部ノルトライン=ヴェストファーレン州フロイデンベルグの旧市街の街並みです。
三角屋根に白壁。そこに雪が積もって完全にモノクロームな世界です。
これは行ってみたいですね。
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グーテンフェルス城
西部ラインラント=プファルツ州のグーテンフェルス城の写真も印象的です。
周囲はワイン用のぶどう畑、左下を流れる川はライン川。
ドイツの田園地帯のイメージそのままですね。しかもこのお城はつい最近までホテルとして使用されていたのだそうです。
ザクセン・スイス
ドイツの山岳地帯というと南部のバイエルン州がまず思い浮かびますが、東端のザクセン州にもザクセン・スイスという山岳地帯があるそうです。
クヴェトリンブルグ
▲ドイツ北東部のザクセン=アンハルト州クヴェトリンブルクの旧市街。
これもおとぎ話の世界みたいですし、古いヨーロッパな街並みのイメージそのままです。でもやっぱりドイツだなぁと感じるのはなぜでしょう。
ヴェスターヘーヴァー
ドイツ北部のシュレースヴィヒ=ホルシュタイン州。ユトランド半島の根っこにあたり、北はデンマークです。
▲紅白の塔はヴェスターヘーヴァーの灯台、有名な観光地だそうです。
その先はバルト海じゃなくて北海。
ヘルツォークシュトゥール城館
これは何だろうとビックリしたのが「テューリンゲンの森のヘルツォークシュトゥール城館 (Herzogstuhl im Thüringer Wald)」。
▲ドイツ中部テューリンゲン州のこの建物は「ヘルツォークシュトゥール」あるいは「公爵の椅子(Duke’s Chair)」と呼ばれる建物。
ドイツ森林地帯での狩猟文化を残す施設の一部らしいです。もともとは地元貴族がプライベートに使うための別宅だったようです。そのため ”公爵の椅子” という別名があるようです。
▲アップにしますね。それにしても何という建物でしょうか、これ。
そして、日本で紹介されるのは初めてじゃないでしょうか。「ヘルツォークシュトゥール」にしろ「Herzogstuhl」にしろ、日本語の資料がまったく見つかりません。”Herzogstuhl im Thüringer Wald” で検索するとドイツ語の説明は見つかるのですが。
広尾から元麻布方面は、逆に広尾駅方面へ。南部坂を通る機会があったらぜひ全部に目を通してみてください。
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ドイツ大使公邸と庭園
壁画以外にもドイツ大使館と大使公邸は見ておくポイントがあります。
実はこの土地は日本政府が1円で売却する前は小泉策太郎という政治家の敷地でした。彼は古美術収集家だったので立派な庭園を築き集めた美術品を庭園に配置していたようなのです。
▲今でもその庭園や四阿などは残っているのですが、ドイツ大使館には一般公開のようなイベントはないのでドイツ大使館から招待でもされない限り内部に入って鑑賞することはできません。
坂の上の大使公邸正門脇に建つ「不老門」刻まれた立て石。詳しい由来は不明ですが小泉策太郎が収集した品のようです。
▲これは大使館の敷地の東端の「武家門」。
これも小泉策太郎がどこからか移設してきたもので詳しい由来は不明。もっともドイツ大使館は何か資料を持っているかもしれませんが。
ドイツ大使館沿いに南部坂を上り、大使館の先の角を右へ曲がった少し先からまたドイツ大使館の壁が続きます。その途中にこの「武家門」があります。柵越しで見ることになりますがいったいいつ頃のものか、どこから持ってきたのか観察してみて欲しいです。
この武家門の反対側は現在工事中。たぶんですがカタール大使館がこっちへ移転するのだと思います。空き地の向こうに見えるのはヨーロッパハウス(EUハウス)。EU〜カタール〜ドイツと3つの大使館と外交使節が並ぶことになるのでしょう。
あと武家門のある壁沿いに道なりにどんどん進むとフランス大使公邸に突き当たります。ドイツ大使館とフランス大使館て意外と近いんですね。
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ドイツ大使館の場所とアクセス
▲麻布運動場やありすいきいきプラザから広尾の方へ下って行くと四角い黒い建物が見えてきます。ドイツ大使館の本館です。
ここから有栖川公園の下まで続く坂道が「南部坂」。港区には名前の由来も同じもう一つの ”南部坂” がありますが、こちらは忠臣蔵とは関係ない南部坂です。
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ドイツ大使館の壁画の場所
ドイツ大使館の南部坂沿いの壁に描かれています。
広尾の駅からなら有栖川公園の方へ歩いて、有栖川公園とナショナル麻布の間の坂道、南部坂を少し登るとドイツ大使館です。
麻布十番と広尾の間は歩ける距離なので、壁画を見ながら麻布十番から広尾へ、あるいはその逆向きで散歩してみるのも楽しいでしょう。
有栖川公園やナショナル麻布を訪問する際はドイツ大使館の壁画も併せて見学してみてください。
ドイツ大使館 基本情報
名称 | 駐日ドイツ連邦共和国大使館 |
住所 | 港区南麻布 4-5-10 |
最寄駅 | 広尾駅 |
開館時間 | 月曜〜木曜の11:00 – 12:00(ビザ・パスポートの受取) |