高輪消防署二本榎出張所
港区内には麻布、芝、赤坂それと高輪という4つの消防署があるのですが、その中で一番馴染みがある消防署というと高輪署の二本榎出張所ではないでしょうか。
高輪警察署と並んで建つ、丸い塔(望楼)がちょこんと乗ったあの建物です。消防署というとどうしてもあの姿をイメージしてしまいます。
その二本榎出張所は築造が1933年ですから築後ほぼ90年。実際東京都の歴史的建造物にも指定されています。昔はここが高輪消防署だったのですが、桜田通り沿いに新庁舎ができて移転してからは高輪消防署の出張所という扱いになっています。
でも築90年の歴史的建造物を使用しながら、いまも消防車両が配置され職員も常駐する現役の消防なのです。
しかも、この歴史ある消防庁舎はその内部を見学することが可能なのです。
見学は平日はもちろん土日祝日もOK。子どもたちを連れて夏休みや冬休みの社会見学にもピッタリです。
PR
消防署の外観
高輪警察署の交差点角にずっと昔から経つ消防署。もうこれがあって当然という風景です。
▲その建物は鉄筋コンクリートの三階建。てっぺんに乗っている青いシンボルマークまでの高さが30mあるそうです。
今となってはどうということのない建物ですが、90年前の周囲は平屋かせいぜい2階建ての木造建築ばかり。
3階のさらに上に乗っている望楼からは東京中が見えたと言いますし、東京湾からもこの庁舎が見えたというから驚きです。
でも今でも桜田通りの明治学院の交差点からこの建物が見えますよね。
1階と2階は普通のビルなのですが、3階は円筒形になっています。そこは以前は講堂として利用されていたそううですが今は消防関係の資料と二本榎出張所の建築資料の展示室として使われています。
その上に乗っている望楼は火の見やぐらとしても使用していたそうです。いかにも都会的な火の見やぐらです。
ドアの上の ”高輪消防署” という文字が右から書かれているのは戦前の建物だから。そして当時はここが高輪消防署の本署だった証拠です。
新庁舎が完成してここが二本榎出張所になったのが1984年。つまりほぼ50年間は高輪消防署本署だったのです。
消防署の見学
歴史的建築物でもあるし消防関係の展示品もあるので消防署の庁舎内は見学可能です。
見学可能な時間は9時から16時30分まで。変な言い方ですが24時間年中無休の消防署なので土日や祝日でも見学可能です。
逆に火災や災害などで人が出払っていると時間内でも見学できない場合があります。
▲この受付で庁舎見学という目的を告げ、見学代表者の氏名と連絡先を記入します。
庁舎内の見学は常に消防署の職員の方のアテンドが付きます。勝手に見学することはできません。いつ非常事態になるか分からないし、センシティブな機材もあるでしょうし、当然ですね。
なお庁舎内が狭いので人数制限があるなどいくつか注意事項があります。東京消防庁のホームページを確認してから訪問してください。
PR
1階フロアと階段
見学できるエリアですが、基本は3階の円形講堂。そこは建築的にも消防資料的にもみどころがあります。
そして3階へ通じる螺旋階段。これが面白いのは建築好きな訪問者でしょう。
右の玄関ドアの外は二本榎通り。
階段は大理石とセメントを練って固めたものです。
消防署だけに耐火耐熱をしっかり施したことで結果的に長持ちする建築になったのでしょうか。
▲でも決して質実剛健なだけでなく、機能と見た目がきっちりデザインされています。
3階は円形講堂
階段を上って3階まで行くとそこは ”円形講堂”。
現在は展示室として使用されています。
3階まで上がると結構高さもあって周囲の街並みの景色もいつもと違います。
▲円形講堂の真下から上を見上げると、梁が8本あるのがよくわかります。
照明はたぶん耐火性の高い現代のものだと思います。
どういう組み合わせか、これは実際に見学してみてください。
デザイン的には「ドイツ表現派」というデザインだそうです。
▲現代的な照明に付け替えられている中、これだけは建造当時のものが残されています。
当時としても旧式なガス燈です。
停電した時でも明かりが灯せるように用意されていたそうです。
またデザインも当時としても古く感じただろうアールヌーボー様式。ガス燈に合わせてそうした様式を採用したのでしょう。なかなかオシャレです。
▲円形講堂の北側には窓が無くて、そのスペースに江戸時代から現代に至るまででの消防の制服が展示されています。
決して派手なものはないし、数も多くはありませんが、消防関係、建築関係の資料がこの円形講堂に展示されています。
PR
円形講堂の展示品
展示品の一部を紹介します。
▲龍吐水(りゅうどすい)。木製の手押しポンプのような機械。当時の最新ハイテク機器みたいなものだったのでしょう。
歴史の教科書や社会科で見たことがあるかもしれない、江戸時代からの消火器具ですね。
おもちゃではなく、れっきとして消火器具です。龍吐水の補助器具として使用されていたそうです。
左は明治時代の庁舎模型、右は今の庁舎が完成した時に記念に作られた1/300の模型です。
今では考えられませんが「タバコ入れ」として使える模型です。今だと消防署なのにタバコを推奨するのかってSNSで炎上しちゃいますね。あ、消防署だから炎上は余計にマズいですね。
▲説明書きにあるとおり、内部に消化液を仕込んだガラス球型の消火器です。
戦後もずいぶん使われたようなのでそこそこ効果はあったのでしょう。
火の見やぐらなど高所から見張り、火の手を発見したらこの半鐘を叩いて火事を知らせます。ここの望楼で実際に使われていたものですね。
PR
望楼への階段
その火の見やぐらとして使われていた望楼ですが、実際に登ることはできないようになっています。
▲この階段を上がって3階の屋上に出て、そこからさらに望楼に登る構造になっているようです。
当時の流行だった丸窓が見えますが、これは3階の窓にあたるようです。
庁舎の螺旋階段
そして3階の円形講堂まで通じる螺旋階段。
1階から3階の円形講堂まで、円筒形の構造になっているようで、その周囲をらせん状に階段が配置されています。
壁が完全に曲面になっていることがわかります。
ちなみに外に見える茶色い壁の建物はお隣の高輪警察署です。
普通の螺旋階段だともっと曲率が大きいのですが、この階段はなるべく直線になるよう苦労しているように見えます。
ここはもう完全に直線状に配置したがっています。
やっぱり消防署なので階段の上り下りは1秒でも短く、そのためになるべく直線を多用したということでしょうか。う〜む、面白いです。
なお、3階からはすべり棒で降りるのが一番速いのでしょうけど、サブルートとなる階段もなるべく時間短縮したかったのでしょう。
ここまで来ると上りも下りも直線の階段です。
▲90年の間に人間の体格も大きくなり、今の署員さんたちにとってこの階段は小さくて狭くてちょっと使いづらいみたいですね。
PR
二本榎出張の場所とアクセス
最寄り駅というと浅草線の高輪台駅です。駅から高輪の商店街を抜けた突き当りが二本榎通りなので、左へ曲がって500mほど。高輪台の駅から徒歩10分くらいですね。
白金台、白金高輪の駅からも歩けますがどちらも徒歩で15分くらいかかります。
やはりクルマで行くかバスを利用するのがベストです。
▲都営バスなら品93か品97系統、ちいばすなら高輪ルートを使い「高輪警察署前」バス停で降りれば二本榎出張所もすぐ近くです。
周辺にいくつかコインパーキングがあるのでクルマでも大丈夫です。
とにかく90年近く経つ建物が今も現役というだけでもすごいのに、それが消防署というのはさらにすごいです。
しかも無料で見学できるし、建物だけでなく消防について知る良い機会という、1粒で何度もおいしい高輪消防署二本榎出張所です。
子どもたちの社会見学にも良いですし、建築好き、消防好き、歴史好きな大人も楽しめます。
高輪消防署二本榎出張所 基本情報
名称 | 高輪消防署二本榎出張所 |
住所 | 港区高輪 2-6-17 |
最寄駅 | 高輪台駅、白金台駅、白金高輪駅、泉岳寺駅 |
時間 | 9:00 – 16:30 |
予約 | 不要 (10名以上の場合は事前に連絡) |
料金 | 無料 |
PR
四谷の消防博物館
高輪消防署二本榎出張所の展示を見て消防の機材や歴史に興味を持ったら、四谷の消防博物館も巡ってはどうでしょうか。
屋上には実際に乗り込める防災ヘリがあったりします。
館内にもヘリがあって、こういうのには子どもも大人も大興奮です。
▲実際に使われていた消防車、はしご車なども展示されています。
もちろんこれ以外の歴史資料や防災の解説なども充実しています。
近くに行く機会があったら一度は訪問しておきたい消防博物館です。
▲二本榎出張所も円筒形をしていましたし、この四谷消防署も円筒形のモチーフが使われています。
以前から思っていたのですが、これって纏(まとい)をイメージしての造形ですよね?
消防博物館 基本情報
名称 | 消防博物館 |
住所 | 新宿区四谷 3-10 |
最寄駅 | 丸ノ内線 四谷三丁目駅 |
休館日 | 月曜日 |
時間 | 9:00 – 17:00 |
予約 | 不要 |
料金 | 無料 |
PR