妹島和世の「水明」
「パビリオン・トウキョウ2021」の最後に紹介するのは九段ハウス庭園に設置された建築家 石上純也の「木陰雲(こかげぐも)」です。
妹島和世の事務所出身で、「アート・ビオトープ那須」の〈水庭〉などを手掛けている建築家です。
▲九段下にある九段ハウス(kudan house)の庭園に2021年の夏限定で、日差しを和らげる日除けを設置しようというものです。
パビリオン・トウキョウ2021は7月1日開幕でしたが、このパビリオンは設置が間に合わず、遅れて7月6日からオープンでした。さっそくその当日に訪問してみました。
「木陰雲」 石上純也 – kudan house 庭園
庭園を木材の柱と屋根で満たし、日差しを和らげると同時に建物が建った当時にはなかった近隣の高層ビルを視覚的に見えなくしようというものです。
▲入り口からもう焼き杉の柱が建ち、穴があくまで焼かれた杉の木が屋根のように覆っています。
ただ設営の時間がなくて注意事項があるので、それは後で説明しますね。
▲元々は樹木だけだった庭園ですが全体をこの焼き杉が覆っています。
穴が空いているのは、もちろん意図して焼き切っているのですね。
▲庭園内には古い石塔などもありまるで山の中の遺跡を巡るかのようです。
▲この日は生憎の天気でしたが日差しが強い日はきっと気持ちいいでしょう。
この九段ハウスを建てた山口萬吉という人は馬や運送業で財を成した方なのでしょう。
▲柱は中に応力を支えるパイプが貫いていて、それを使って土台に固定されていました。
焼いた杉材が構造を支えているのではないんですね。
kudan house(九段ハウス)
「九段ハウス」は昭和2年竣工、実業家の山口萬吉の邸宅です。関東大震災直後ということで耐震性が重視され結果的にその後の空襲や風雨にも耐え今に残る建物です。
今回のパビリオン・トウキョウ2021でも建物内は基本的に立ち入り禁止、庭園だけの鑑賞になります。
敷地の外側からも「木陰雲」の一部を見ることが出来ます。
▲庭園からこのカフェスペースが利用可能で、この部分だけは建物内に入ることができます。
価格はよく分かりませんが見ているとドリンクは紙コップで出てくるのでそれほど高いドリンクではなさそうです。
「木陰雲」注意事項
この「木陰雲」ですが、いくつか注意事項があります。けっこう大事です。
▲「木陰雲」の展示期間は7月6日(火)から9月5日(日)ですが、その間に休館日があります。
見ての通り曜日とか関係なく不定期なので、訪問する際は鑑賞可能な日か事前に確認が必要です。
貸しスペースなのでたぶん他のイベントなどがあるのだと思います。
▲九段ハウスの庭園は通常は公開しておらず、今回は特別に入場可能なスペースだそうです。そのため石の上を歩くこと、木の枝などに触らないことなどに注意が必要です。
それと木材(焼き杉)は炭化しているので炭を含んだ黒い雨水が垂れて洋服に付くことがあります。炭なので洋服などは真っ黒になると思います。
訪問する時の天候、服装には注意してください。
本来こういう場合は焼いた木材をコーティングするものですが、私たちが訪問した初日ではコーティングが施されておらずこうした注意書きになっていました。その後コーティングしたのかもしれませんが、ないものだと思って訪問するのが良さそうです。
▲九段ハウス脇のコインパーキングに置かれた設置作業の残骸です。初日7月6日の朝でこの状態でしたから、たぶん徹夜で設置作業を行い力尽きて片付けを出来ずに撤収したんじゃないでしょうか。これを見るとコーティングしてないとかクレームを付ける気もおきませんね。
あとこれが一番重要な注意事項です。
九段ハウスの庭園は普段は人が入ることも少ないのか、ヤブ蚊がすごいです。
ちょっと油断するとあちこち刺されまくります。なるべく肌の露出の少ない服装で、また虫よけスプレーも必須です。
九段ハウスの場所
駅でいうと地下鉄九段下駅が最寄り駅です。
靖国通りの田安門交差点から早稲田通りに入って坂道を100mほど上ったところ。
パビリオン・トウキョウ2021ではここだけ飛び抜けて遠い場所ですが、せっかく九段下まで行ったならちょっと竹橋まで足を延ばして東京国立近代美術館で開催中の「隈研吾展」も一緒にどうでしょう。建築とネコについての展覧会です。
なお、各パビリオンの場所は公式サイトのこのマップから確認できます(おすすめ店舗とかおすすめ建築も表示されますが、それより麻布ガイドのサイドで検索してください)。
残りは九段ハウスの石上純也です。そちらはまた次回で!
パビリオン・トウキョウ2021
クリエイター : 藤森照信 / 妹島和世 / 藤本壮介 / 平田晃久 / 石上純也 / 藤原徹平 / 会田誠 / 草間彌生
特別参加 : 真鍋大度+Rhizomatiks