〈田名網敬一 記憶の冒険〉
乃木坂の国立新美術館で田名網敬一(たなあみ・けいいち)の大規模回顧展《田名網敬一 記憶の冒険》が開催されています。
田名網敬一は1960年代から絵画、コラージュ、立体作品、アニメーション、実験映像、インスタレーションなどジャンル横断で活動する日本のデザイン、現代アートの巨人です。
その60年にわたる活動を膨大な数の作品で振り返る、文字通りの大規模回顧展です。
開幕直後の8月9日、田名網敬一さんが亡くなられました。謹んでご冥福をお祈りします。
▲60年代はサイケデリック、ポップアートの流れでのデザインやイラストが高く評価され、70年代にはアートディレクターとしても活躍するなどしてたき田名網敬一。世界の大衆文化を咀嚼し田名網敬一ならではの表現に落とし込んできたことが今なお多くのアーティストからリスペクトされ、ブランドのからのコラボ依頼が引きも切らない理由でしょう。
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記憶の冒険
今回の《記憶の冒険》展は国立新美術館の広い展示室を細かく仕切り、全部で14のセクションで構成されています。
そして作品数はリストに載っているものだけで500点以上。複数の作品をまとめて1点として数えるものもあるので実際に展示されているものは700点前後だと思われます。
さらに映像作品が28本あり、上映時間を単純に加算すると3時間弱。
普通の展覧会の感覚で2時間あれば大丈夫と思って訪問すると泣きを見ます。今回に限っては時間はあればあるほど良いです。丸一日をこの《記憶の冒険》展に費やすつもりで訪問するのが良いです。
▲これは「NO MORE WAR」というセクションの一部。アメリカの「AVANT GARDE」誌の反戦ポスター公募企画に入選した「NO MORE WAR」がタイトルになっています。
サイケデリックなペイントが施された壁に、やはり60年代ぽいサイケなポスターが並んで展示されています。
▲「NO MORE WAR」」のセクションの展示室の1/3くらいでこれ。
この「NO MORE WAR」セクションだけで100点近い作品が並んでいます。
60年代のイラストレーター、デザイナーとしての比重が大きかった時期です。
例えば田名網敬一がアートディレクターを努めた自身の書籍「虚像未来図鑑」のポスターも展示されていて、そこには植草甚一、佐藤重臣といった当時の日本のサブカルチャー、アングラカルチャーの人々の名前が並んでいます。
横尾忠則などと並んでそうした文化の真っ只中にいたイラストレーター、デザイナーだったということが分かります。
▲これは80年代の作品が並ぶ「人工の楽園」セクション。
ここだけで140点の作品が展示されています。
▲田名網敬一のアトリエの一部を再現したインスタレーション。
この周囲を取り囲むようにポスターとそのドローイングが展示されていて、あたかも頭の中を覗いているようなクラクラした感覚になります。
▲中心に置かれた「記憶の修築」の周囲を「記憶は嘘をつく」シリーズの作品などが取り囲んでいる展示室。
田名網敬一が憧れ、影響を受けたアメリカの大衆文化などが詰め込まれていてここでは彼の記憶を辿るかのような展示です。
▲こちらは「ピカソの悦楽」というセクション。
コロナ禍でやることがなくなった田名網敬一が700枚以上のピカソの模写を夢中になって描いたそうで、その一部が展示されています。なお模写全体で1点と数えていますが、実際の絵は100枚以上ありそうです。
また展示室の中心には「Kiosk Picasso」というインスタレーション作品が展示されていて、その中心には立体化された「泣く女」が置かれています。キュビズムの代表的な作品を二次元から解き放って再び三次元の立体化した作品です。
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立体作品とエピローグ
展示の最後のセクションでは多くの立体作品が展示されています。
▲最近の田名網敬一が取り組んでいる大型の立体作品や大画面作品が並んでいます。
アーティストとして、そして一人の人間としての集大成的な作品群です。
▲最後に赤塚不二夫とのコラボセクションがあって最後はエピローグ「田名網キャビネット」。
田名網敬一と様々なアーティスト、ブランドとのコラボレーションが展示されています。
コレボレーションということはつまりお仕事しての創作なんですけど、誰と何をやっても田名網敬一なのはすごいですね。
金魚の大冒険
映像で3時間弱、総作品数で700点。
普通はこれだけでヘロヘロになりますが、国立新美術館の前庭に展示されている屋外作品も忘れずに。
▲「金魚の大冒険」。
六本木側の出入り口正面にあるので乃木坂駅利用の人は見落としてしまうかもしれません。
また六本木側から入館する人でも《記憶の冒険》展の一部、田名網敬一の作品だと気づかずスルーしてしまう人もいるみたいなので忘れずに。
これは入場料も不要で誰でも見ることができます。
▲ちなみに夜になると光ります。
金曜日と土曜日は国立新美術館の夜間開館日で20時まで開館しています(入館は19:30まで)。
暗くなってからの光る「金魚の大冒険」もインパクトがあります。
▲黒川紀章設計の国立新美術館と田名網敬一の金魚の大冒険。
なお国立新美術館に入らなくても星条旗通りからも「金魚の大冒険」は見えます。
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見どころと注意事項
《田名網敬一 記憶の冒険》展の見どころと注意点です。
見どころ
全部が見どころなのですが、やはり60年代から70年代の日本のポップカルチャーのど真ん中で輝いていた時代、90年代以降のまた独自の世界を確立した時代が見どころかなぁと思います。
そしてどんな時代も、どんなコラボ相手でも根底にNO MORE WARでポップな田名網敬一らしさが通底しているのも見どころでしょう。
混雑状況
60年代、70年代の田名網敬一から知っているオールドファン、21世紀に入ってからの田名網敬一の世界に惹かれる新しいファンまで田名網敬一の人気と影響力は今も絶大です。つまりお客さんは多いです。
さすがにCLAMP展ほどの大混雑はありませんし、入場待ちの行列ができるほどではないようですが、普通の現代アートの展覧会よりはよほど混雑しています。
しかもSNS映えする作品ばかりですから今後展覧会の情報が広がればさらに混雑することは間違いありません。11月11日までと会期が長く、六本木アートナイトや秋のアートシーズンにも重なるので特に後半は大混雑が予想されます。できるだけ早めの訪問をおすすめします。
鑑賞時間
前述したように展示されいてる作品数は700点前後、映像作品の総時間は3時間弱です。
さっと見るだけで5時間くらいの計算になりますから、朝から丸一日の予定で訪問するとか、映像作品を諦めるとか、2回に分けて訪問するなど工夫が必要です。
おすすめは映像作品の一部、つまり実験映画の一部を諦めるですね。アニメーション映画は全部で30分ほどですからこちらは全部見るのがおすすめです。
注意事項
・展示室内は静止画については写真撮影可能です。ただし動画撮影は禁止です。またフラッシュ、一脚・三脚、自撮り棒も使用できません。
・立体作品も多いのでリュックや大きなバッグなどは展示室に入る前にロッカーに預けておきましょう。ちなみにロッカーは無料ですが、利用するのに100円玉が必要です(利用後に返却されます)。
ミュージアムショップ
お決まりのミュージアムショップですがホームページで案内されている以上に商品が置いてありました。
やはりコラボレーションも多数ありました。
▲展覧会公式図録「田名網敬一 記憶の冒険」は4,950円。
Amazonでの販売は9月4日からですがミュージアムショップでは展覧会初日から販売していました。
田名網敬一 記憶の冒険
¥4,950 (2024-12-13 21:47 GMT +09:00 時点 - 詳細はこちら価格および発送可能時期は表示された日付/時刻の時点のものであり、変更される場合があります。本商品の購入においては、購入の時点で当該の Amazon サイトに表示されている価格および発送可能時期の情報が適用されます。)
▲もちろんお約束のTシャツ、トートバッグなども種類多数。
PR国立新美術館の場所とアクセス
《田名網敬一 記憶の冒険》展が開催されている国立新美術館の場所は六本木。
ただ最寄り駅でいえば地下鉄千代田線の乃木坂駅です。6番出口から新美術館直結です。
六本木の交差点からなら、外苑東通りを青山方面へ向かいバーニーズの交差点を左へ曲がればすぐですし、慣れた人なら龍土町美術館通りに入ってブルーボトルの前を過ぎて行けば近道もできます。
また、六本木ヒルズからも六本木通りを渡ってホテル六本木の横の小路をくねくね下っていくとあっという間に新美術館到着です。
再評価が進みどんどん新しいファンが増えている田名網敬一のまさに大回顧展です。まだまだ衰えを知らない創作意欲に溢れた新作も見られますから、田名網敬一、アートファンにとっては絶対見逃せない展覧会です。
11月までの会期で、夏休みや秋のアートシーズン中、六本木アートナイト期間と訪問する機会も多く都心でのアート巡りでは絶対外せません。
田名網敬一 記憶の冒険 基本情報
名称 | 田名網敬一 記憶の冒険 |
会場 | 国立新美術館 |
会期 | 2024年8月7日(水) 〜 11月11日(月) |
時間 | 10:00 − 18:00 (金土は20:00まで) |
入館料 | 一般 2,000円、大学生 1,400円、高校生 1,000円、中学生以下無料 |
予約 | 不要 |
撮影 | 可能 |
国立新美術館 基本情報
名称 | 国立新美術館 |
住所 | 港区六本木 7-22-2 |
最寄駅 | 乃木坂駅、六本木駅 |
休館日 | 火曜日 |
時間 | 10:00 – 18:00 (会期中の金土曜日は20:00まで) |