ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会
六本木の森美術館(六本木ヒルズ内)は2023年で開館20周年。それを記念して20年間にコレクションしてきた作品を中心に、現代アートを8つの観点から出会う展覧会「ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」が開催されています。
8つの観点というのは「国語」、「社会」、「哲学」、「算数」、「理科」、「音楽」、「体育」、「総合」のこと。学校の授業に見立てているので ”クラスルーム” なのですね。
また現代アートという未知の世界を知り、学ぶための展覧会という位置付けでもあるので、現代アートの代表的な作家、代表的な作品も展示されていますし、作品ごとのキャプションも現代アートとしては詳細な解説がされています。現代アートはちょっと苦手、判りづらいという方も気にせず来場できると思います。
▲会期は2023年4月19日(水)開幕で9月24日(日)まで約5ヶ月の会期です。ゴールデンウィークや夏休み期間にも重なるので、東京や六本木を訪れる予定があるならワールド・クラスルーム展も訪問してみてはどうでしょうか。
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出展作家たちと写真撮影について
出展しているのは国内外から全部で約50組のアーティスト。はっきり言ってとても多いです。通常の展示スペースでは足りず53階の展示空間をフル活用しています。
アーティストのリストは公式サイトを参照してください。同じページからは作品リストもダウンロードできます。
写真撮影は動画も含めて原則可能です。ただし一部の作品は撮影禁止、また動画も1分以内という制限付きです。
撮影できないのは会場の最初に展示されているジョセフ・コスースの「1 つと 3 つのシャベル」、スーザン・ヒラーの「ロスト・アンド・ファウンド」という映像作品、ヨーゼフ・ボイスの「黒板」、菊池智子の一連の作品、マリオ・メルツの「マリオ・メルツ」というバイクとフィナボッチ数列の作品、そして「音楽」と「体育」の2つのセクションです。
フラッシュ使用禁止、三脚や自撮り棒の使用禁止といった点はいつも通りです。
出展アーティスト
アーティストと作品を全部紹介していくと大変なことになるので、かいつまんで紹介します。
会期中は何度も足を運ぶことになるので、紹介するアーティストと作品はさらに追加していきます。
米田知子
まずは90年代から活躍している写真家、米田知子の作品から。
▲ル・コルビュジエの眼鏡と講演原稿、ジェームズ・ジョイスの眼鏡と手紙というように古今東西の文豪や芸術家の眼鏡と彼らがそれを通じて見ていたモノが1枚の写真の中に再現されるシリーズです。
森村泰昌
写真なんだけど写真家ではない現代美術家の森村泰昌の作品も。
「モデルヌ・オランピア2018」が同シリーズの「双子(肖像)」と並んで展示されています。
(センシティブな絵なので写真はなし。でも撮影は可能です)
元ネタのマネの作品、そこに描かれている人物やモノの意味を理解した上で森村泰昌の作品を観るとそこで展開されているメッセージが分かるという、現代アートの見本みたいな作品です。
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アイ・ウェイウェイ(艾未未)
中国現代アートの先駆者、アイ・ウェイウェイ(艾未未)もいます。
▲手前のは「コカ・コーラの壺」、奥に見える写真は「漢時代の壷を落とす」です。
やばいですね。”漢時代の壺” や ”コカ・コーラの壺” が何の暗喩なのかは誰でも分かりますが、よりによってアイ・ウェイウェイは漢時代の壺の方を壊しているのです。命がけな芸術活動だという決意が伝わってきます。
田村友一郎
同じようにポリティカルなテーマの作品では例えば田村友一郎。
▲日本の失われた20年、30年の原点ではないかと言われる1985年の「プラザ合意」をテーマにした作品です。
この頭像の右端はDAIGOのおじいちゃん、当時の竹下登蔵相です。
李禹煥(リ・ウファン)
少し前に六本木の国立新美術館で大回顧展が開催された李禹煥の作品も2点。
▲奥が「対話」、手前が「関係項」です。
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奈良美智
大阪のカジノのイメージ図に無断使用されたことで話題の奈良美智(なら・よしとも)。
▲少し前の「STARS展」でも見た作品ですね。
宮島達男
日本の大御所アーティストはほとんど勢揃い。いないのは村上隆と草間彌生くらいかもしれません。
▲7セグLED、LEDを使った数字表示機で死生観を表現する作品。
東京都現代美術館にある大きな作品よりはやや小ぶりです。
杉本博司
多方面で活躍する現代美術家、杉本博司の作品は代名詞とも言える数理模型シリーズ。
▲手前の立体の数理模型は「数理模型022」。2023年の最新作です。
壁に展示されているのは数理模型を撮影した「観念の形」という写真シリーズ。
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宮永愛子
ナフタリンの作品で知られる宮永愛子も最新作を出展しています。
▲「 Root of Steps」。
六本木にまつわる人々が履いていた靴をモチーフにしています。
▲ナフタリンなので最後には気化して消失してしまいます。その消失点に向かって姿を変えていく儚さが彼女の作品の真骨頂です。
この作品の変化を観るためだけに森美術館に通ってもいいですね。
▲麻布ガイドでも定期的に足を運んでその様子をレポートします。
これは夏休みに時期になってからの宮永愛子。ナフタリンの昇華が進んでいるのが分かります。
▲こちらの作品はさらに昇華が進み、靴底に大きな穴が開いています。
田島美加
日本人女性アーティストをもう一人。
▲グラデーションがきれいな作品だなと思って通り過ぎないように。
この作品が展示されている展示室に少し留まってみてください。
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ワン・チンソン(王慶松)
現代中国の代表的な写真家、ワン・チンソン(王慶松)。「follow me」、「follow you」、「follow him」のfollow三部作が有名です。
▲その最初の follow me が展示されています。
今回の「ワールド・クラスルーム」展のキー・ビジュアルとしても使われている作品ですね。
青山悟
展示されている作品の中には変わった手法のものも多いです。
例えば工業用ミシンを使った刺繍作品を制作し続ける青山悟。
▲雑誌にたまたま掲載された写真を元イメージにしていると言っていますが、もちろんあるテーマに沿った写真が慎重に選ばれています。
この作品は世界一のソフトウェア企業、米マイクロソフト社の創業メンバーの写真です。マイクロソフトは最大の得意先があったニューメキシコ州のアルバカーキで創業したのですが、ビジネスが順調になってからは創業者ビル・ゲイツとポール・アレンの地元であるワシントン州シアトルに引っ越します(今でも本社はシアトルです)。この写真はシアトルへ引っ越す直前に撮られたもの。最前列左端がビル・ゲイツ、右端が故ポール・アレンです。
シルバ・グプタ
森美術館では何度か作品が展示されているインドの女性アーティスト、シルバ・グプタ。
▲インドの初代首相ジャワハルラール・ネルーの議会での演説をシルバ・グプタ自身が読み上げるというインスタレーションです。
戦前から50年代頃にかけて使われていた味のあるマイクが会場に置かれていて、でもサウンドはマイクに内蔵されたスピーカーから出るという仕掛け。入力装置かと思ったら出力装置であるという倒錯感がキモですね。
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ヤコブ・キルケゴール
今回のワールド・クラスルーム展は50組のアーティストの代表作が並んでいますが、その中でも一番のおすすめはと言えばヤコブ・キルケゲールのサウンド・ビデオ・インスタレーション「永遠の雲」。
▲2023年制作、つまりこの展覧会のための新作です。
映像は雲(cloud)の映像。サウンドはクラウド(cloud)を実現するデーターセンターの音。デジタル技術からはみ出したcloudサウンドと自然界のcloud映像をかけ合わせるというスゴ技です。
▲さらに凄いのは投影されているcloud映像がさらに窓ガラスにリフレクトして空に浮いているように見えること。
この展示室でなければ実現できなかったインスタレーションで、今後他の場所で目にすることはまずないでしょう。必見です。
ワールド・クラスルームの図録
このように大充実な内容のワールド・クラスルーム展ですが、その図録も発売されています。
森美術館のミュージアムショップでも購入できますし、Amazonで購入も可能です。
ワールド・クラスルーム 現代アートの国語・算数・理科・社会
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チケット情報、アクセス
チケット購入方法
森美術館のチケットの入手方法は2つ。
一つは六本木ヒルズのチケットサイトで購入する方法。最初に会員登録をするかヒルズIDが必要なのが面倒ですが、いったん登録すればHILLS APP(ヒルズアプリ)を使った入場ができるので便利です。
iPhone用のiOS版ヒルズアプリ(App Store)
Androidスマホ用のAndroid版ヒルズアプリ(Google Play)
もう一つは六本木ヒルズ森タワー3階の美術館・展望台チケットで購入する方法です。ただし当日枠に空きがある場合だけです。
あと森美術館の「MAMC(メンバーシッププログラム)」に入れば予約不要で入館することができます。森美術館を年に2回以上訪問するならMAMCへの入会も検討してみてください。
期間限定お得チケット情報
期間限定でお得な料金で鑑賞できるチケットが設定される場合があります。
開幕時点では特にアナウンスはありませんが、ゴールデンウィークや夏休みなどのイベントに向けお得チケットの情報がアナウンスされたらこのページでも紹介します。
森美術館へのアクセス
まず六本木ヒルズへのアクセスですが最寄り駅は日比谷線六本木駅。六本木ヒルズ側改札(広尾側)から出れば直結です。
大江戸線六本木駅を利用の場合はいったん地上に出て六本木ヒルズに向かいます。
また渋谷駅から都営バスの都01系統で新橋行きに乗り「六本木駅前」で降りればほぼ向かいが六本木ヒルズですし、「RH01六本木ヒルズ行き」なら文字通り六本木ヒルズ直行です。利用しやすいルートを使ってください。
六本木ヒルズに着いたら蜘蛛みたいなオブジェ「ママン」がある66プラザに出て大屋根広場を目指してください。映画館や大屋根広場の手前の小さい丸い建物(ミュージアムコーン)が美術館入り口です。週末ならたいてい行列しているか、付近でここだけヒルズのスタッフが立っているのですぐに分かると思います。
▲そしてミュージアムコーンから3Fに上ってブリッジを渡り、チケット・インフォメーションで入館手続きします(紙チケットの場合)。
予約してある場合はゲートでQRコードをかざしてそのまま入館。
直通エレベーターで52Fへ上がります。
▲森美術館は53F。エレベーターで52Fへ着いたらこのエスカレーターで53Fへ上がります。
ロッカーはこのエスカレーターの裏側にあるので、大きな荷物などはロッカーに入れましょう。100円ですが荷物を取り出す時に返却されます。
2023年9月まで約5ヶ月の会期です。長いように思えますが、閉幕が近づけばどんどん混み合うのがこうした展覧会です。
少しでも空いている早い時期に訪問して現代アートの代表作をゆっくり鑑賞してみてください。
ワールド・クラス・ルーム 基本情報
イベント名 | ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会 |
会場 | 六本木ヒルズ内 森美術館 |
会期 | 2023年4月19日(水) 〜 9月24日(日) 会期中は無休 |
開館時間 | 10:00 – 22:00 (火曜日のみ17:00まで) ただし5月2日と8月15日は22:00まで |
入館予約 | 事前予約制 |
入館料 | 大人 1,800円、高校大学 1,300円、4歳〜中学 700円、65歳〜1,500円 (平日 オンライン料金) 土・日・祝や窓口購入は別料金 料金詳細はこちらから |
撮影 | 原則可能。動画は1分以内。撮影NG作品には掲示あり。 |