霧の彫刻
日本の夏が以前のような夏ではないことがはっきりするようになってから、公園や人の集まる施設などに霧(ミスト)を吹き出す装置が設置されるようになってきました。
あれと同じような人工的な霧を吹き出す仕組みを使い、空間を彫刻のような霧で満たすという作品を半世紀以上にわたり制作し続けている中谷芙二子(なかや・ふじこ)という日本のアーティストがいます。
▲1970年の大阪万博のペプシ館を霧の彫刻で包んだのを皮切りに、世界各地で霧の彫刻を制作している偉大なアーティストです。
日本国内では長野の長野県立美術館と立川の昭和記念公園に常設作品が設置されていますが、さらにもう一つ、品川の品川シーズンテラスという複合施設にも常設されています。
わざわざ遠くに行かなくても港区内で霧の彫刻が見られる、体験できるというのも画期的です。なんといっても駅から歩いて10分ですから。
▲品川シーズンテラスでは中谷芙二子の作品が見られるということをあまり積極的には公開していないみたいで、いつ見られるのか、どこで見られるのかといった情報が非常に少ないのです。そもそもこれが中谷芙二子の作品であることもあまり知られていないみたいですし。
そこで品川シーズンテラスの霧の彫刻 #47662の情報をまとめて紹介します。夏などピクニックがてら訪問して「霧の彫刻」を体験してみてはどうでしょうか。
PR霧の彫刻 #47662 NAGI 凪
品川シーズンテラスの霧の彫刻の正式な名称は「#47662 NAGI 凪」です。
▲時間になるとイベント広場の木立の中から霧が吹き出してきてそれが15分間続きます。
風向きや湿度などにより霧があっちに流れたりこっちに流れたり、霧の高さも変わりますし、とにかく毎回毎回異なった姿を見せてくれます。
一つとして同じ形の霧の彫刻はありません。
ミストシャワーなどと違ってあくまで観賞用。ですが、霧の中に入ったりして体験することも可能です。
品川シーズンテラスのイベント広場では子ども向けのイベントも開催されていますから、それに併せて子ども連れで行くのも楽しいと思います。
見られる場所
ここから霧の彫刻が現れます。 ▲向こうに見えるビルが品川シーズンテラスのオフィスビルです。一般の人も利用できるコンビニや飲食店もあります。
霧の彫刻が出現する木立の中は立入禁止ですがそのすぐ近くまで行くことができます。ただ水盤だけは気をつけてください。霧が出てくると足元が見えなくなって水盤に落ちたり足を滑らせることもあるので。
▲木立の中を見ると側溝の鉄製の蓋のようなものが見えますが、ここから霧が吹き出してきます。
霧は直径20ミクロンの水の粒子が空気中に放出されたもので、発生装置も中谷芙二子自身が主導して50年以上前に開発したものが原型になっています。
▲木立の裏にはキャプションがあって、これが単なるミストシャワーではなく意図を持って制作された霧の彫刻であることを示しています。
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霧の彫刻を見られる日と時間
この霧の彫刻 #47662ですがいつ行っても見られるわけではありません。
▲霧の彫刻が出現するのは、毎年春分の日から10月31日までの約7ヶ月間。
この期間中は9時から18時までの毎正時に霧の彫刻が出現し、それが20分間続きます。
霧が出現する前には日本語と英語でアナウンスが流れるのですぐに分かります。
品川シーズンテラスの場所とアクセス
霧の彫刻 #47662が見られる品川シーズンテラスというのは芝浦の下水処理場を改修したオフィスビルで、品川という名前は付きますが港区内です。
▲品川駅の港南口(ここも港区)からNTT村と俗称されるNTT系の会社が林立する一帯とSONY本社ビルの間を抜けた突き当りが品川シーズンテラスす。
エスカレーターでロビーフロアに上がりアトリウムを抜けると霧の彫刻があるイベント広場です。
駅の港南口を出てから徒歩5分くらいです。
地理的には高輪ゲートウェイ駅と隣接といってもいいくらいの距離なので、今後高輪ゲートウェイが整備されれば最寄り駅は高輪ゲートウェイになると思います。
▲霧の彫刻が現れる辺りからは東京タワーも真正面に見えたりします。
そんなロケーションなのでTVや映画などのロケにもよく使われていて、2022年夏のヒット番組「六本木クラス」にも登場していましたね。
PR霧の彫刻家、中谷芙二子
「霧の彫刻」は国際的にも有名な芸術家の中谷芙二子の代表的な作品。1970年に大阪万博のペプシ館で世界で初めて中で公開されて以来、世界中100近い霧の彫刻が制作されているそうです。
中谷芙二子の父親は寺田寅彦の弟子で雪の結晶の研究や人工雪の製作で世界的に有名な物理学者の中谷宇吉郎(なかや・うきちろう)です。父親の仕事もあってアメリカでの暮らしも長く、高等教育もアメリカで受けたコスモポリタンなアーティストです、
例えば60年代から様々なメディア・アート的イベントを行っていて、ジョンとヨーコ(実はヨーコと同い年)を巻き込んで今のTwitterみたいなことを電話とFaxで実現したり、ビデオアート作品を制作したり、人工知能に絡んだり。中谷芙二子の名前はあまり表には出てこないものの現代になってやっと一般化した様々な表現手法の先駆者の一人です。
▲2018年に茨城県の水戸芸術館現代美術ギャラリーで開催された個展「霧の抵抗」の時の「シンコペーション」という作品です。
なんと、この「霧の抵抗」展が日本国内では初めての彼女の個展でした。
霧の抵抗 中谷芙二子展
¥34,190 (2024-12-14 02:27 GMT +09:00 時点 - 詳細はこちら価格および発送可能時期は表示された日付/時刻の時点のものであり、変更される場合があります。本商品の購入においては、購入の時点で当該の Amazon サイトに表示されている価格および発送可能時期の情報が適用されます。)
国内で見られる霧の彫刻
「霧の彫刻」は世界中で常設展示されていますが、日本国内では数か所ほど。美術館に常設されているのは長野の長野県立美術館だけです。
▲「霧の彫刻 #47610 -Dynamic Earth Series Ⅰ-」
2021年にオープンした長野県立美術館の常設作品ですが、寒冷地しかも豪雪地帯ということもあって稼働期間が短いです。
でも1回15分では全貌を把握できないくらい規模が大きい作品です。2回、3回と体験してやっと全部を観るような作品なのでたっぷり時間を取って訪問してみてください。
長野県立美術館の霧の彫刻についてはこちらの記事が詳しいです。
また長野県立美術館側の認識不足などで中谷芙二子とトラブルになっていて、長野県立美術館では霧の彫刻のことを積極的に告知していません。ホームページにリンクがないですし、英語のページも用意されていません。
訪問前にはこの直接リンクで霧の彫刻 #47610 の開催情報を確認してください。
▲中谷芙二子の父親の業績を称える「中谷宇吉郎雪の科学館」にも霧の彫刻が設置されています。
石川県加賀市の柴山潟のほとりに建つ磯崎新(いそざき・あらた)設計による記念館の中庭に娘である中谷芙二子による「グリーンランド氷河の原」というインスタレーションがあり、ここで霧の彫刻の演出が行われています。
自然科学の世界の偉人でもある中谷宇吉郎、その娘で後の世代に大きな影響を与えた芸術家の中谷芙二子、そして世界的な建築家の磯崎新という組み合わせの中谷宇吉郎雪の科学館、カフェも素敵ですし金沢などと併せて訪問してみてください。
(機材の調子により霧の彫刻が停止している場合があります)。
▲中谷芙二子の霧の彫刻をまとめた動画を紹介します。
銀座メゾンエルメスフォーラムでの宇吉郎とのコラボ「中谷芙二子+宇吉郎」展、水戸芸術館での「霧の抵抗」そして長野県立美術館常設の「霧の彫刻 #47610 – Dyamic Earth Series I -」をフィーチャーしています。
こんなアーティストの数少ない作品が身近で見たり体験したりできるのですから、品川シーズンテラスへ行ってみたくなりますね。
#47662 -NAGI 凪- 基本情報
名称 | 霧の彫刻 #47662 -NAGI 凪- |
会場 | 品川シーズンテラス イベント広場 |
稼働期間 | 毎年春分の日 〜 10月31日 |
稼働時刻 | 期間中 9時から18時までの毎正時から20分間 |
料金 | 無料 |
品川シーズンテラス 基本情報
住所 | 港区港南 1-2-70 |
最寄駅 | 品川駅 |