松濤美術館と白井晟一
渋谷の松濤美術館で美術館建築そのものを鑑賞する展覧会「白井晟一入門」が開催されています。
残り期間も僅かで鑑賞するチャンスが残り少ない上に、TVで紹介される予定もあるそうなので会期閉幕間近は大混雑が予想されます。
この展覧会は鑑賞対象が美術館なので、普段は館内撮影禁止の松濤美術館内も撮影OK。さらに普段は一般の人は立入禁止のエリアも開放されていてそこも撮影OK。
「まん延防止等重点措置」が適用されるため「館内建築ツアー」は開催中止になりました。展覧会自体は開催しています。
さらに金土日に1日1回だけ開催される「建築ツアー」に参加すれば学芸員さんの解説を聞きながら、ツアー参加者だけに公開される特別な場所まで鑑賞できるという大判振る舞いです。
▲松濤美術館については『孤高の建築家白井晟一の建物も芸術。松濤の隠れ家のような「渋谷区立松濤美術館」」』という記事で紹介したことがあります。
また飯倉の「ノアビル」も白井晟一の代表作として有名です。
2021年はこの松濤美術館の開館40周年記念ということで「白井晟一 入門」という記念展が開催されています。この展覧会は2部に別れていて、第1部は白井晟一の建築の図面や建築資料のアーカイブ展でした。(昨2021年に閉幕)。
そして今年2022年の1月いっぱいは第2部として何も展示物のない ”建築そのもの” を鑑賞する展覧会が開催されています。
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松濤美術館の外回り
まずは松濤美術館の建物を外から見たところ。普段はここは撮影OKですね。
▲特徴的な大庇。
▲敷地脇のこの建物?
元々はここにチケット売り場を設けるつもりだったらしいです。
穴が空いているのはそのためのもの。
▲チケット売り場と反対側の壁にある謎の蛇口。なぜここに蛇口を付けようと考えたのか意図不明。ついでに設計図にも蛇口はないそうです。
普段は水は流れていませんが、今回の展覧会中の金土日曜日だけ水を出しているそうです。40年間で僅かしか水を流していない貴重な機会なので見逃せないです。
螺旋階段
次は美術館の館内。
松濤美術館では地下2階から地上2階を結ぶ螺旋階段が2ヶ所にあるのが特徴です。
しかも螺旋階段と螺旋階段の間にはエレベーターもある念の入りようです。
こちらの螺旋階段も利用というか見学可能。もちろん撮影もOKです。
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吹き抜けと噴水
一番の見所かもしれないのが建物中央部の吹き抜けと噴水です。
▲建物の中央部は吹き抜けになっていて、両サイドをブリッジが結んでいます。
いつもはこのように施錠されていてブリッジに出ることはできません。
こんなチャンスは次いつになるか分かりません。
アルミ製材で加工された柱(単なる装飾なので正確には柱ではありませんが)がまるでギリシャ神殿みたいですね。
もちろんそう感じさせるよう設計者の白井晟一が意図しているのです。こんなところが ”異端” と言われる所以なのでしょう。
▲吹き抜けの底の噴水も間近でじっくり眺めることもできます。もちろんここも撮影OKです。
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地下1階展示室
吹き抜けのブリッジを渡った先は地下1階展示室(第1展示室)と吹き抜けになっています。
本当はブリッジを渡ってきた来館者が階段を降りて地下の展示室にアプローチするようにしたかったみたいです。ただそれだと展示エリアが狭くなって本末転倒なので今のようなレイアウトになったそうです。
▲地下1階展示室。普段はこのような使われ方をしています。
(撮影OKだった展覧会の時の様子です)
私たちが馴染みある松濤美術館の展示室ですね。
▲何もないガランとした展示室。一般の人がこうした展示室を見られることはまずありません。
向かいの大きな窓はガラス窓。この日は薄くカーテンがかかっていました。いつも展覧会の時は外光や紫外線が入らないよう黒い幕で覆われています。
建築ツアーに参加すると、ちらっとこのカーテンを開けて向こうに何が見えるかも見せてもらえますよ。
いつもはパネルなどが置かれ、遮光カーテンや暗幕があってよく分かりませんが、こうしてみると空間の曲面がよく分かりますね。
上に見えるのはブリッジ。
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2階展示室
2階にも展示室があり「サロンミューゼ」という名で呼ばれています。
”サロン” なのは以前はここで茶菓のサービスがあったからです。
▲このエリアも調度品やレイアウトなどできる限り1981年の開館当時に似せて復元したそうです。
▲壁はヴェネツィアン・ベルベット。
照明も40年前のもの(コンセントのやれ具合を見ると時代が感じられます)。
壁にかかっているのは白井晟一による書です。
▲奥の特別展示室との間に格子状の引き戸があったのですね。
通常は壁の中に格納されているのを今回の展覧会では引き出してその存在が分かるようにしてありました。
これも次はいつ姿を見れるか分からない貴重な引き戸です。
▲喫茶サービスがあった頃は、ここでオーダーと受け取りをしていました。
今は塞がれているので当時を知らない人(といっても10年前ですけどね)は、これが何なのか説明を聞かないと分からないかもしれません。
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茶室
なぜか、美術館なのに茶室があります。場所は地下2階。
40年間茶室として利用することはなかったそうです。
では何の部屋だったかというと、学芸員などスタッフの方の休憩室。白井晟一も松濤美術館を訪問するとまずこの部屋にどっかと腰を下ろしていたお気に入りの空間だったそうです。
▲今回、開館40年にして初めて茶室として設えたそうです。
▲靴を脱いで畳の上までは行けますが茶室自体は入室不可。ここから内部をうかがう形になります。
▲このキャプションによると白井晟一自身はお茶はやらなかったようです。なんで狭い敷地の美術館に茶室を作ろうとしたのか謎ですね。
このようにユニークな発想などから ”異端” ”孤高” という呼ばれる白井晟一は、建築史の中でもやはり異端の存在のようで大学の建築科の講義でも触れられることは少ないそうです。
そんな白井晟一が再評価されこうした展覧会に人が押しかけているのは、逆に建築を専門とする人たちが驚いているみたいです。
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その他の見どころ
▲「建築ツアー」に参加すると、この館長室の内部も見学させてもらえます。
(写真撮影は不可)
「まん延防止等重点措置」が適用されるため「館内建築ツアー」は開催中止になりました。
▲建築ツアーが中止になり館長室を見学することができなくなってので、内部の写真をちょこっとだけ公開しています。
この写真は松濤美術館に足を運ばないとみれない。
▲まとまった資料も少なく研究も進んでいない白井晟一の謎に迫った重要な展覧会「白井晟一入門」。
白井晟一が意図した松濤美術館の姿をできるだけ再現しようという企画だけに松濤美術館も力を入れています。
館内建築ツアー
展覧会としての「白井晟一入門」は2022年1月30日(日)までの開催。
注意したいのは土曜日、日曜日それと最終週(1月25日〜30日)は「日時指定制」、つまり事前予約が必要です。事前予約については松濤美術館のサイトで最新情報を確認してください。
「まん延防止等重点措置」が適用されるため「館内建築ツアー」は開催中止になりました。
さらに美術館の方が館内を解説付きで案内する「館内建築ツアー」もあります。館長室はこのツアーに参加しないと見学できません。
これから館内建築ツアーが実施されるのは1月21, 23, 28, 29, 30日の5回だけ。21日と28日は11時から、それ以外は16時からの1日1回だけ。
その時刻になると整理券を配布しますが配布場所は館内放送で案内されるので聞き逃さないように。つまりその時刻に美術館に居ないといけないので、建築ツアーに参加したい場合は早めに入館しておきたいです。
ただこの方法だと結構混乱するので今はもう少し改善されているかもしれません。これも参加方法についての最新情報を美術館のサイトで確認してください。
なお建築ツアーの参加は無料ですが、美術館の入館料は必要です。
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松濤美術館の場所と周辺のアート
松濤なので最寄り駅でいえば京王井の頭線の神泉駅になります。
入り組んだ住宅街の中を通ることになりますが、案内が充実しているので迷うことはないと思います。神泉駅から徒歩5分です。
▲でも、もうじきなくなる東急本店の横から ”松濤文化村ストリート” を500mほど歩くのが一番わかり易いでしょう。
また美術館に駐車場はありませんが周辺にはいくつもパーキングがあるのでクルマでも大丈夫です。
あと隈研吾が設計したトイレがある「鍋島松濤公園」もすぐ近くです。
松濤美術館を出て松濤文化村ストリートとは反対側にまっすぐ200mほど進めば、視覚障害者向けの ”触れるアート” をコンセプトにした「ギャラリーTOM」があります。
松濤美術館で白井晟一と企画展、隈研吾のトイレを見学(利用)してからギャラリーTOMへ。他ではあまり類を見ないアート体験ができるのも松濤エリアならではですね。
白井晟一 入門 基本情報
名称 | 渋谷区立松濤美術館 開館40周年記念 白井晟一 入門 |
会場 | 渋谷区立松濤美術館 |
会期 | 第2部 2022年1月4日(火)〜1月30日(日) 土日は要入館予約 |
入館料 | 1,000円 |
建築ツアー | 1月21日(金)、23日(日)、28日(金)、29日(土)、30日(日) |
ツアー開始時刻 | 金曜日は11:00〜、 土日は16:00〜 |
渋谷区立松濤美術館 基本情報
施設名 | 渋谷区立松濤美術館 |
住所 | 渋谷区松濤 2-14-14 |
最寄駅 | 井の頭線神泉駅、渋谷駅 |
休館日 | 月曜日 |
開館時間 | 10:00 – 18:00 |
入館料 | 展覧会による。金曜日は渋谷区民無料 |