「おかんアート」という新しい世界を発見できる渋谷公園通りギャラリーの展覧会「ニッポン国おかんアート村」

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Museum of Mom’s Art ニッポン国おかんアート村

渋谷公園通りにある渋谷区公園通りギャラリーで開催中の「Museum of Mom’s Art ニッポン国おかんアート村」展。まさに新しい芸術ジャンルが誕生した現場を鑑賞することができます。

その名も「おかんアート」。地下でひっそり密かに育まれてきた「おかんアート」が大々的に世に出て来た展覧会です。

おかんアートというのは、中高年の主婦(母親=おかん)が余暇を利用して創作する自宅装飾用芸術作品を総称してこう呼んでいます。

▲全国の商店街の店先、公民館、民家、手芸教室、道の駅などに点在しているおかんアートをまとめて展示する画期的な展覧会です。

おかんアートには中心となる人物もいなければ一貫したコンセプトがあるわけでもなく、でもなぜかおかんアート作品には共通する温もりやセンスのなさやアナーキーさがあるのです。

今回の展覧会のタイトルは「Museum of Mom’s Art ニッポン国おかんアート村」展。

Museum of Mom’s ArtということはつまりMoMA。どこかで目にしたことがあるような名前ですがそいういう小さいことは気にしないのがおかんアートです。

このMoMAが渋谷の公園通りのギャラリー、しかも渋谷パルコの斜向いという日本のオシャレさんたちの羨望の地で開催されている訳ですから見逃す手はないですね

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 断捨離よりも「いつか役に立つ!」

公園通りギャラリーの会場に入るとくらくらと眩暈がするような強烈な作品たちに圧倒されます。

▲右下の黄色いネズミみたいなのはなんでしょう?。

どこかのおかんが小さな子どもか孫のために、喜ばれそうなおもちゃを一生懸命考えて作ったものでしょう。

▲毛糸を使って犬とかネズミとかトリとか象を作ってみたんですね。

アメリカ生まれのビーグル犬までいます。

後ろにはウィスキーの瓶を使った人形がいます。サントリーのオールドの空き瓶を使うんでしたっけ?

昔はどこの飲み屋さんにもこういうのが飾ってありましたね。今だと訳知り顔な客にコンプライアンス的にいかがなものかと言われるんでしょうけど、でもママさんに「これはワタシよ!」と返されて終わりですね。

▲ドアノブカバーだって立派な作品です。

ウチにもある・・・という人もいますよね?

▲おかんアートの材料はそこにあって使えるもの。

おかんたちは物を捨てません。断捨離という言葉もコンマリという人も知っているけど、「いつか役に立つ!」と思っているので物を捨てません。

そんな手もとにあって使える材料を使っておかんアートを制作しているのです。

▲そんなおかんアートは口コミで隣近所へ拡がったり、地元の手芸教室やカルチャースクールで伝播されていったりしています。

一応設計図や制作ノウハウはあるのですが、おかんのセンスや家にある材料の種類によってどんどんバリエーションが広がり個性が生まれてきます。

私たち鑑賞する側はそのおかん作家ごとに異なる個性を楽しんでいるのですね。

▲これはビーズを使った作品。

たぶん、娘が小さい頃に遊んだビーズを、孫娘のために再利用しているじゃないかと思います。まさに何十年もいつか役に立つと思ってビーズを残しておいたからこその作品ですね。

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無償の愛

おかんアートは作品を作って売ろうとかはほとんど考えていません。

多くの場合は子どもたちに喜ばれたい、孫が笑うところを見たい、仲間に喜んでもらいたいという動機から作品を制作していると思います。

▲まさに無償の愛としての作品群です。

精巧な手工芸作品ですが、どれも素人のおかんの手によるものです。

▲着物を来たネコとかフードを被ったネコとか。

下の写真にも青いネコや黄色いネコがいます。

おかんたちは素人なのでデッサンが狂うのはしょうがないですね。

▲何かに似ているようなに思ってもそれは気のせいです

▲折り紙でここまで精緻にできるんですね。

▲毛糸を使ったりフェルトを使ったり

▲身近な人に喜んでもらいたいという熱い想いが込められた作品群です。

いままでもこうした作品群があり、そこに独特の魅力があるのはみんな何となく感じていたのですが、こうして「おかんアート」であるという宣言してもらうと分かりやすいですね。

100年前に柳宗悦がそれまで見えていたなかったジャンルを「民藝」と名付けたのに匹敵する、新しい芸術ジャンルの誕生です。

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公園通りギャラリー

2020年つまりパンデミック真っ只中でオープンした渋谷公園通りギャラリー。東京でのアール・ブリュット(アウトサイダー・アート)の拠点となることを目的にした施設です。

▲「おかんアート村」展を開催している公園通りギャラリーのウィンドウ。

もうこの時点からただならぬエネルギーとセンスを撒き散らしていて、これだけでもギャラリーを設けた意義があるというものです。

▲アール・ブリュット(アウトサイダー・アート)というのはと既存のアートや文化トレンドとは無縁の文脈によって制作された芸術作品のことで、教育などに左右されない自身の芸術衝動のままに表現されているものです。

東京都ではアール・ブリュットを通じてダイバーシティの理解促進や共生社会の実現に向けての推進力にしたいそうです。

▲公的なギャラリーとしては当初からかなり攻めている企画が多いので目が離せないギャラリーです。

アール・ブリュットやその文脈での企画展だけでなく、普通に現代アートの企画展も開催されています。

▲Museum of Mom’s Art – ニッポン国おかんアート村。

ここに書かれた一文がおかんアートのマニフェストになっています。

これから広く世界へも発信していくのでしょう。

おかんアートのキュレーターによると、文化は都市型の文化、郊外型の文化そして田舎の文化の3種類に分類されて、おかんアートはどの文化にも存在するのだそうです。

それはいいんですけど、気になったのは 「田舎だけで栄える文化もある。カカシ祭とか」という一文。それって東麻布に喧嘩売ってますよね。

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おかん宇宙のはぐれ星

さらにおかんアートに限りなく近いけど全く独自の表現を展開している3人の作家たちの作品が「おかん宇宙のはぐれ星」というコーナーで展示されています。

▲大阪の野村さんのチラシ箱。

広告チラシを追って作る「チラシ箱」を日々大量に生み出しているそうです。

揃った折り目の造形、チラシの色味などが思わぬ味を出しています。

▲名画座の早稲田松竹に勤め、劇場入り口やトイレの棚などを飾るオブジェを長年作り続けた荻野さんの作品。

▲材料は惣菜のトレー、刺し身に付いてるプラスティックの笹、牛乳パック、食玩のおまけなどなど。

廃材を使ったジオラマたちです。

▲50代になってから制作に専念するようになった嶋さんの切り絵。

すごい細密な切り絵ですし、使われている素材の情報量も膨大。そしてさらに細かくみていくと、嶋さんの世界に対する批評が見えてきます。

▲本人曰く「アートなのか、ゴミなのか微妙・・」という新聞バッグ。

パンデミックな世界で日々家の中にたまる新聞紙を折って作り続けたそうです。その数は全部で400個以上。

▲顔、顔、顔で埋め尽くされた切り絵。

よく知る顔からまったく無名の人まで。これもここからメッセージを読み取れるのか、単に視覚的な面白さを味わえばよいのか。

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公園通りギャラリーの場所

渋谷の公園通り沿いにある「渋谷区勤労福祉会館」の1階です。

公園通りのその名も「勤労福祉会館前」交差点の角にあります。斜向かいはあの渋谷パルコなので迷いようがないと思います。

入館料も無料で新しい視点からの新しいアートが発見できる展覧会です。4月までと残り期間も長いので、渋谷に行った際にはぜひチェックしておきたいです。

家の中や実家など身近にもおかんアートのアーティストがいるかもしれません。おかんアートを探す視点で家の中を見回してみたいですね

Museum of Mom’s Art ニッポン国おかんアート村 基本情報

名称 Museum of Mom’s Art ニッポン国おかんアート村
会場 東京都渋谷公園通りギャラリー
住所 渋谷区神南 1-19-8 渋谷区立勤労福祉会館1F
会期 2022年1月22日(土) 〜 4月10日(日)
閉館日 月曜日 (ただし3月21日は開館)、3月22日(火)
開館時間 11:00 – 19:00
入館料 無料

 

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