10/2から国立新美術館で始まった「カルティエ 時の結晶」を早速鑑賞してきました。
この展覧会は、ため息が出るような宝石の美しさはもちろんのこと、そのとんでもない豪華な宝石を見せるための展覧会会場構成をあの杉本博司氏が担当している事も話題の一つです。
杉本博司氏についてはこのブログでも茶酒金田中を紹介しています。
正確に言うと2008年に杉本博司と榊田倫之が立ち上げた新素材研究所と言う建築設計事務所が会場構成を担当しています。
まず、会場に入ると無料でガイドが配布されます。通常の美術館で配布している音声ガイドではなく、富士通のスマートフォン型の端末とイヤホンを取り扱い説明を聞いて受け取ります。
そのために少し並ぶことになります。10/5の時点では5分にも満たない時間でしたが、混雑してくる展覧会期後半はもっと待つことになるかもしれません。
ガイドが配布される理由は会場に解説がないからと言うことです。
なぜなら、会場はとにかく暗いです。暗いが故に宝石の眩い輝きは強調され、美しい展覧会になっています。
会場は大きく3章から成っています。章ごとには解説がありますし、一つ一つの宝石ごとに最低限の情報(年代、所蔵など)の入ったキャプションはあります。
ですから、ガイドではより詳細な解説を聞くことができます。
更に、原則撮影は禁止です。しかし、最後の部屋だけ撮影可能となっています。
と言うわけで、このブログでは最後の部屋について、特に杉本博司氏こだわりの会場構成を中心に紹介したいと思います。
まず、豪華なネックレスを見せるためのトルソーです。これはなんと9人の仏師が3ヶ月かけて彫ったもので、その素材は樹齢1000年の屋久杉や、神代杉、神代欅です。
神代杉・神代欅と言うのは千年以上もの長い間地中や湖底に埋もれていた杉を神代杉、欅を神代欅と呼びます。
杉本氏の「旧素材こそ最も新しい」という理念から作られています。▼
そんな貴重な木材ですから、少々クラックが入ったってそれも味なのです▼
そして、そのトルソーや宝石を支える石もただの石ではありません。火山灰が固結してできた武骨な凝灰岩(手前)です。
そして、更に濃紺の美しい光学ガラス(奥)も同様にトルソーの土台として使われています。
偶発的に生まれたデザインや、建築性のあるつくり、日常の中の美から生み出されたものを多用しています▼
トルソーの台は濃紺の光学ガラス▼
これら光学ガラスは、このブログでも紹介した西麻布にある三保谷硝子店が制作したものです。
三保谷硝子と言えば江之浦測候所のガラスの能舞台や東京都庭園美術館の影がハートになるガラスなど杉本博司建築には欠かせない存在です。
光学ガラスに飾られたティアラ▼
光学ガラスの上のブローチ▼
什器はこんな感じです。
暗いのでよくわかりませんが、キャプションの書かれている金も古代色だそうでなんだかとっても上品で高そうです。▼
人が一人前に立ってしまうとたちまち展示品は見えにくくなります。
一つ一つが小さいものですから、これは仕方がありません。混雑してない時期、時間を狙うしかないですね。
そして、最後の部屋に鎮座する”地球に見立てた”という彗星の軌道を描くようなループ状の巨大な什器がすごい!
窓の角度が少しづつ変化していく流線型の什器です。▼
奥に行くほど窓が立ち上がっているのがわかります。▼
角度だけではなく、窓のサイズも変化しています。
中の展示品もネックレスからだんだんと小さいものになっていきます。▼
これも人が多いと何も見えませんね。▼
什器の中の様子です。▼
展示什器だけではなく、ここから撮影可能エリアにある展示物にも注目したいと思います。
東洋にインスパイアされたものなど面白いものが色々あるのですが、ここでは動物ものに注目したいと思います。
何気なくいる虎ちゃんの下にある巨大な宝石!
いかほどするものなのか想像すらできません。▼
今回の出品の300点のうち半数は個人所蔵のものです。世界にはこんなすごいもの持ってる人がいるんですね。
左端の下のダラーンとした虎なんて遊び心あり過ぎですよね。▼
かなりリアルなワニ▼
ワニと超どデカイエメラルド。すごい組みわせです。
このチョーカーつけたら一体何を着たらいいのでしょうか?
庶民には全く想像がつきません。▼
こちらは一見素敵なチョーカーなのですが、よく見るとこれまたリアル!▼
このチョーカーは実物大の蛇です。
お腹の模様なんてもう、気持ち悪い領域に達しています。▼
一番度肝を抜いた爬虫類シリーズはこのコブラです。
誰がどう言う用途でこのコブラをダイヤモンドで作ろうと思ったのでしょうか。▼
素直にすごーーいとため息が出たのはこのティアラです。
ティアラなんて生まれてこの方一度もつけたことがないので、もうすごいとしか言いようがありません。▼
最も苦労した点は「広さも高さもある会場で小さい宝石を見せるので、空間的な抑揚や視線の移ろいを意識した」と榊田氏は語っています。
過去にもメゾンでは30回以上もの展覧会を開催し、歴史や技術にフォーカスした内容は多くあったのですが、特に1970年代以降の現代作品のデザインに焦点を当てるのは初の試みだそうです。
約半数が通常は公開されることのない個人所蔵の物ですからこの機会に見ておかないともう一生目に触れることはないかもしれません。
とにかく会場構成も出品されているものも何かもすごいので混雑する前に足を運んで欲しいです。
最後に会場出口のミュージアムショップもなかなか凝っていますよ。
書棚には展覧会図録が並びます。
グッズも色々販売されています▼
上品なメモブロック▼
「カルティエ 時の結晶」
2019年10月2日(水)〜12月16日(月)
休館日:毎週火曜日 ※10月22日(火・祝)開館、10月23日(水)休館
開館時間:10:00〜18:00(毎週金・土〜20:00)
会場:国立新美術館 企画展示室2E
住所:東京都港区六本木7-22-2
観覧料:一般 1,600円、大学生 1,200円、高校生 800円、中学生以下無料