知る人ぞ知る硝子店
西麻布の六本木通り沿いにある三保谷硝子(みほやがらす)は創業が明治4年(1871年)。この地で4代続く硝子店です。
三保谷硝子店、毎朝店頭で大きなガラスをトラックに載せていますし、名前から硝子を扱うお店なのは判ると思います。しかし、実はこの三保谷硝子店すごいんです。
AXISでの展覧会
2009年10月には六本木AXISギャラリーにて「三保谷硝子店 101年目の試作展」を開催しています。
これは、三保谷硝子店と16人のクリエイター達がガラスの新たな表現に挑む展覧会でした。硝子店が主体となって展覧会を開催するということはあまりない事です。
これだけでもちょっと普通じゃない硝子店だということがおわかり頂けると思います。
倉俣史朗との出会い
三保谷硝子店が多数のデザイナーとの協働を始めるきっかけは今は亡きデザイナー倉俣史朗さんと3代目との出会いだったと言われています。
倉俣史朗さんといえば透明な浮遊感のある家具など多くのデザインの名作を残した大巨匠です。
ガラスの椅子もさることながら、ガラスの割れたところが綺麗だからそれを使いたいと言う倉俣さんの一言で生まれた「割れガラス」など数々の伝説を生みました。
倉俣さんと協働する事で三保谷硝子店は、無理難題やとんでもない精密さを求めるデザイナーの要望、または要望以上に応える事でデザイン界に名を馳せていきました。
杉本博司と三保谷硝子店
近年はアーティストだけでなく建築など多方面での活躍が目覚ましい杉本博司さんとの仕事も多数あります。
麻布近辺だと2014年にリニューアルオープンした東京都庭園美術館が記憶に新しいところです。
庭園美術館の本館から新館へのアプローチにある硝子は三保谷硝子店の仕事です。
ハートの影のガラスと言うとわかる人もいるかもしれません。
もっともハートの影は計算ではなく嬉しいハプニングだったようですが。
ガラス板に付けられた窪みが床や壁にちょうどハート型の影を作っているのです。もしカップルで庭園美術館へ行くことがあったら、ぜひ二人でこのハートの影を見て欲しいですね。
四代目が継ぐ三保谷硝子店
残念ながら昨年3代目が亡くなり、現在は、2009年のAXISギャラリーで襲名披露が行われた4代目が引き継いでいます。
4代目に代がわりしてもアーティストやデザイナーとの仕事は続いており、小田原にある杉本博司さんが手掛けられたの江之浦測候所の硝子の能舞台は三保谷硝子店の仕事です。
海に浮かんでいるかのようなこの硝子の能舞台、30枚の硝子板から出来ています。
また隣り合う赤錆びた鉄の筒は東方を向いていて冬至には、日の出の陽光がこの鉄の筒を貫くように設計・設置されているそうです。まるで現代に蘇えるストーンヘンジのような祭事的な空間です。
10月にオープンして以来密かに注目を集めている江之浦測候所ですが、その中でも白眉はやはりこの能舞台でしょう。
実は能舞台以外にもあちらこちらに三保谷硝子店が制作した硝子の工芸品が使われていて、杉本博司さんのお気に入りだと感じさせられます。
それにしても、三保谷硝子店がアーティストやデザイナーとどんなコラボレーションをしていくのか、今後も目が離せません。
三保谷硝子