地球がまわる音を聴く
六本木の森美術館(六本木ヒルズ内)で始まった「地球がまわる音を聴く:パンデミック以降のウェルビーイング」。サブタイトルにあるように、パンデミック以降の世界で心身ともに健康にどう生き抜こうかというテーマの展覧会です。
また企画当時と今の世界の違いは戦争の存在。アーティストの中にはパンデミックだけに留まらず、ポストパンデミック、ポストウォーと読み替えての作品を出展している人もいます。
内覧会に招待されたので展覧会の様子をいち早くレポートします。会期中何度も訪問すると思うので、混雑状況のアップデート、展示内容の変更などは都度この記事を更新する予定です。
▲2022年6月29日開幕で11月6日(日)まで、約5ヶ月の長い会期です。夏休みの六本木や秋の六本木アートナイトでこの展覧会を訪れる機会もあると思います。参考になれば幸いです。
この展覧会の性質上、いきなり混むようなことはなくて、会期末が近づくにつれ混むタイプだと思います。写真を撮りたい方は空いている会期の最初、できれば夏休み前に訪問するのが良いでしょう。
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出展作家たちと写真撮影について
出展しているのは国内外から全部で16名のアーティスト。現存作家だけでなく物故作家も含まれています。
このうち飯山由貴、小泉明朗、内藤正敏は全面的に撮影禁止です。
ヴォルフガング・ライプとギド・ファン・デア・ヴェルヴェは一部撮影禁止作品があるので、会場での指示に従ってください。
出展アーティスト
オノ・ヨーコ
この展覧会のタイトル「地球がまわる音を聴く」の英語タイトルは「Listen to the Sound of the Earth Turning」。これはオノ・ヨーコの1963年のインストラクション・ペインティング作品「EARTH PIECE」からの引用です。
会場入り口、会場半ば、それと会場の最後にヨーコさんのインストラクション・ペインティング作品が展示されています。要するに展覧会のバックボーンとなっているのはオノ・ヨーコ。
展覧会の企画時には疫病を克服した世界というテーマだったのでしょうが、疫病に加え戦争という予期しない出来事のせいで逆にオノ・ヨーコの重要性が高まったのがなんとも皮肉です。
パンデミック前のヨーコさんのツィート。
”私たちは皆一緒に回っている、素敵じゃない?”
Listen to the sound of the Earth turning.
We are all turning together. Isn’t it nice?— Yoko Ono ☮️🏳️ (@yokoono) May 20, 2019
ヴォルフガング・ライプ
オノ・ヨーコで始まって次はドイツのアーティスト ヴォルフガング・ライプです。
床に大きく広がるの黄色いパウダーは本物の花粉です。
▲これは蜜蝋の作品。中に入って鑑賞します。
外から撮影するのはOKですが、中での撮影はNGです。
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エレン・アルトフェスト
次はアメリカの女性画家エレン・アルトフェスト。
▲現実を超細密に具象として描きこんだら抽象的になったという、素粒子物理学を絵に書いたような展開が素晴らしい。
小さいサイズの作品ほど抽象度が高いというのも面白いです。
ベンチが置いてありますが、まさにじっくり堪能したい作品たちです。
青野文昭
飯山由貴とか撮影NGなエリアが続きます。
内藤正敏の写真作品の次が青野文昭。
そう、2011年3月11日の午後2時46分。
東日本大震災をテーマにした作品です。
▲津波で流された神社を記憶に基づいて復元しようとした作品。数十点の細かい作品からなっています。
東北の土着的な風景、諸星大二郎の作品に出てくるような世界が垣間見える圧倒的な作品です。
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ロベール・クートラス
ミナ・ペルホネンの皆川明もファンだと公言するフランスの画家ロベール・クートラスの作品たちも。
クートラスが売らずに手元に残していた数百枚の作品群です。
▲人気のあるユーモラスな絵ではなく、パリやクートラス自身のダークサイドを描いたような作品です。
▲一種のアウトサイダー・アート的に捉えた方が良いかもしれない作品、アーティストでした。
金崎将司
アール・ブリュットの金崎将司。NHKの「no art, no life」でも紹介されたアーティストです。
気が遠くなるような作業を経て完成した作品です。
堀尾貞治と堀尾昭子
この二人は夫婦です。同じ展示スペースに2人の作品が展示されています。
なお夫の堀尾貞治は2018年に亡くなっていますが堀尾昭子は存命です。
右の壁には ”一本足打法” という書きなぐり手法で描かれた作品たちです。1枚を10秒くらいで描いてしまうこともあるそうで、金崎将司の作品とは真逆です。
左の壁一面のオブジェもまとめて一つの作品。行きている証として壁のオブジェに色を塗り続けたのだそうです。
▲自宅アトリエを再現したもので、まさに生きた証としての作品。
鏡とか箱とかミニマルな作風。夫の貞治の生きるパワーが塗りたくられた作品とは対極にあるような作品なのが面白いです。
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金沢寿美
金沢寿美の作品は新聞紙を使ったカーテン。
10Bという濃い鉛筆で新聞紙を塗りつぶしています。塗り残した部分は彼女が気になった単語、写真。
結果的にある傾向のメッセージが浮かび上がるという趣向です。
”子ども100人超” というのはウクライナのことですね。その下の方にはプーチンの顔やロシアという文字も見えます。
じっくり時間をかけて読み解きたい作品です。
モンティエン・ブンマー
タイを代表するアーティストだったのがモンティエン・ブンマー。
箱は都市を、上からぶら下がるのは人間の肺を模したオブジェ、そして箱の中には薬草が塗布されています。
肺にダメージを与えるCOVID-19とそれを治癒する薬草・・・いろいろ暗示的で今の世界を表現した作品かと思いますが、でも20年以上の前の作品です。
ツァイ・チャウエイ(蔡佳葳)
ツァイ・チャウエイ(蔡佳葳)は台湾のアーティスト。
極楽に咲く蓮の花のようでもあり、曼荼羅のようでもあり。
手前の作品と併せて観ると、これは涅槃の世界を表しているのだというのが分かります。
いろいろヘビーな作品が並ぶ展覧会は最後をオノ・ヨーコで飾って終わります。
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ミュージアムショップ
展覧会の公式グッズも紹介します。
展覧会のタイトルからしてオノ・ヨーコなので、グッズもオノ・ヨーコ関連が多いです。
▲オノ・ヨーコの”Listen to the sound of earth turning” のインストラクション・ペインティングが胸に入ったTシャツ。4980円。
展覧会のTシャツとしてはもちろん、オノ・ヨーコのTシャツとしても着られて一石二鳥ですね。
▲ヨーコのインストラクション・ペインティングのポストカードも売っていました。1枚220円。
展覧会のカタログは3,960円ですが、現在鋭意製作中で8月下旬発売予定だそうです。
それ以前に訪問した人は予約するしかありませんね。
MAMコレクションとサーチ
森美術館の後は同じフロアにあるMAMコレクション、MAMスクリーンそれとMAMサーチも忘れずに観ておきたいです。
これらは全て無料で鑑賞することができます。
▲MAMコレクションでは「仙境へようこそ―やなぎみわ、小谷元彦、ユ・スンホ、名和晃平」、MAMコレクションサーチでは「正義をもとめて―アジア系アメリカ人の芸術運動」を11月6日(日)までの予定で開催中です。
出展アーティストの作品集
まずは勉強してから行くか、観てから気になる本を買うか。
出展アーティストの著作や作品集などはAmazonから購入できます。
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チケット情報、アクセス
チケット購入方法
森美術館のチケットの入手方法は2つ。
一つは六本木ヒルズのチケットサイトで購入する方法。最初に会員登録をするかヒルズIDが必要なのが面倒ですが、いったん登録すればHILLS APP(ヒルズアプリ)を使った入場ができるので便利です。
iPhone用のiOS版ヒルズアプリ(App Store)
Androidスマホ用のAndroid版ヒルズアプリ(Google Play)
もう一つは六本木ヒルズ森タワー3階の美術館・展望台チケットで購入する方法です。ただし当日枠に空きがある場合だけです。
あと森美術館の「MAMC(メンバーシッププログラム)」に入れば予約不要で入館することができます。森美術館を年に2回以上訪問するならMAMCへの入会も検討してみてください。
期間限定お得チケット情報
期間限定ですがお得な料金で鑑賞できるチケットが設定されています。
ウェブ限定! ナイトペアパス
18:00以降、2名で入館できるペアチケットです。週末で1名1,250円、平日は1名1,000円で入館できます。
夏の夜の六本木で地球がまわる音を聴いてみましょう。
学生応援サマーパス
学生と子供料金が500円割引になるなります。
対象は学生(高校生、大学生、大学院生、短大生、専門学校生)、子供(4歳から中学生まで)で、オンライン料金、当日窓口料金どちらでも割引になります。
どちらのパスも2022年6月29日(水)~7月31日(日)の期間限定です。
森美術館へのアクセス
まず六本木ヒルズへのアクセスですが最寄り駅は日比谷線六本木駅。六本木ヒルズ側改札(広尾側)から出れば直結です。
大江戸線六本木駅を利用の場合はいったん地上に出て六本木ヒルズに向かいます。
また渋谷駅から都営バスの都01系統で新橋行きに乗り「六本木駅前」で降りればほぼ向かいが六本木ヒルズですし、「RH01六本木ヒルズ行き」なら文字通り六本木ヒルズ直行です。利用しやすいルートを使ってください。
六本木ヒルズに着いたら蜘蛛みたいなオブジェ「ママン」がある66プラザに出て大屋根広場を目指してください。映画館や大屋根広場の手前の小さい丸い建物(ミュージアムコーン)が美術館入り口です。週末ならたいてい行列しているか、付近でここだけヒルズのスタッフが立っているのですぐに分かると思います。
▲そしてミュージアムコーンから3Fに上ってブリッジを渡り、チケット・インフォメーションで入館手続きします(紙チケットの場合)。
予約してある場合はゲートでQRコードをかざしてそのまま入館。
直通エレベーターで52Fへ上がります。
▲森美術館は53F。エレベーターで52Fへ着いたらこのエスカレーターで53Fへ上がります。
ロッカーはこのエスカレーターの裏側にあるので、大きな荷物などはロッカーに入れましょう。100円ですが荷物を取り出す時に返却されます。
2022年の夏休みから秋口まで5ヶ月近い会期ですが、閉幕が近づけばどんどん混み合うのがこうした展覧会です。
少しでも空いている早い時期に訪問して、今の時代をポジティブに生き抜くためのメッセージを感じ取りたいですね。
地球がまわる音を聴く:パンデミック以降のウェルビーイング 基本情報
イベント名 | 地球がまわる音を聴く:パンデミック以降のウェルビーイング Listen to the Sound of the Earth Turning Our Wellbeing since the Pandemic |
会場 | 六本木ヒルズ内 森美術館 |
会期 | 2022年6月29日(水) 〜 11月6日(日) 会期中は無休 |
開館時間 | 10:00 – 22:00 (火曜日のみ17:00まで) |
入館予約 | 日時予約推奨 |
入館料 | 大人1,600円、高校大学1,100円、4歳〜中学500円、65歳〜1,300円 (平日 オンライン料金) 土・日・祝や窓口購入は別料金 料金詳細はこちらから |
撮影 | 原則可能。撮影NG作品には掲示あり。 |