装飾の庭 ー 朝香宮邸のアール・デコと庭園芸術
1983年に開館した白金台の東京都庭園美術館は2023年が開館40周年。さらに本館は1933年完成ですから90周年。いろいろな意味で節目の2023年秋の庭園美術館では様々なイベントが企画されています。
秋の庭園美術館の展覧会は「装飾の庭」展。アール・デコ時代の庭園芸術を特集する日本で始めての展覧会です。
この会期中には紅葉の季節になり夜間開館が行われるなど例年何らかの企画が行われますが、開館40周年の2023年はさらに盛り沢山の企画が用意されています。
「装飾の庭」展の開幕に先駆けて行われた ”MEET UP IN THE GARDEN” という内覧会+庭園ツアーに参加させていただいたので、展覧会の模様をレポートします。
またこの秋の企画で参加できたものがあればそれも随時追記していきます。本当に2023年の秋は庭園美術館から目が離せません。
なお、本記事で使用されている写真の多くは内覧会で特別に許可を得て撮影したものです。庭園美術館の館内、展覧会で撮影を行う際は現地での最新の指示に従いマナーを守って撮影するようお願いします。
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会場の東京都庭園美術館
▲旧朝香宮邸として1933年、アールデコが全盛期を迎えていた時代に建設された貴重な建物で ”現存する世界一美しいアールデコ建築” ことも言われ、建物自体が芸術品とも言えます。
朝香宮が明治天皇からこの土地を下賜される前は帝国陸軍の火薬庫だったそうです。そして朝香宮家が廃された戦後は外務大臣公邸、迎賓館などとして使われきて、日本の戦前戦後の歴史が刻まれた建物です。
旧朝香宮邸を改修したのが本館、現代美術作家の杉本博司を迎えて建設された新館が美術館としての主な展示会場。さらに 西洋庭園と和風庭園を備えているところが 「庭園美術館」たるところです。
まだ夏が終わり切っていませんが、「装飾の庭」展の会期後半は庭園美術館が一番美しい時期、つまり紅葉の季節です。
▲正面玄関からは第一応接室がガラス窓を通して覗けるようになっていて、そこには毎回その展覧会を凝縮したような展示が行われています。今回は中が見えやすく展示されています。
入館前にまず鑑賞し、帰りにもう一度じっくり観ると展示の意図がよりわかりやすいと思います。意外とこの展示に気づかず出入りしているお客さんが多いのでお見逃しなく。
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「装飾の庭」展
この展覧会は大きく三部構成。
本館の1階を使い展開されているのが朝香宮邸本館と庭園との共演、本館2階はアンリ・ラパンによる朝香宮邸装飾プランに関する資料や当時の記録映像などの展示が行われています。
そして新館では戦間期フランスにおける庭園芸術に関する展示です。
撮影と注意事項
撮影について
通常ですと、東京都庭園美術館は原則として本館内の撮影は禁止です。
しかし今回の「装飾の庭」展では写真撮影が可能です。ただし動画撮影は禁止です。
・接写での撮影は禁止、撮影禁止と明示されている作品も撮影禁止です。
・それ以外の撮影に関する注意事項は
フラッシュ、レフ板、三脚、自撮り棒、望遠レンズは使用しない
動画の撮影は禁止
作品や建物に危険が及ぶ行為は禁止
です。常識的なことばかりですね。
注意事項
・撮影以外の鑑賞自体に対する注意事項は
作品、建築、家具、スクリーン等には手を触れない
混雑時の不意の接触にも注意する
要するに荷物はロッカーに入れましょう
傘・日傘の館内への持ち込みはできません
飲料、食料品は展示室内へ持ち込みできません
です。これも常識的なことばかりですね。
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装飾の庭 − 本館1階
1階の各部屋の展示をみてみます。
▲庭園美術館のシンボル的存在の「香水塔」。大広間と大客室をつなぐ「次室(つぎのま)」に置かれています。
どうということのないいつもの風景ですが、カーテンが上げられ芝生庭園が見えるようになっているところが今回の特長です。
ここもいつもはカーテンが閉じられているのですが、今回はカーテンが開けられ大客室から芝生庭園が見えます。
紅葉の季節になれば日本庭園の紅葉も大客室から見えるかもしれません。
やはりカーテンが開けられ芝生庭園を眺めながらのディナー風景を再現しています。
この大食堂はアール・デコ時代の装飾を日本の職人が技を尽くして造り上げたもので、そうした視点から見るとため息しか出ない空間です。
いつもですとカーテンが閉じられ部屋の中はよく見えません。でもカーテンが開けられていると中の照明など装飾がよく見えます。新鮮な構図で大食堂を見ることができます。
▲アンリ・ラパンが描いた絵が載っているフランスの雑誌。
A・プリンス邸、つまり朝香宮邸の大広間として紹介されていました。
完成当時は実際にこのような姿だったのでしょう。
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装飾の庭 − 本館2階
続いて本館2階へ上がるとアンリ・ラパンに関する資料などが展示されています。
▲これはルネ・ラリックによる本館正面玄関の扉の装飾。こうやって間近でまじまじと見れるのは初めてかもしれません。
今はお隣さんの国立科学博物館附属 自然教育園も、どんぐり公園も当時は朝香宮邸だったことが判ります。そしてプラチナ通り(外苑西通り)もこの頃はまだ開通していなかったのですね。
また2階は「装飾の庭」展の第二部「朝香宮と庭園」の展示も行われています。当時の貴重な映像資料が多く展示されています。
新館 − アール・デコの庭園芸術
新館では第三部「アール・デコの庭園芸術」です。
▲1925年に ”アール・デコ博覧会” を公式訪問する朝香宮夫妻の映像から始まります。
▲この第三部は撮影禁止作品が多いのですが逆に見どころもボリュームたっぷりな展示です。
イギリス風景式庭園が席巻していたフランスの庭園を、装飾芸術と捉えることでフランスの近代庭園を構築していく動きを俯瞰する展示ですから膨大になります。
▲さらにそんなモダンな庭園と相互に影響を与えあった戦間期のフランス文化。新館だけで一つ分の展覧会にもなりそうなボリュームです。
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ウィンターガーデン
そしてウィンターガーデン。要するに温室です。
普段は非公開で特別な企画の時だけ公開される部屋ですが、「装飾の庭」展では過去にない演出で公開されています。
▲今回はテーブルにティーセットが用意され、内部はフェイクグリーンで飾り立てられています。
室内に置かれた椅子とテーブルは朝香宮自身が見繕って購入したバウハウスのデザイナー、マルセル・ブロイヤーによるものです。
▲当時実際にサボテンなどが温室に置かれていたかは分かりませんが雰囲気は伝わってきますね。
市松模様の床は人造大理石。これも超絶技巧によって制作されたもので、もはや再現不可能なオーパーツ的な床です。
朝香宮夫妻がその美意識でこの温室どのように利用していたのか気になります。
取手部分の幅や取り付け角度が左右で微妙に違うのです。たぶん何か理由があるのだと思います。
また2階ではウィンターガーデン内を360度ぐるっと見回せる映像を公開していました。がらんどうのウィンターガーデン内をくまなく見ることができます。人感センサーで画像をぐるぐる回せるはずです。
なおウィンターガーデンは、現地で見学を申し込み、注意事項を了承した人だけが室内を見学することができます。
ウィンターガーデンの見学申し込みは本館西側の階段のところに立っている係員さんに口頭で申し込みます。見学にあたっての注意事項は次の通り。
・定員は9名
・混雑時の見学は10分以内
・階段の手すり壁から身を乗り出さない
・火災など緊急時は係員の指示に必ず従う
これを了承したら階段を上がってウィンターガーデンへ向かいます。
40周年ということでいつもとはまた違った趣向が施された展覧会になっています。ウィンターガーデンを特別な演出をして公開するのそうですし、2023年の秋は他にもイベント多数です。
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TEIEN 40th Anniversary Festival
TEIEN 40th Anniversary Festival、つまり庭園美術館40周年フェスティバルです。
2023年10月1日(日)から11月19日(日)にかけていくつかのイベントが開催されます。
ジャズとダンスの祝宴 マチネ
10月1日に開催されるのが「ジャズとダンスの祝宴」というジャズバンドのライブとダンスのコラボレーション。アール・デコな場所でジャズとダンスというと、スウィング・ジャズとジョセフィン・ベーカーみたいな感じになるのでしょうか。
10月1日の13:30からと15:00からの2回公演。どちらも30分程度です。
なお10月1日は「都民の日」で入館無料です。都民でなくても入館無料です。要するに無料でイベントと展覧会を見ることができます。
さらに「庭園マルシェ」としてキッチンカーも出て西洋庭園で飲食ができるようです。
9月30日の午後には公開ゲネプロが行われるそうですが、そちらを見るには庭園の入場料または展覧会チケットが必要にになります。
ジャズとダンスの祝宴 ソワレ
「ジャズとダンスの祝宴」の夜間公演が11月17日(金)と18日(土)に開催されます。開演は18時。
これも公演自体は無料ですが庭園の入場料または展覧会チケットが必要です。またこの日は後述する庭園の大木へのプロジェクションマッピングと合わせて鑑賞できます。
光 宿る大樹
4月に本館を使ったプロジェクションマッピングが行われましたが、秋は芝庭の大きなムクノキにプロジェクションマッピングで映像を投影します。
▲この大木がモビールで飾り付けられ、プロジェクションマッピングで映像が投影されます。
▲一応ストーリー仕立てになっているようなので、芝庭に座って色や姿を変える大樹の様子を楽しんでみましょう。
実施期間は10月20日(金)から11月19日(日)まで。時間は毎日16時から18時までです。
さらに11月17日(金)と18日(土)は夜間開館が実施され20時まで開館しています。真っ暗な中でのプロジェクションマッピングなので少し寒いでしょうけど狙い目だと思います。
プロジェクション・マッピングもそれ自体は無料ですが庭園の入場料または展覧会チケットが必要です。
庭園能
11月24日(金)から25日(土)は芝庭を舞台に「庭園能」が3公演開催されます。
この公演だけは庭園美術館とは別のチケットが必要で各公演 5,000円。e+(イープラス)で購入できます。
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ART WEEK TOKYO 2023
東京の街と美術館、ギャラリーを無料のシャトルバスに乗って巡るArt Week Tokyo(アートウィーク東京)は2023年11月2日(木)から11月5日(金)までの開催。
庭園美術館もアートウィーク東京に参加しています。
六本木・麻布界隈を巡るDルートのバスを使えば、村上隆のカイカイキキ、国立新美術館、六本木ヒルズの森美術館などと合わせて訪問できますし、Eルートのバスを使うとAWT BARがある青山・骨董通りや西麻布などに移動することができます。
地下鉄やJRだと意外と移動が面倒な庭園美術館ですが、アートウィーク東京の無料シャトルバスを利用すれば効率よくアート巡りができると思います。
フラットデー
開館40周年記念とは関係ありませんが、庭園美術館では 「フラットデー」という、誰もがフラット、安心して楽しめる環境づくりに取り組んでいます。
この秋のフラットデーは以下の予定で開催です。
ゆったり鑑賞日
人が多い美術館に不安がある方、車椅子の方や介助が必要な方でもゆとりある環境でゆっくり鑑賞できる日です。
開催日は2023年11月8日(水)、2024年3月13日(水)。どちらも10時から18時です。
ベビーアワー
赤ちゃんも一緒に美術館へ。普段はベビーカーを使えない本館もベビーカーで入館できるのが「ベビーアワー」です(ただし事前申込が必要です)。
開催日は2023年11月22日(水)、2024年3月27日(水)。
40周年記念もですしフラットデーもそうですし、館長が妹島和世氏になってから意欲的な企画が目白押しという感じの庭園美術館です。
「装飾の庭」展、40周年記念のイベント、そして秋の紅葉。楽しみばかりの庭園美術館です。
庭園美術館の場所とアクセス
庭園美術館は広い敷地を誇りますが一般向けの入り口は正門しかありません。白金台の目黒通り沿いです。
地下鉄の白金台駅、JRや東急線が通る目黒駅が最寄駅ですが徒歩の場合は白金台駅の方が近いですし、庭園美術館の行き帰りに白金台の街を楽しめるのおすすめです。
もし目黒駅からなら都営バスの黒77/橋86/品93いずれかの系統に乗り2つ目の白金台五丁目バス停で降りると近いです。逆に言うとこの系統のバスが使えるなら電車よりバスの方が良いかもしれません。
駐車場もありますが1回1,500円の有料駐車場になります(レストランだけを利用する方は有料でも駐車場を利用することはできません)。
装飾の庭 朝香宮邸のアール・デコと庭園芸術 基本情報
名称 | 装飾の庭 朝香宮邸のアール・デコと庭園芸術 |
会場 | 東京都庭園美術館 |
会期 | 2023年9月23日(土) 〜 12月10日(日) |
時間 | 10:00 − 18:00 11/17, 18, 24, 25、12/1, 2は20:00まで開館 |
入館料 | 一般 1,400円、大学生 1,120円、中高生・65歳以上 700円 |
予約 | 日時予約推奨(Peatix) |
撮影 | 写真撮影可能、動画撮影禁止 |
東京都庭園美術館 基本情報
名称 | 東京都庭園美術館 |
住所 | 港区白金台 5-21-9 |
最寄駅 | 白金台駅、目黒駅 |
休館日 | 月曜日 |
時間 | 10:00 − 18:00 (土日祝は17:30まで) |