マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート
六本木の六本木ヒルズ53Fの「森美術館」ではAI、仮想現実(XR)、生成AIなどの先端デジタルテクノロジーを利用した現代アートを紹介する展覧会《マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート》が開催されています。
12組のアーティストが約50点の作品を出展しています。
この展覧会の凄いのは作品の多くが映像作品で、全部見ると約6時間。それ以外にエンドレスで映像が流れる作品のあるのでそれも含めれば軽く6時間以上の時間が必要なところです。
純粋のアート作品自体も楽しめますが、テクノロジーと現代アートの関係も含めて楽しむ。そんなメタな構造の展覧会になっています。
最新の現代アートの状況を知るだけでなく、デジタルテクノロジーが人間や社会をどう変えていくのか、それをアーティストたちはどう捉えているのかを考える切っ掛けにもなるおすすめの展覧会です。

▲会期は2025年2月13日(木)から6月8日(日)まで約4ヶ月の長い会期です。
春休みからGWの期間にも重なりますから。その時期に東京や六本木を訪れる予定があるなら併せて「マシン・ラブ展」も訪問してみてはどうでしょうか。
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写真撮影と鑑賞時間について
この展覧会も基本的に写真撮影も動画撮影もOK。ただし動画撮影は1分以内に制限されています。
フラッシュ使用禁止、三脚や自撮り棒の使用禁止といった点はいつも通りです。特に暗い部屋での映像作品は意図せずフラッシュが炊かれてしまうことがあるので、事前にフラッシュがオフになっていることを確認しておきましょう。
前述したように映像作品の総上映時間は5時間53分。そこにエンドレス映像が加わりますから映像だけで最低でも6時間は必要です。
それ以外にも作品があって、その中には読み込むだけで30分くらいかかる作品があります。
さらに無料で楽しめるビデオゲームもありますから、なんだかんだで7時間コースです。
しっかり鑑賞時間を取って訪問するか、場合によっては複数回に分けて訪問した方が良いかもしれません。

▲会場に入ると「マシン・ラブ展をもっと楽しむための用語集」というパネルがあります。
これ、生成AIが出力したものを使っているそうで、もっともらしいことが書かれていますが展覧会を楽しむのにこれを読んでおく必要ありません。あくまで ”マシン・ラブ展をもっと楽しむための用語集” という作品を生成AIに作らせてみたという建付けです。
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マシン・ラブ展の主な作品
マシン・ラブ展には12組、約50点の作品がありますが、主な作品を紹介します。

▲会場に入って最初に目にする作品がこれ、ビープル(Beeple)の《ヒューマン・ワン(Human One)》。
2021年に《Everydays, the First 5000 Days》がNFTで6,940万ドル(当時のレートで約75億円)という値段が付いたことで話題になったアーティストです。
ここで見られるのはメタバース空間に生まれた最初の人間が重荷を背負いながら永遠に歩き続けるというもの。ビートルズの ”Carry that weight a long time.” をつい思い浮かべてしまいます。
永遠に続くので上映時間はエンドレスです。

▲佐藤瞭太郎はインクジェットプリンタで出力した平面作品と約11分の映像作品「アウトレット」を出品。
「アウトレット」はネット上のデータを佐藤瞭太郎自身の ”アセット” として勝手にマッシュアップして制作したもので舞台は世界のどこかの街のサバービアなアウトレット。
そう、「ドーン・オブ・ザ・デッド(ゾンビ)」のオマージュだと思います。

▲AIや物理学などの科学者との協働プロジェクトを進めるディムート(Diemut Strebe)の《総合的実体への3つのアプローチ》という作品。
AIと人間の対話、AI同士の対話など3パターンの映像の日本語バージョンと英語バージョンが流れます。全部で約1時間15分。
それと毎日11:30と15:00から30分の《エル・トゥルコ》という映像が流れます。

▲アニメ風のパネルが目立つキム・アヨン。

▲パネルの裏の部屋では上映時間25分の「デリバリー・ダンサーズ・スフィア」と作品が上映されています。
パネルの前の取っ組み合う二人の人物、ディスプレイ3面を使った映像もキム・アヨンの作品です。
映像の方は「デリバリー・ダンサー・シミュレーション」というもので、時間は約12分です。
こちらはゲームなので上映時間というものはありません。独り占めにならない程度に遊んでみましょう。
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ルー・ヤン(陸揚)
展覧会場前半のメインが上海生まれで東京にも拠点を構えながら制作を続けているルー・ヤン(陸揚)の作品。
マンガなど日本のポップカルチャーの強い影響を受けていた時期もあって日本での知名度も人気も高いアーティストです。

▲三途の川と賽の河原の向こう側、つまり彼岸に設置された大型モニターに上映されるのは《独生独死ー流動》(どくしょうどくし)。上映時間は50分15秒。
転生を繰り返しながら生きる主人公が時間、空間。宇宙、生命の秘密を考察するというもので、思わず引き込まれるような内容と映像です。

もう一本は《独生独死ー自我》。
こちらの上映時間は36分。。

▲映像が訴えてくるメッセージを考え咀嚼しながら見ても良いですし、モーションキャプチャーとCGを組み合わせた情報量の多い映像を純粋に楽しむのも良いです。
長い作品ですが何回も見たくなりますね。
注目アーティストとその作品
他にも注目アーティストが目白押し。

▲これはアフロ・アメリカンのアーティスト、ジャコルビー・サッターホワイトの部屋。
壁いっぱいを使って上映されているのは《メッター・プレイヤー(慈悲の瞑想)》という作品でディスプレイ4面で上映されます。上映時間は21分28秒。

▲壁一面に貼り付けられた壁紙も含めて「新しい世界秩序(New World Order)」という不穏な名前の作品です。メッタープレイヤーと反対側の壁にモニターとホログラムファンが設置され、そこでもサイケデリックな映像作品が上映されています。
上映時間は26分26秒、11分11秒と18分48秒。

▲藤倉麻子は映像インスタレーションを3点。
写真の《インパクト・トラッカー》の上映時間は13分38秒、もう1本13分38秒の作品があって、さらにもう1本はエンドレスです。

▲没入型インスタレーションを制作するヤコブ・クスク・ステンセンの《エフェメラル・レイク(一時湖)》。
仮想シミュレーションで映像が生成されていくので上映時間はエンドレスです。
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人気の作品
SNSなどでよく見かけるのがアニカ・イの作品。

▲LEDが光を放つ《ラディアル・センセーション》。

▲実物を見ればわかりますがモゾモゾと動いてるのです。機械と単細胞生物のあり方を通じて生命とは何かを問いかけてきます。
アニカ・イの他の作品は平面作品なので特に上映時間などは決まっていません。
全長24mの地図
展覧会の最後はAIとその影響をテーマに活動する研究者ケイト・クロフォード、ヴラダン・ヨレルによる《帝国の計算:テクノロジーと権力の系譜 1500年以降》という作品。

▲展示室の壁に貼られているのは活版印刷が発明され ”人間の知” の爆発が起こった1500年以降、テクノロジーと権力が絡み合ってきた様子を描いた ”地図” です。
テクノロジーの進歩とそれに伴う社会の変化などが可視化されたもので、じっくり読み込むとまったく時間が足りません。なおすべて英語で記述されています。

▲AIをテーマにした展覧会なのだからミンスキーやチューリングがあるかなと思って探したのですが見つかりませんでした。
その代わり世界最初のプログラマであるエイダ・ラブレスは見つけました。将来コンピューター(機械)が音楽を奏でることができるようになる、でも機械が思考することはできないだろうと予言を残しています。
本展を締めるにぴったりな人物ではないでしょうか。
なおエイダの父親はロマン派詩人のバイロン卿で「ディオダティ荘の怪奇談義」として知られる出来事をきっかけに「吸血鬼」という作品を残しています。ディオダティ荘で一緒に過ごしたのは詩人のシェリーと妻のメアリー・シェリー。「フランケンシュタイン」の作者として知られるシェリー夫人です。
ミュージアムショップ
展覧会を堪能したら次はミュージアムショップですね。
”to live fully is to be always in no-man’s-land” とプリントされたパーカーはルー・ヤンの映像の中でCG化されたルー・ヤンが着ていたものです。これは欲しいですね。
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チケット情報、アクセス
チケット購入方法
森美術館のチケットの入手方法は2つ。
一つは六本木ヒルズのチケットサイトで購入する方法。最初に会員登録をするかヒルズIDが必要なのが面倒ですが、いったん登録すればHILLS APP(ヒルズアプリ)を使った入場ができるので便利です。
iPhone用のiOS版ヒルズアプリ(App Store)
Androidスマホ用のAndroid版ヒルズアプリ(Google Play)
もう一つは六本木ヒルズ森タワー3階の美術館・展望台チケットで購入する方法です。ただし当日枠に空きがある場合だけです。
あと森美術館の「MAMC(メンバーシッププログラム)」に入れば予約不要で入館することができます。森美術館を年に2回以上訪問するならMAMCへの入会も検討してみてください。
森美術館へのアクセス
まず六本木ヒルズへのアクセスですが最寄り駅は日比谷線六本木駅。六本木ヒルズ側改札(広尾側)から出れば直結です。
大江戸線六本木駅を利用の場合はいったん地上に出て六本木ヒルズに向かいます。
また渋谷駅から都営バスの都01系統で新橋行きに乗り「六本木駅前」で降りればほぼ向かいが六本木ヒルズですし、「RH01六本木ヒルズ行き」なら文字通り六本木ヒルズ直行です。利用しやすいルートを使ってください。
▲六本木ヒルズに着いたら蜘蛛みたいなオブジェ「ママン」がある66プラザに出て大屋根広場を目指してください。
映画館や大屋根広場の手前の小さい丸い建物(ミュージアムコーン)が美術館入り口です。週末ならたいてい行列しているか、付近でここだけヒルズのスタッフが立っているのですぐに分かると思います。
▲そしてミュージアムコーンから3Fに上ってブリッジを渡り、チケット・インフォメーションで入館手続きします(紙チケットの場合)。
予約してある場合はゲートでQRコードをかざしてそのまま入館し直通エレベーターでまず52Fへ上がります。
▲ここからさらにエスカレータで上がった53Fが森美術館です。
ロッカーは52Fに設置されているので、大きな荷物などはロッカーに入れてから美術館は向かいましょう。100円ですが荷物を取り出す時に返却されます。
2025年6月8日までの会期です。ずいぶん先のように思えますが、閉幕が近づけばどんどん混み合うのがこうした展覧会です。
少しでも空いている早い時期に訪問してマシン・ラブ展をゆっくり鑑賞してみてください。
マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート 基本情報
イベント名 | マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート |
会場 | 六本木ヒルズ内 森美術館 |
会期 | 2025年2月13日(木) 〜6月8日(日) 会期中は無休 |
開館時間 | 10:00 – 22:00 (火曜日のみ17:00まで) |
入館予約 | 事前予約制 |
入館料 | 大人 1,800円、高校大学 1,300円、中学以下無料、65歳〜1,500円 (平日 オンライン料金) 土・日・祝や窓口購入は別料金 料金詳細はこちらから |
撮影 | 原則可能。動画は1分以内。撮影NG作品には掲示あり。 |