麻布十番の暗闇坂と大黒坂の交わるところ、そこから仙台坂へ抜ける道の一部が一本松坂と呼ばれています。
ここまで来ると麻布十番祭りの喧騒もなくちょっとしたお散歩にぴったりです。
このまま仙台坂方面へ向かうと途中に不思議な形をした高級マンションの元麻布ヒルズ、麻布氷川神社、アルゼンチン大使館、ステンドグラスで有名な安藤記念教会など見どころも多いのですが、一本裏側に入ってみるとまた別の名所があります。
元麻布ヒルズのちょっと向こう側右側に建つ西町インターナショナル。
元麻布にはインターナショナルスクールがいくつもあるのですが、その中でも戦後すぐに設立された歴史あるインターナショナルスクールですね。
このコンクリートの校舎は現代日本を代表する建築家エドワード鈴木の手になるものです。
このモダンな校舎の裏手に回ってみましょう。
すると20世紀初頭のアメリカの住宅デザインに類似した建物があります。
これは大正10年に明治の元勲松方正義の息子松方正熊の私邸として建てられたもので、西町インターナショナル創立者の松方種子の生家。種子の妹は後のアメリカ駐日大使であるE.ライシャワーの妻になる松方ハルです。
この建物は「松方ハウス」と呼ばれ西町インターナショナルの本部建物として永く使われていて、今は東京都の歴史的建造物にも選定されている由緒ある建物です。
余談ですが松方種子の叔父の一人は松方幸四郎。国立西洋美術館の元となった松方コレクションで有名な人物ですね。
西町インターナショナルからさらに進むと小さい坂道というか階段があります。
そこを下りると小さな児童公園があり、そこからは展望が開けているのでこんな景色が見られます。
元麻布は起伏が多いので下りたり上ったりが多いのですが、この辺りは一番低い地域になるのでしょうか。
ちょっと場所は言えないのですが、これが有名な「がま池」です。
池があると言われたりするものの場所を知る人があまり多くない一種伝説の池ですね。
竹やぶの向こうに水面が見えるのが分かるでしょうか。
周辺をマンションに囲まれているので簡単に見ることはできません。しかし逆にマンションに囲まれているためにここが開発され埋め立てられてしまう心配もなく、これからもずっとこのまま池が残っていくでしょうね。
江戸時代、麻布の街が大火に見舞われた時、この池のほとりの屋敷だけは類焼を免れたそうで、なんでもこの池の主の大蛙が屋敷に向けて口から水を吹き焼けるのを防いだのだそうです。
そんな故事もあって近くの十番稲荷神社にはその大蛙と子蛙の像が防火のお守りとして安置されています。
以前はパブリックな場所からちょっとだけ見ることができたがま池ですが、とうとうそれも見ることができなくなってしまいました。
向こうに言える竹林の足元にがま池があるのですが、その手前に個人邸とマンションが建築中です。これが完成するともはやパブリックな場所からがま池を見ることができません。
それにしても、麻布十番から暗闇坂や大黒坂を上ったその先にもまだまだ隠れた名所がいっぱい残っているようです。