Life=Zen=Art ワタリウム美術館で見る「鈴木大拙展」。現代アートの種を蒔いた禅(ZEN)

SNSでシェア:

鈴木大拙展 Life=Zen=Art

外苑前の「ワタリウム美術館」では「鈴木大拙展 Life=Zen=Art」という展覧会を開催しています。

そもそも鈴木大拙(すずき だいせつ)って誰? かもしれません。禅(ZEN)を東洋思想の代表格として西洋社会に紹介し、後世に大きな影響を与えた日本の哲学者で仏教研究者です。その功績はノーベル平和賞の候補にもなったほど。なお欧米圏では D.T.Suzuki とか Suzuki Daisetz と表記されることが多いです。

そんな鈴木大拙の展覧会を、なぜ現代アートが得意なワタリウム美術館で?

▲現代アートの源流に位置するアーティストたちに鈴木大拙とZENが与えた影響があまりに大きいのです。

そこで、鈴木大拙とは何者だったのか、どういう交流がありどういう作品群が生み出されたか。金沢の鈴木大拙館と西田幾多郎記念哲学館それとワタリウム美術館が所蔵する作品たち構成して展示される展覧会です。

会期は2022年7月12日(火)から10月30日(日)まで。ワタリウム美術館の2階から4階までを使って開催です。

PR

大拙とは何者だったのか?

展覧会は4階から始まって3階、2階と続く構成です。

▲まずはチケットを買ってエレベーターで4階へ。

展覧会のポスターなどに使われるキービジュアルは丸坊主に丸メガネの人物。鈴木大拙ですが、かなりカワイイですね。

私たちが知る鈴木大拙はおジイチャンになってからの姿ばかり。もしかしたら若い頃はこんな感じだったのかも

▲4階と3階の展示は基本的に撮影禁止です。

「○△□」な鈴木大拙の書や所持品などから鈴木大拙とは何者だったのか探るコーナー。さらに盟友の西田幾多郎の書、そこに山本良吉を加えた三者の鼎談などから鈴木大拙の周りの人々というコーナーなど。

各コーナーには鈴木大拙の言葉が書かれた紙片が置かれていて自由に取ることができます。ZENへの理解が深まる言葉が書かれているので貰っておきたいです。

また鈴木大拙の妻ベアトリスがマダム・ブラヴァツキーの神智学に造詣が深いということもこの展覧会で分かります。鈴木大拙と妻ベアトリス合わせると、いったいどれだけ後世のアートやサブカルチャーに影響を与えたのでしょう。

大拙から世界へ、大拙から未来へ

2階は鈴木大拙や(間接的に)ベアトリスからの影響を受けたアーティストたちの作品が並んでいます。。

2階の作品は撮影可能なものが多いです。

▲ヨーゼフ・ボイスの「阿呆の箱」。

ワタリウム美術館自慢のコレクションです

▲右の映像は坂本龍一。ナム・ジュン・パイクの追悼ライブ「farewell, njp」の記録映像です。

ライブといってもバイオリンを引きずってニューヨークの街を歩き回るライブです。

左のケースにはその時引きずられて壊れてしまったバイオリンが展示されています。

▲これはナム・ジュン・パイクの「ニュー・キャンドル」。

本物の蝋燭が使われています。

PR

ジョン・ケージの「マルセルについて何も言いたくない」

チャンス・オペレーションなどで知られる現代音楽・実験音楽のジョン・ケージは、実際に鈴木大拙の下で禅を学んでいた本当の弟子です。

▲そのジョン・ケージの立体作品「マルセルについて何も言いたくない」。

ガラス板に描かれた絵。要するにマルセル・デュシャンの「大ガラス」の引用です。

鈴木大拙+デュシャン=ジョン・ケージ ということですね。

▲これは間近でじっくり観て解きほぐしたい作品です。

ジョン・ケージの水彩画と龍安寺

ジョン・ケージの水彩画やドローイングも展示されています。

撮影NGなので写真はありませんが、作品10枚で一組の水彩画「十牛図」。

そこには水彩画とともに、ZEN的な言葉、例えば ”根源的に見るため、そして聞くために、私たちが変わる必要がある” といった詩文が記載されています。

▲これはジョン・ケージのドローイングの「龍安寺(ryoanji)」。

音楽作品の「龍安寺」を視覚的に表現しようとした作品でしょうか。

でも「龍安寺」というモチーフそのものが鈴木大拙からの影響です。

写真ではジョン・ケージが多くなってしまいましたが、展覧会の白眉は4階の「鈴木大拙とは何者か?」のコーナーだと思います。30分もあれば全部観れるでしょうと思っていたら、結局なんだかんだで1時間過ごしてしまいました。

PR

金沢の鈴木大拙館

ワタリウム美術館での「鈴木大拙展」。小規模ですが鈴木大拙とその影響について再確認する展覧会でした。欲を言えば60年代から70年代にかけてのサブカルチャーに与えた影響をもっとフィーチャーしていれば良かったのですが、現代アートという領域に絞ればこんなものかもしれませんね。

▲鈴木大拙についてもっと知りたい!

Amazonで鈴木大拙の書籍を取り寄せるのもいいですし、金沢のその名もずばりな「鈴木大拙館」を訪問してみるのもどうでしょ。

▲出身地である金沢に、同じ金沢出身の建築家 谷口吉生による設計で建つ「鈴木大拙館」。

大拙を「知り」、その心や思想を「学び」、さらに自ら「考える」。それぞれの空間が用意されている博物館です。

上の写真は水が張られた「水鏡の庭」の脇に建つ「思索空間」。

▲「思索空間」に座り「水鏡の庭」を見ながら思索に耽ることができます。

金沢でも21世紀美術館と並ぶ人気のスポットです。

また同じ石川県の西田幾多郎記念哲学館とは相互優待制度があって、毎年5月19日から11月11日の間はどちらかの入館券半券でもう一方が入館無料になります。

鈴木大拙と西田幾多郎は旧制高校時代からの友人。また鈴木大拙館の設計は谷口吉生、西田幾多郎記念哲学館の設計は安藤忠雄。機会があったらぜひ両館を訪問してみてください。

PR

ワタリウム美術館の場所とアクセス

いろんな意味でいつものワタリウム美術館らしい展覧会です。

▲鈴木大拙のこうしたカードも貰えますし、展覧会の後は周辺のカフェでゆっくり内容を振り返ってみたいですね。


そんなワタリウム美術館は外苑前駅が最寄りの外苑西通り(キラー通り)沿いです。

▲外苑前駅を降りて青山通りを表参道方面へ歩き、「南青山三丁目」の交差点を右に曲がりキラー通りを千駄ヶ谷方面へ。「原宿幼稚園前」交差点の先にこのようなワタリウム美術館が見えてきます。外苑前の駅から徒歩5分くらいです。

表参道の駅からだとA2出口から出てApple表参道の角を右に曲がってまいせん通りへ。キラー通りの方へ歩いて「原宿幼稚園前」の交差点を左です。駅から徒歩で10分くらいです。

鈴木大拙展 Life=Zen=Art 基本情報

名称 鈴木大拙展 Life=Zen=Art
会場 ワタリウム美術館
会期 2022年7月12日(火) 〜 10月30日(日)
時間 11:00 − 19:00
料金 大人 1,500円/大人ペア 2,600円、小中 500円、それ以外 1,300円
会期中何度でも入場できるパスポート制
予約 予約不要

ワタリウム美術館 基本情報

名称 ワタリウム美術館
住所 渋谷区神宮前 3-7-6
最寄駅 外苑前駅、表参道駅
休館日 月曜日 (祝日は開館)
時間 11:00 − 19:30

鈴木大拙館 基本情報

名称 鈴木大拙館
住所 石川県金沢市本多町 3-4-20
最寄 北鉄バス/金沢周遊バス 「本多町」バス停
休館日 月曜日 (祝日は開館し翌日休館)
時間 9:30 − 17:00
入館料 一般 310円、65歳以上 210円、高校生以下 無料

西田幾多郎記念哲学館 基本情報

名称 西田幾多郎記念哲学館
住所 石川県かほく市内日角井1
最寄駅 車利用
休館日 月曜日 (祝日は開館し翌日休館)
時間 9:00 − 17:00
入館料 一般 300円、65歳以上 200円、高校生以下 無料

PR

記事の評価
SNSでシェア:
PR