開幕した「恵比寿映像祭2024 月へ行く30の方法」。この会場でこの作品を見ておけばOK。パフォーマンスの良い鑑賞方法を紹介します

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2009年から毎年2月に開催されている恵比寿映像祭。16回目となる「恵比寿映像祭2024」が2024年2月2日(金)か開幕しました。

恵比寿映像祭は各種展示と映像の上映の他にワークショップやライブイベント、トークセッションから構成されていますが、作品展示の主だったものはほぼ全てを見てきたのでレポートしたいと思います。

15日間の恵比寿映像祭の期間中に足を運んでみようという方の参考になるよう、各展示会場の見どころなどをまとめてみました。

恵比寿映像祭2024

2024年の総合テーマは「月へ行く30の方法」。

参加作家でもある土屋信子の2018年の展覧会タイトルからの引用です。

でもたぶん今回の隠れテーマは映画「Perfect Days」で再び多くの人に見直されているドイツの映画監督ヴィム・ヴェンダースです。

会場は恵比寿ガーデンプレイスの東京都写真美術館(写美)がメイン会場的位置付け。多くの来訪者の目に触れるセンター広場でも展示が行われますし、恵比寿〜代官山〜中目黒にかけての様々なギャラリー、アートスペースも連携会場として映像祭に参加しています。

写美など多くの展覧会場は入場無料ですが、映画上映、トークセッションなど有料のイベントもあります。また上映やワークショップなどは開催日が限られているものもありますので、詳しくは恵比寿映像祭の公式サイトで確認してください。

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東京都写真美術館

メイン会場的な位置付けとなる東京都写真美術館では3F、2F、B1Fの展示室を使ってイベントが開催されています。

入場は無料ですがまず美術館の受付で整理券とパンフレット、それと入場者の目印となる関川航平のシールをもらいます。整理券は各展示室の入口で見せる必要があるので失くさないようにしましょう。

▲また1Fのホールでは上映プログラムが組まれていて会期中は毎日何らかのフィルムが上映されています。

そして2月20日から3月20日からはヴィム・ヴェンダースの「夢の涯てまでも(Until the End of The World)」のディレクターズ・カット版の上映が続きます。通常公開版に100分ほど追加された5時間近い作品です。

写真美術館 2F

会場は2F〜3F〜B1Fの順番で巡るよう推奨されています。

ということでまずは2Fへ。この2Fの展示室がいわばメイン会場になるようです。

映像、写真など写真美術館が持つコレクションと新しいアーティストたちの作品が展示されています。

中谷芙二子《風にのって一本の線を引こう》1973年

▲目玉の一つは日本のビデオアート、メディアアートの先駆者で霧の彫刻でも知られる中谷芙二子のビデオ作品。

2本上映されています。

ダラ・バーンバウム《テクノロジー/トランスフォーメーション:ワンダーウーマン》1978-79年

▲メディア・アートの先駆者で伝説的存在のダラ・バーンバウムの《テクノロジー/トランスフォーメーション:ワンダーウーマン》。

プラダ青山でダラ・バーンバウムの個展が開催されていたのも記憶に新しいですね。

▲展示室内の様子です。映像と写真と空間によるインスタレーションのようでもあり、例年に比べるとかなりチャレンジングな感じです。

手前の床に置かれた作品はフェリックス・ゴンザレス=トレスの《Untiled》。トレスはバリバリのコンセプチュアルアーティストですが写真を使った作品ということで写美のコレクションに加わったようです。

知っている人向けの情報ですが、これはオリジナルと同様のスタイルで展示されています。

これ以外にもマルセル・ブロータースやデイヴィッド・ハモンズなどの作品が展示されていました。

米田知子《安部公房の眼鏡 − 『箱男』の原稿を見る》2013年

▲米田知子など日本の現役アーティストたちの作品も展示されています

▲2F展示室が広々としているのは、中央のスペースを使ってパフォーマンスやトークイベント、ワークショップなどを開催するからだそうです。

初日は関川航平のパフォーマンスが行われていました。関川航平がデザインした入場者用のシールは毎日館内各所に貼られていくそうです。初日はエレベーターの中にしか貼られていませんでしたが、今後増えていくシールを探すのも楽しそうです。

写真美術館3F コミッション・プロジェクト

写美の3F展示室ではこの映像祭のために制作された映像作品が発表されています。

▲恵比寿映像祭2023から始まったコミッション・プロジェクトの第1回特別賞受賞者、荒木悠とキム・インスクによる展示が行われていました。

ただ2人の映像作品だけでは保たないのか、アメリカの原風景を巡るみたいな写真が挿入されています。

▲例えばロバート・フランクの写真。

まさにアメリカの原風景。

そして期せずして中目黒の会場ではヴィム・ヴェンダースがアメリカの原風景を撮った作品が展示されているのです(後で紹介します)。

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写真美術館B1F

B1Fでは2Fの作品と対になるような試みがされているようです。

▲青木陵子+伊藤存による《9歳までの境地》はサウンドとビデオのインスタレーション。

なかなか興味深い作品です。

▲個人的に最も良かったのがロジャー・マクドナルドの展示。

”Museum of Cosmic Consciousness” つまり「宇宙意識美術館」の出張展示です。

長野の山中にフェンバーガーハウスという個人美術館があり、そこで開催された《ドーム神殿:アヴィヤクタ・チャイティヤ(Dome Temple: Avyakta Chaitya)》展の巡回です。

実際にフェンバーガーハウス・ドームに展示されていたものをドーム以外全部持ってきたようです

▲神智学、魔術師、マダム・ブラヴァツキー、エクトプラズム、ジークムント・フロイト、ウィリアム・ブレイクといったワードが引っかかる人なら絶対見逃せない展示。

長野の望月町まで行かなくても恵比寿で見られます。

恵比寿ガーデンプレイス センター広場

ガーデンプレイスのセンター広場にも作品が展示されています。

今年の作品は日中でもちゃんと見られます。

▲渋谷の公園通り、具体的に東武ホテルの地下にある「シビック・クリエイティブ・ベース東京 CCBT」と連携した展示で、ジェネラティブ・アート作品が上映されています。

ジェナラティブ・アート(Generative Art)、つまり 「生成アート」ですね。

たまたま能登の軍艦島をイメージした映像が上映されていました。

縁試し

2024年から始まった新企画が「縁試し」。

早い話がおみくじとレコメンデーションです。

▲”きょうのあなたにピッタリな作品は?” ということで、おみくじを引くと運勢とおすすめ作品が書かれています。

写美の次はどこの会場へ行こうか迷ったり、展示室に入る前におすすめ作品を試してみたり、いろいろ楽しめそうです。

「月へ行く30の方法」をめぐるシールラリー

恵比寿映像祭の各会場で配布しているシールを集めるとオリジナルトーロバッグがもらえる《「月へ行く30の方法」をめぐるシールラリー》も実施されています。

シールは会場ごとに異なるのでそれだけでも記念になりますし、トートバッグは映像祭のガイドブックや作品リスト、フライヤーなどを入れるのにぴったりなサイズなので映像祭を巡る際にも便利に使えます。

トートバッグをもらうにはシールを3枚集めるだけ。3ヶ所も回るのは大変そうに見えますが、至近距離にある写真美術館、MA2ギャラリー、NADiffでシールを貰えばNADiffですぐにトートバッグと引き換えてもらえます。

なお引き換え場所は写真美術館とNADiffの2か所だけです。

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地域連携プログラム

恵比寿映像祭は写真美術館をメイン会場として恵比寿周辺のギャラリーなどでも展開されています。

N&A Art SITE

中目黒のギャラリー「N&A Art SITE」ではヴィム・ヴェンダースの写真展《ヴィム・ヴェンダースの透明なまなざ》を開催しています

▲ヴェンダースが「パリ、テキサス」のロケ時にアメリカ中西部で撮影した風景写真「Written in the west」のシリーズ、それと「夢の涯てまでも」のために制作されたデジタル映像を印刷したシリーズが展示されています。

ヴィム・ヴェンダースも妻のドナータ・ヴェンダースも写真家としての顔を持っています。そのヴェンダースがアメリカへの憧憬を隠しきれないまま、アメリカの原風景とも言える写真を撮っていたのです。

また「夢の涯てまでも」は一部が日本で撮影、制作されているのですが、その際に来日したヴェンダースを捉えたドキュメンタリー「ヴィム・ヴェンダース イン 東京」という約1時間のドキュメンタリーも上映されています。

これは2月20日から写美で始まる「夢の涯てまでも ディレクターズ・カット」との連動企画ですからあらかじめこのドキュメンタリーを見てから写美での上映の臨むのが良いかもしれません。ただ合わせると6時間になるんですよねぇ。

MA2 Gallery

恵比寿ガーデンプレイスにもほど近いMA2galleryでは川内倫子の個展《Tomorrow is another day》を開催しています

▲印刷したものにさらに彩色を加えた作品、そして未発表の映像作品など。

静かな空間で静かに味わいたい展覧会でした。

▲恵比寿映像祭には参加していませんが写真美術館からも近いブックストア兼ギャラリー「POST」では同じく川内倫子の展覧会《いまここ》を開催中です。

詩人の谷口俊太郎とコラボした写真絵本「いまここ」の発売記念展で会期は2024年3月3日(日)まで。恵比寿映像祭やMA2ギャラリーでの川内倫子と併せてどうぞ。

NADiff a/p/a/r/t

恵比寿のNADiff a/p/a/r/t です原田裕規『とるにたらない美術——ラッセン、心霊写真、レンダリング・ポルノ』刊行記念ブックフェアが恵比寿映像祭2024の連動プログラムです。

またシールラリーの引換所にもなっています

地下のNADiffギャラリーでは大山エンリコイサムの個展《Book Covers, Bookends》が開催されていますが、この展覧会は恵比寿映像祭とは連動していないようです。

ブックカバー、ブックエンドなどを二次元、三次元のQTS(クイックターン・ストラクチャー)を施して表現した作品が展示されています。

スクールデレック芸術社会学研究所

NADiffのビルの2階がスクールデレック芸術社会学研究所。

ここでも大山エンリコイサムの《Torus》展が開催されています。ただスクールデレックは恵比寿映像祭には参加していません。

またNADiffと違い、開館日は金土日曜の14時から18時までなので訪問する曜日や時間には注意が必要です。なお水木曜日は事前予約すれば入館できます。

▲ほとんど知られていないギャラリーですし、曜日によっては予約が必要。つまりたまたま通りがかってということがあり得なくて、見ようという意思のある鑑賞しか来ない閉鎖空間をイメージしての作品だそうです。

2次元、3次元そして今までの大山エンリコイサムになかった作品を見ることができます。

アートフロントギャリー

代官山の現代美術ギャラリー、アートフロントギャラリー▲ここでは釘町彰の《From the Land of Men》が開催されています。

大きな絵画が展示されているなぁと思ったらそこに映像が投影されるというインスタレーション。

いつもは代官山の街に開けた展示空間ですが、今は内部を真っ暗にしてホワイトスクリーンへの映像投影、絵画への映像投影を繰り返す不思議な空間になっています。

会期は2月18日(日)までと短い恵比寿映像祭ですが、今の映像文化を知る良い機会です。写美を中心に恵比寿や代官山と徒歩圏内に多くの会場があるので休日にひと回りしてみてはどうでしょうか。

恵比寿映像祭2024 基本情報

イベント名 恵比寿映像祭2024 「月へ行く30の方法」
期間 2023年2月2日(金) 〜 2月18日(日)  15日間、月曜休み
コミッションプロジェクト(写美3F)のみ3月24日(日)まで
会場 東京都写真美術館、恵比寿ガーデンプレイスセンター広場
近隣のギャラリー等
時間 10:00 〜 20:00 (最終日は18:00まで)
各ギャラリーにより詳細は異なる
料金 無料
上映など一部プログラム、一部ギャラリーは有料

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