個性的な渋谷のトイレたち「THE TOKYO TOILET」。ヴェンダースと役所広司の映画「Perfect Days」の舞台を巡ってみよう。

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THE TOKYO TOILET

渋谷区内の17ヵ所の公共トイレを建築家やデザイナーなど16人のクリエイターが手掛けるという、日本財団のTHE TOKYO TOILETプロジェクトについてレポートします。

中が透けて見えるトイレとかTVなどメディアでも話題になっていますね。東京オリンピックで日本にやってくる海外のお客さんに、日本風なおもてなしをというコンセプトでもあるようです。

暗い、汚い、使いづらいという公共トイレのイメージを払拭し、トイレをアート作品に昇華させたい狙いもあり、渋谷区やTOTOそれに大和ハウスなども協力しているプロジェクトです。

映画PERFECT DAYS

そのTHE TOKYO TOILETのサイドプロジェクトとして、ドイツの世界的映画監督ヴィム・ヴェンダースがTHE TOKYO TOILETを舞台した作品「Perfect Days」を撮り、主演の役所広司が第76回カンヌ国際映画祭で主演男優賞を受賞しています。

ヴィム・ヴェンダースが敬愛してやまない小津安二郎の最後の作品「秋刀魚の味」から60年後に撮影、主役の名前はどちらも ”平山”。ヴェンダースの日本への愛情やこだわりの強さがひしひしと感じられる作品です。

2023年12月22日(金)からTOHOシネマズ系列などで公開されています。まさに待望の日本公開です。内容はヴィム・ヴェンダース晩年の、いや全キャリアを通じても最高傑作と呼ぶにふさわしいものです。

THE TOKYO TOILETを利用したら映画の「Perfect Days」も観てみてください。

またヴィム・ヴェンダースの妻で写真家のドナータ・ヴェンダースが作品展が中目黒で開催されています。ドナータが ”パーフェクト・デイズを観た後は是非私の展覧会も” と言っています。

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神宮通公園 – 安藤忠雄

TOKYO TOILET PROECT、まずは世界的な建築家、安藤忠雄の手になる神宮通公園ののトイレです。

明治通り沿い、ちょうど原宿と渋谷の中間辺りですし、すぐ隣には宮下パーク(MIYASHITA PARK)もあって、一番人通りが多い場所なのですでに目にしたり利用したことがある方も多いでしょう。

▲公園の緑の中、原宿寄りに建つこのトイレは名付けて「あまやどり」。

映画「Perfect Days」の予告編ムービーにも登場しています。

安全で安心な空間を目指したもので中を通り抜けることもできるようになっています。

▲安藤忠雄といえばコンクリートの打ちっ放しが代名詞ですが、このトイレはもっとシンプルなもの。

円形で大きな庇(ひさし)が目印です。

あまり安藤忠雄らしくないと言えばないので、安藤忠雄設計とは気付かないかもしれません。

▲でも中は安藤忠雄らしくこのような劇的な空間。しかも近未来的な印象を受けます。

たて格子の部分は隙間が空いていて風を光を通します。なので公衆トイレによくある閉鎖的で暗い印象がなく、まさに都市に開かれた空間になっています

場所
住所
利用時間
神宮通公園
渋谷区神宮前 6-22-8
24時間

恵比寿東公園 – 槇文彦

次は恵比寿駅周辺にまとまっている4カ所のトイレを紹介します。

狭いエリアにぎゅっと集まっているので1時間もかからず回れます。

まずは恵比寿東公園、通称タコ公園です。ここは建築家の槇文彦設計のトイレです。

▲槇文彦と言えば代官山のヒルサイドテラスや千駄ヶ谷の東京体育館など様々な建築を手掛けている大御所の建築家です。

NYのワールドトレードセンター跡地に建設された4WTCビルも槇文彦設計です。建築家のノーベル賞と言われるプリツカー賞を1993年に受賞しています。

▲外観をみてみます。

屋根の形が特徴的です。このラインは東京体育館の屋根の形にちょっと似ていますね。

▲方向を変えて恵比寿駅方面を向いて撮影した外観です。

▲これはその逆から明治通り方面を向いて撮影した外観です。

▲女子トイレ、男子トイレ、だれでもトイレがどのように配置されているか図面を見るとわかりやすいです。

▲これは3つのトイレの中央の屋根部分です。

屋根は全部を覆っておらず中央は抜けていて空が見えます。

▲その中央には木が植えられています。

▲女子トイレ入り口側にはベンチがあって座ることができます。

▲こちらは男子トイレの入り口です。

▲そしえこれは だれでもトイレの入り口です。

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▲こちらは男子トイレの中の様子。男子トイレの中にもオムツ交換台が設置されています。

ちゃんと時代に合わせていますね。なぜか使用禁止でしたが。

▲こちらは女子トイレの洗面台です。

▲個室は清潔感のある白いタイルです。

見ていただいてお分かりの通り、四角いキューブが配置され、そのキューブをつなぐ場所が中庭であり回廊であるという作りはヒルサイドテラスのそのものです。

▲ここはさながら小さなヒルサイドテラスですね。屋根は東京体育館ですが。

場所
住所
利用時間
恵比寿東公園 (通称タコ公園)
渋谷区恵比寿 1-2-16
24時間
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東三丁目 – 田村奈穂

さて、続いて東三丁目のトイレです。槇文彦のタコ公園からは徒歩5分程度です。

▲ここはプロダクトデザイナーの田村奈穂がデザインを担当しました。

▲こちらのトイレは山手線の線路と道路の間のとても狭い空間です。

写真の後ろに見えるのが線路です。

真っ赤でシャープな作りがとても鮮烈で斬新なデザインのトイレです。

▲知らない人はまさか公衆トイレとは思わないのではないでしょうか。

▲狭小空間の立地を生かしたデザインです。

手前からだれでもトイレ、男子トイレ、女子トイレです。

こんな感じでかなり狭小な空間をうまく利用してデザインされています。

▲でも実は女子トイレには個室が2つ向き合って設置されてあります。

▲ただ、独立した洗面はなく手洗いは個室の中にあります。

場所
住所
利用時間
渋谷区東3丁目、山手線路沿い
渋谷区東 3-27-1
24時間

恵比寿公園 – 片山正通

最後は恵比寿公園。東三丁目から徒歩5分ほどで到着します。

ここは南青山のLEXUSなども手掛けるインテリアデザイナーの片山正通デザインのトイレです。

▲今まで見た二箇所とは打って変わって重厚なコンクリートの壁がそびえるトイレです。

▲公園の入り口側から男子トイレ、だれでもトイレ、女子トイレの順に並んでいます。

▲コンクリート打放しではありますが、杉板型枠のコンクリートなので木目のマチエールが温かみを感じるデザインになっています。

▲かなり凹凸がはっきり出ています。

▲男子トイレの中です。間接照明の演出など、屋外のトイレとは思えない雰囲気です。

▲こちらは女子トイレの入り口です。

▲入り口からは中が見えないように設計されています。

▲こちらが女子トイレの中です。

洗面台といい、鏡といい、どこか商業施設やホテルのような高級感があります。

場所
住所
利用時間
恵比寿公園
渋谷区恵比寿西 1-19-1
24時間
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恵比寿駅西口 – 佐藤可士和

恵比寿での最後というか最初というか、恵比寿駅の西口、ロータリーや交番のある側はクリエイティブディレクターの佐藤可士和(さとう かしわ)によるトイレです。

ただでさえ人通りの多い恵比寿駅の、それも交番脇の公共トイレということで、これまで紹介した中でこのトイレを見たことがある人が一番多いのではないでしょうか。

▲地上から浮いているようにも見える不思議な建物。それが恵比寿駅西口公衆トイレです。

▲横から見るとトイレ用のピクトグラムが見えるのでトイレだということがわかりますが、知らないとトイレだと気が付かないかもしれません。

▲どっちから見ても白くて四角いスリットが入った物体。

外側のスリットの内側にトイレの建物自体が隠れています。

▲夜になると酔客も多い恵比寿なので、こうして目隠しされていると女性でもなんとなく安心して利用できますね。

▲男女兼用の個室が3つ、多目的トイレが2つという構成なのですが、よく見ないとどれが目的のトイレかよく分かりません。ここら辺はやっぱりセブンイレブンのコーヒーマシンを手がけた佐藤可士和だけあります。もう分かってて確信犯的にやってますよね。

▲いちおうサインはTHE TOKYO TOILET共通のものです。

▲こちらがトイレの配置図です▼

場所
住所
利用時間
恵比寿駅西口
渋谷区恵比寿南 1-5-8
24時間

鍋島松濤公園 – 隈研吾

渋谷の松濤美術館に近い鍋島松濤公園には新国立競技場も手掛けた今や日本を代表する建築家の隈研吾のトイレが設置されています。

日本でも有数の高級住宅街である松濤の公共トイレ、どのようになっているのでしょうか。

新国立競技場根津美術館など過去の隈研吾の建築と同様、木材を多用した”和”を感じさせるデザインになっています。

言われなくとも隈研吾でしょと分かるデザインです。

左手のブロックは小便器だけの、要するに男性用トイレ。

真ん中は多目的トイレでその後ろ階段を登ったところには子ども用便器も備えた親子トイレ。

右側のブロックも多目的トイレです。

▲多目的トイレは地面と同じレベルに出入り口があるのでバリアフリーになっています。

▲特に ”男性用” とされているワケではありませんが、でも小便器しかないので実質的に男性専用です。

外壁はコンクリート、ドアは無愛想な鉄製。でもその外壁に切り出したばかりの天然木を貼り付けているようです。

男性用トイレは左右に1室づつ用意されています。

これは男性用トイレの左側側のもの。

サインの人物が杖を持っていることが分かりますか? ということで高齢者向けのトイレです。

実際には小便器に取っ手が付いています

▲実は女性専用トイレはなくて、多目的トイレが女性用となっています。

▲多目的トイレのサインです。

上から、車いす、オストメイト、高齢者、フィッテイングボード、妊婦、ベビーベッド、分かりません、ベビーチェアです。でもちょっと分かりづらいですね。

男性は小便器のある部屋に入るか他の目的ならどの部屋に入ってもいいのですが、女性にはちょっと抵抗感があるトイレです。

子どもに用を足させるだけならいいのですが、公園のパブリックな空間とドア一枚で隔たっているだけというのはいくら松濤という土地でも気がひけます。

場所
住所
利用時間
恵比寿駅西口
渋谷区恵比寿南 1-5-8
24時間
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広尾東公園 – 後智仁

広尾のガーデンヒルズも近い広尾東公園のトイレはクリエイターはクリエイティブディレクター・アートディレクターの後智仁(うしろ ともひと)のデザインです。
(映画Perfet Daysには登場しません)

▲以前からあった公衆トイレを取り壊し、すっきりモダンなトイレに建て変わりました。

ドアが2つ見えるように、個室2つだけのトイレです。

男女分けはされておらず、どちらもジェンダーレスの多目的トイレです。ただ手前の個室はオストメイト仕様、奥がベビーベッド仕様というように少しだけ違いがあります

広尾東公園のトイレの最大のポイントはその照明。

地球の全人口とほぼ同じ、79億通りにパターンが変わる照明です。

昼間はこのように緑の照明が少しづつパターンを変えながら点灯しています。

1秒毎にパターンが変わるとしても全パターンを表現するには9万年以上かかります。もう一度同じパターンを見ようとしても実質的に不可能です。

▲昼間は緑色ですが夜になると白色に色が変わります。

地味な場所にあるトイレですがTOILET PROJECTの中で一番派手なトイレかもしれません

場所
住所
利用時間
広尾東公園
渋谷区広尾 4-2-27
24時間

神宮前公衆トイレ – NIGO®

原宿にも近い明治通り沿いにひっそりと建っている「神宮前公衆トイレ」。

ここは日本のストリートカルチャーの体現者としてファッションブランドを展開したり多方面で活躍するデザイナーNIGO®がデザインしたもの。

▲都会の真ん中にひっそり佇む一軒家をイメージしたというトイレです。

色使いがポップですが言われなくともすぐにトイレと分かるデザインです。

角地に建っていて、これは原宿側から見たところ。

土蔵のようにも見えたりします。

▲他のTOILET PROJECT同様、内部はスタイリッシュなもの

特徴的なのはシーリングファンが設置されているところで、熱帯化が進む東京を先取りしているのでしょう

場所
住所
利用時間
明治通り神宮前
渋谷区神宮前 1-3-14
24時間

裏参道公衆トイレ – マーク・ニューソン

北参道駅からも近い裏参道の首都高の高架下に建っているのは「裏参道公衆トイレ」。

オーストラリア出身、日本にも居住しIDEEのデザインにも携わったインダストリアルデザイナーのマーク・ニューソンによるデザインです。

▲四角コンクリートの本体の上に、日本の神社仏閣で多用される銅のピラミッド型の屋根が乗っています。

なんか藤森照信の土筆型の建築も想起しますね。

サインなどはTHE TOKYO TOILETプロジェクト共通のもの。

開放部の正面が多目的トイレ、右が女性用、左が男性用というレイアウトです。

▲銅葺きの屋根なんですけど、完成してまだ半年なのにいい感じに緑青が吹いています。

これからどんどん味のある建物に姿を変えていくのではないでしょうか。楽しみです。

▲頭上は首都高、すぐ近くを山手線が走るロケーションです

場所
住所
利用時間
裏参道 首都高4号新宿線高架下
渋谷区千駄ヶ谷 4-28-1
24時間
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ここまで紹介したトイレの他に渋谷区富ヶ谷に2カ所、坂茂設計の透明なトイレが設置されました。こちらの方が実は「透明なトイレ」ということで話題にはなっているのですが、このブログのメインエリアである「麻布・青山」からはちょっと離れすぎているので残念ながら見に行っておりません。

各々場所についてはこちらに詳細が出ております。

恵比寿や渋谷に来たら是非デザイントイレ散歩をしてみてください。

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