建物公開2023 邸宅の記憶
白金台の東京都庭園美術館で恒例の「建物公開」。
庭園美術館の開館40周年にもあたる2023年は「邸宅の記憶」として、この邸宅に住んだ朝香宮家に焦点を当て、当時の家具や調度品を使って邸宅空間を再現しようというコンセプトの展覧会です。
▲会期は2023年4月1日から6月4日まで。本当は桜が満開の時期に開幕するつもりだったと思うのですが、2023年は開花が例年より1週間ほど早かったせいで葉桜の中での開幕になってしまいました。
とはいえ、毎年多くのファンが訪れる建物公開ですから開幕初日からかなりの混みようでした。
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会場の東京都庭園美術館
▲旧朝香宮邸として1933年、アールデコが全盛期を迎えていた時代に建設された貴重な建物で ”現存する世界一美しいアールデコ建築” ことも言われ建物自体が芸術品とも言えます。
朝香宮家が廃された戦後は外務大臣公邸、迎賓館などとして使われきた、日本の戦前戦後の歴史が刻まれた建物です。
旧朝香宮邸を改修した本館、現代美術作家の杉本博司を迎えて建設された新館が美術館としての主な展示会場。さらに 西洋庭園と和風庭園を備えているところが 「庭園美術館」たるところです。
▲開幕初日の朝、玄関から見た前庭です。
まだ桜が残り新緑の色と併せ、春らしい雰囲気を醸し出しています。
▲正面玄関からは第一応接室がガラス窓を通して覗けるようになっていて、そこには毎回その展覧会を凝縮したような展示が行われています。今回は中が見えやすく展示されています。
入館前にまず鑑賞し、帰りにもう一度じっくり観ると展示の意図がよりわかりやすいと思います。意外とこの展示に気づかず出入りしているお客さんが多いのでお見逃しなく。
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邸宅の記憶展
この展覧会は大きく二部構成。
本館を使い展開されているのが邸宅空間の再現。2023年は久しぶりにウィンターガーデンの特別公開も行われています。普段は入ることも見ることもできない空間なので見逃せません。
新館では朝香宮家の人々ゆかりの品々が展示されています。
撮影と注意事項
通常ですと、東京都庭園美術館は原則として本館内の撮影は禁止です。
しかし今回の「邸宅の記憶」展に限り、写真撮影が可能です。ただし動画撮影は禁止です。
撮影について
・本展ではすべて撮影可能です。撮影禁止の場所、作品はありません。
・撮影にそれ以外の注意事項は
フラッシュ、レフ板、三脚、自撮り棒、望遠レンズは使用しない
動画の撮影は禁止
作品や建物に危険が及ぶ行為は禁止
です。常識的なことばかりですね。
注意事項
・撮影以外の鑑賞自体に対する注意事項は
作品、建築、家具、スクリーン等には手を触れない
混雑時の不意の接触にも注意する
要するに荷物はロッカーに入れましょう
傘・日傘の館内への持ち込みはできません
飲料、食料品は展示室内へ持ち込みできません
です。これも常識的なことばかりですね。
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邸宅の記憶 − 空間
この展覧会のために再現された邸宅空間を見てみましょう。
▲玄関脇からガラス越しに見た「第一応接室」を横から見たところ。
”応接室” という名前ですが、邸宅を訪れたゲストの随行者などが主人を待つ部屋として使用された部屋です。なので応接室だけど玄関の外に設置されています。
でも床材や壁紙、家具などもトップクラスのものが使われています。
後には庭園美術館でも有名な香水塔が見えますね。
この部屋も2方向から内部を見学することができます(書斎内へは立ち入れません)。
▲若宮の寝室は2階にあって玄関からも見える桜を上から見下ろす形になります。
▲当時は書庫として利用されていた部屋。
書庫なので普段は分厚いカーテンが下ろされていますが、今回の展覧会中はカーテンが開けられ外の桜が見えるようにされていました。
▲市松模様の床がカッコいい2階ベランダ。
当時は殿下、妃殿下の居間からのみ出入りできる、いわば専用のベランダだったそうです。
建築と調度品の鑑賞に疲れたら、ここで椅子に座って芝庭や日本庭園を眺めながら休むのもいいですね。
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邸宅の記憶 − 調度品
朝香宮邸はルネ・ラリックやアンリ・ラパンなどアールデコ期のフランスの作家たちからの協力を得た建築物なので、至るところの調度品や意匠など感心するばかりです。
いつもの展覧会では控えめに置かれていたり収蔵されている品々も「邸宅の記憶」展では主役としてあちこちに展示されています。
▲ルネ・ラリック「燭台《トウキョウ》」です。見えづらい上にさりげなく置かれているのでお見逃しなく。
この燭台が置かれているサイドボードも同時代の名品です。
大食堂の壁画レリーフ(写真で後に写っています)のレプリカです。
実物の壁画レリーフは石膏ですが、フランスで製作されたオリジナルはコンクリート製。そのためこのレプリカはオリジナルに忠実にコンクリートで作ったものだそうです。
レプリカなので実際に触れて感触を確かめることができます。
▲バルコニーのタイルの復元品。これも実際に触ることができます。
バルコニーに使われているタイルは入手不可能なものもあり、こうした復元品を使って修復するのだそうです。
▲庭園美術館を何度も訪れている人にはおなじみの「ペリカン」。どう見てもペンギンですが宮内庁の目録には「ペリカン」と記載されているそうです。
今回は他に別ポーズの「ペリカン」も展示されています。
▲こちらは新館で展示されている朝香宮家の人々ゆかりの品々の展示。
戦前の日本の皇族、上流階級の風習などが伺い知れる展示です。
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ウィンターガーデン
ウィンターガーデンとは要するに温室です。
今回は、現地で見学を申し込み、注意事項を了承した人だけが室内を見学することができます。
▲ウィンターガーデンの片隅に置かれた椅子とテーブルは朝香宮自身が見繕って購入したバウハウスのデザイナー、マルセル・ブロイヤーによるものです。
朝香宮夫妻がその美意識でこの温室どのように利用していたのか気になります。
ほとんど人が入ることがない場所なのでべランダと違って新品のような美しさが残っています。
ウィンターガーデンの見学申し込みは本館西側の階段のところ。見学にあたっての注意事項は
・定員は9名
・混雑時の見学は10分以内
・階段の手すり壁から身を乗り出さない
・火災など緊急時は係員の指示に必ず従う
これを了承したら階段を上がってウィンターガーデンへ向かいます。
いつもの建物公開ですが40周年ということで、いつもとはまた違った趣向が施された展覧会になっています。ウィンターガーデンの特別公開もそうですし、やはり2023年も足を運ぶべき庭園美術館の建物公開です。4月1日から6月4日までの実質2ヶ月という短い期間なのでお早めに。
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茶室「光華」と日本庭園
「邸宅の記憶」展の後はせっかくですから庭園美術館の茶室や日本庭園も見学しておきましょう。どちらも展覧会のチケットがあれば無料です。
ただこの時期の公開は室内には上がれません。
でも外の新緑が映えて都心の庭園とは思えない光景です。
▲日本庭園も新緑に季節になっています。もう少し経てば池の水の透明度も増してもっと美しい庭園風景になるはずです。
プロジェクションマッピング
開館40周年記念のイベントのひとつとして「FUTURE ART TOKYO 2023」というプロジェクションマッピングが開催されます。
開催日は2023年4月8日(土)と9日(日)。両日とも20時まで夜間開館を実施した上でのプロジェクションマッピングで、庭園入場料だけで見学することができます。詳細については庭園美術館のホームページで確認ください。
▲中庭から庭園美術館本館の建物へ映像をプロジェクションマッピング。
▲庭園美術館の内装の意匠、かつて開催されたであろう舞踏会の再現など庭園美術館ならではの映像が映し出され、4月8日の初回では小雨の中、多くの観客が訪れ楽しんでいました。
2023年はこのイベント以外にも40周年記念イベントがたくさんありそうなので、庭園美術館は要チェックです。
建物公開2023 邸宅の記憶 基本情報
名称 | 建物公開2023 邸宅の記憶 |
会場 | 東京都庭園美術館 |
会期 | 2023年4月1日(土) 〜 6月4日(日) |
時間 | 10:00 − 18:00 |
入館料 | 一般 1,000円、大学生 800円、中高生・65歳以上 500円 |
予約 | オンライン事前予約制 |
撮影 | 写真撮影可能、動画撮影禁止 |
東京都庭園美術館 基本情報
名称 | 東京都庭園美術館 |
住所 | 港区白金台 5-21-9 |
最寄駅 | 白金台駅、目黒駅 |
休館日 | 月曜日 |
時間 | 10:00 − 18:00 (土日祝は17:30まで) |