東京では初めての大規模回顧展。写真撮影も可能になった国立新美術館の「李禹煥 / Lee Ufan」展(閉幕)

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李禹煥 / Lee Ufan

乃木坂の国立新美術館で李禹煥(リ・ウーファン)の、東京では初めてとなる大規模回顧展「李禹煥 / Lee Ufan」の開催が始まりました。

日本と韓国を代表する現代美術アーティストとして70年代からずっと第一線で活躍する李禹煥。今回の回顧展では60年代の最初期の作品に代表作の数々、そしてこの回顧展のための新作まで展示されると聞けば、これはもう国立新美術館へ行かなければなりません。

 

2022年も、多くの展覧会やイベントが開催されていますがその中でも最大級の話題になりそうなのがこの「李禹煥」展です。

みんなそう感じているのか8月10日から開幕したこの展覧会は朝から混んでいました。

当初は出展されている全59点のうち、撮影できるのは2点だけだったのですが、会期も後半になって出展作品の半分ほどが写真撮影可能になりました。

これまでは李禹煥の作品を鑑賞し、心と記憶に刻んでおく必要がありましたが、今は写真で記録に留めておくことができます。ただ会期最終盤ということで平日から入場待ちの行列ができるほど混雑しているので、どうしても他の人の姿が写り込んでしまいますた。

「李禹煥 / Lee Ufan」展の見どころと注意点を紹介します。また記事の最後では香川県の直島にある「李禹煥美術館」の様子も紹介します。

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李禹煥って?

韓国生まれで日本を拠点に活動している現代美術アーティストです。20歳ころに日本に来て大学も日本、アーティストとしての活動も日本で始めている人です。

1936年生まれですから、今年2022年で86歳。今も元気に新作を制作し、この展覧会の音声ガイドにも中谷美紀さんと一緒に声だけですが登場しています。

ある意味、日本の現代美術のスターの一人です。

関係項 − エスカルゴ

国立新美術館の前庭にはいきなり李禹煥の「関係項 − エスカルゴ」という作品が置かれています。

つい少し前まで、吉岡徳仁の「硝子の茶室」が設置されていた場所です。

▲ステンレスで出来た円筒とその脇に置かれた石がセットで一つの作品です。

しかも、この場所は新美術館の前庭なので入場料不要で誰でも鑑賞できます。展覧会の重要な出展作の一つが無料で鑑賞できるのです。

「李禹煥」展どうしようか考えているなら、まずはこれをお試しで鑑賞してはどうでしょうか。

▲横から見るとステンレスの円筒形のものが、エスカルゴつまりカタツムリのように渦を巻いていることが分かります。

▲上から見るとこんな感じ。

まさにエスカルゴでした。

▲この場所で撮影すると、六本木ヒルズ、東京タワー、それと麻布台ヒルズのビルという都心のランドマークをバックにした李禹煥作品を撮ることができます。

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夕陽のエスカルゴ

屋外に展示されているため、天候や太陽の位置などによって日々刻々とその姿、印象を変えるのも醍醐味です。

▲これは夏の夕方、沈みゆく日の光を浴びる「関係項 − エスカルゴ」。

▲こうして向こうの夕陽とエスカルゴを見ると、オブジェとしてのエスカルゴが際立って見えます。まさに ”もの派” の作品ですね。

▲エスカルゴの内部に夕陽が射し込んでいます。

中がどうなっているのか見てみましょう。

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エスカルゴの内部

実はこの「関係項 − エスカルゴ」はその内部に入って鑑賞することができます。

というか、中に入って鑑賞して始めてエスカルゴの全体を鑑賞したことになるので、必ず中も鑑賞してください。

▲中に足を踏み入れると最初は単なる鉄板かなぁと思うのですが・・・

▲中はこんな様子です。

▲このようなインスタレーションになっているとは思いませんでした。

作品の捉え方がまた違ってきます。

▲この作品、六本木や西麻布から来て正門から入るとすぐ分かるのですが、乃木坂駅から直接美術館にアクセスしていると気が付かないかもしれません。

展覧会の案内にもここに作品が展示されていると書かれていません。乃木坂駅を利用していても必ず前庭に足を運ぶようにしてください。

そもそも鑑賞している人も少ないし、中まで入って鑑賞しようという人はさらに少ないので、ゆっくり自分のペースで鑑賞できますよ。

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関係項 ー アーチ

新美術館の屋外展示スペースを使って大きく展示されているのが「関係項 − アーチ」です。

▲展覧会は立体作品を中心した前半と絵画など平面作品中心の後半に分けられています。その前半と後半を物理的にも心理的にも分けるのがこの「関係項 − アーチ」という構成です。

眺めるだけでなく、ぜひこのアーチをくぐって展覧会の次のセクションを新しい気持ちで迎えてみてください。

▲直島の李禹煥美術館の「無限門」ほどのスケール感はありませんが、コンセプトは同じというかどちらも同じ作品のバリエーションです

▲都会の李禹煥とバックには青空

美術館の建物の陰になるので、午前、日中、午後で陽の当たり方が変わります。日向のアーチが撮りたいなら昼前までに訪問したいです。

▲アーチの横には巨石が置かれています

▲本来はコンクリートなのですが、この作品のために玉砂利が敷き詰められています。

真夏だと暑さが増幅されて大変です。またヒールだと転んだりしそうなので平べったい靴を履いていきたいですね。

▲遠くから見るとアーチのスケールが分かると思います。絶対的には十分大きいのですが無限門と比べると半分以下な感じです。

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写真撮影と撮影可能な作品

開幕当初は「関係項 − エスカルゴ」と「関係項 − アーチ」の2作品だけが撮影可能でしたが、今はもっと多くの作品が写真撮影可能です。ただし動画は撮影禁止。また三脚やフラッシュの使用も禁止です。

▲会場入口に撮影可能なエリアの案内があります。

要するに前半の立体作品は撮影禁止。「関係項 − アーチ」以降の作品は写真撮影可能です。

▲「関係項 − アーチ」を観て、会場後半のエリア入口に ”ここから先は撮影可能です” という案内が出ています。

ただし「線より」という作品だけは撮影禁止です。

▲これまで撮影できなかった作品たちも撮影可能。当然展示室内はシャッター音が鳴り響いていますし、作品の周囲は人だかりができるほど混み合っています。

▲縦横が逆に展示されていると話題の「照応」も撮影可能です。もともと縦に長い作品ですが、展示する際に李禹煥先生ご本人が横にしようと言い出しので、こうして横になって展示されているそうです。

他の人の鑑賞の邪魔をしたり、作品を接写したり、立入禁止線の中に入ったりしないよう、節度を持って撮影しましょう。

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見どころと注意事項

「李禹煥 / Lee Ufan」展の見どころと注意点です。

見どころ

全部が見どころなのですが、やはり「関係項」シリーズ。ほぼ時代順に並ぶそのインスタレーションはゆっくり時間をかけて鑑賞したいです。

展示室の床一面に石の板が敷き詰められた「関係項 − 棲処(B)」は床を踏む音が響きますが気にしなくて大丈夫です。またフランスで発表された時は観客が触れることができるインスタレーションだったらしいのですが、今回の展覧会ではこの作品も手を触れることができません。

そして「関係項 − 鏡の道」という作品。これは床に鏡のようにステンレスが敷かれていてその上を歩くことができます。そうやって鑑賞する作品なのですが、床が鏡面ですから短いスカートは避けた方が良いかもしれません。

最後の作品は「対話 − ウォールペインティング」。作品名から想像する通りの美術館の壁に描かれた作品です。

▲これは2020年に森美術館で開催されていた「STARS展」に出展されていた李禹煥の作品。

壁の平面作品は今回の展覧会にも出展されていますし、手前の立体作品もそのバリエーションが出展されています。

▲この作品も再制作されたものが「李禹煥」展に出展されています。

こうしてみれば分かるように、作品も含んだ ”空間の余白” をも作品の一部とするような李禹煥なので、絵画やインスタレーションそのものと空間の持つ感触を一緒に楽しめます。

注意事項

ここまで書いてきたことをまとめますね。

・展示室内は動画撮影禁止です。写真も後半の平面作品だけが写真撮影可能です(ただし1点だけ撮影不可の作品があります)。

・手を触れてOKな作品はありません。「関係項 − 棲処(B)」もこの展覧会ではタッチ禁止です。

・足元が不安定なエリアがあるのでヒールのある靴は避けた方が良いです。

・床が鏡面の場所があるので短いスカートも避けた方が良いです。

・スマホで利用できる無料音声ガイドがあります。イヤホンやヘッドホンを持参すると良いでしょう。
無料Wi-Fiもあります。

ミュージアムショップ

お決まりのミュージアムショップですがホームページで案内されている以上に商品が置いてありました。

▲展覧会の公式図録も販売されています。Amazonでは8月16日出版予定となっていますが、現地では1週間早く販売されています


▲お決まりのTシャツやポスターなど。それとホームページので紹介はありませんが定番のトートバッグも販売されています

▲驚いたことに、京都の和菓子屋さん鍵善良房のコラボ商品まで。

鍵善良房って「Brian Eno Ambient Kyoto」でもコラボ落雁を作っています。人気が有りすぎて製造が間に合わなくなったりしていました。

こういうアート系の展覧会などとコラボするのが得意な和菓子屋さんなんですね。

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直島の李禹煥美術館と無限門

「李禹煥」展での新作(バリエーション)の「関係項 − アーチ」の別バリエーション「無限門」を紹介します。

▲香川県の直島にあるベネッセアートサイト直島。そこには安藤忠雄の設計による「李禹煥美術館」があり、2019年からこの「無限門」が展示されています

▲奥に見えるのが「李禹煥美術館」の建物。

そこから海まで芝生が広がっていて、そこに「無限門」が建っています。

▲李禹煥美術館側から見るとこのような感じ

”人生は無限の門” という考えを視覚化したものなので、美術館で作品を見てから門をくぐって人生の次のステップに向かう。そしてその先は広大な海。

素晴らしいシチュエーションですね。

▲時にはこのような神々しい光景まで演出してくれます。

ベネッセアートサイト直島の宿泊はこの画像から↓

李禹煥 / Lee Ufan展のポイント

国立新美術館での「李禹煥 / Lee Ufan」展、まさに待望のとも言える大回顧展です。

あまり見ることもなかった60年代の最初期の作品の瑞々しさにも驚くばかりですし、あっちの美術館やこっちのギャラリーで見かけてきた李禹煥の作品が一同に介している点では新しいファンも古いファンも打満足ではないでしょうか。

そして衰えを知らない創作意欲からの新作群。

2022年に絶対訪問すべき展覧会です

李禹煥展 基本情報

名称 李禹煥
会場 国立新美術館
会期 2022年8月10日(水) 〜 11月7日(月)
時間 10:00 − 18:00
入館料 一般 1,700円、大学生 1,200円、高校生 800円
予約 不要
撮影 禁止 (屋外作品だけは撮影可)

国立新美術館 基本情報

名称 国立新美術館
住所 港区六本木 7-22-2
最寄駅 乃木坂駅、六本木駅
休館日 火曜日
時間 10:00 − 18:00 (会期中の金土は20:00まで)
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