慶応大KeMCoで開催中の「エフェメラ:印刷物と表現」展は現代アートの貴重な資料・作品を見られる

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エフェメラ:印刷物と表現

慶応三田キャンパスのミュージアム「慶應義塾ミュージアム・コモンズ(KeMCo)」で展覧会「エフェメラ:印刷物と表現」を開催しています。

書籍などと違って保存を目的としない一過性の印刷物、例えばイベントの告知をするフライヤーやその場で配布するパンフレット、さらにはバースデーカードやチケットなど限られた時間で消えていく「エフェメラ」に焦点を絞った展覧会です。

そうした印刷物に価値があるのかと思ったら実は大間違いだったという展覧会でした。

▲本来の目的を超えて過去の出来事を今に伝えるだけでなく、当時の空気感まで感じ取れるようなチラシ、パンフレット、ポスターの数々。

主に60年代から70年代にかけての現代アート、現代音楽シーンの資料が展示されているのですが、そこに登場する人物の名前から当時の関係性が伺えたり、中にはチラシ自体がアート作品と化しているものもあったり。

あの狭いKeMCoの展示室にびっしり並べられてエフェメラを読み込んでいくだけであっという間に1時間2時間が過ぎてしまう密度の濃い展覧会でした。

しかもエフェメラに関心を持つ2人の現代アーティスト、河口龍夫(かわぐち・たつお)と冨井大裕(とみい・もとひろ)の二人展も同時開催です。

現代に繋がる過去のアートシーンとそれを現代に引き継ぐ作家に興味がある人にはMUSTな展覧会です。

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ROOM1 – エフェメラ

会期は2024年3月18日(月)から5月10日(金)までの約2ヶ月間。

KeMCoは土日祝が休館ですが、この展覧会では3月30日と4月20日の土曜日は特別に開館するそうです。平日の訪問が難しい人はこの土曜開館日に訪問するのが良いでしょう。

「エフェメラ:印刷物と表現」展(KeMCo, 慶應義塾大学)

▲KeMCo 3Fのルーム1がメインの会場です。

海外のエフェメラ

日本とヨーロッパで制作されたエフェメラが展示されているのでまずは海外(ヨーロッパ)のものから。

コンセプチュアル・アートの発信地として知られるオランダの画廊「Art & Project」の展覧会告知、会場パンフ、イギリスの現代美術雑誌「Studio International」の雑誌などが展示されています。

とにかく登場するアーティストの名前を見ているだけで興奮してしまいます。

「エフェメラ:印刷物と表現」展(KeMCo, 慶應義塾大学)

▲「bulletin」はその時々に開催される展覧会を告知する案内状代わりの印刷物。

宛名と消印が見えます。このままギャラリーの顧客に郵送していたのですね。

bulletin 32は1971年のアメリカのコンセプチュアル・アーティスト、ソル・ルウィットの個展の案内のようです。

「エフェメラ:印刷物と表現」展(KeMCo, 慶應義塾大学)

▲bulletin 21は松澤宥(まつざわ・ゆたか)。あの草間彌生が師と仰いだ日本のコンセプチュアル・アートの先駆者です。

郵便の宛先を見ると広尾の住所(旧羽澤ガーデンの近く)のArt & Project.。

Art&Projectの日本オフィスが広尾にあってそこに送付していたものなのでしょう。

「エフェメラ:印刷物と表現」展(KeMCo, 慶應義塾大学)

▲別のbulletinを開いたところ。

特徴的なルックスのこれはどう見てもイギリスの現代美術家ユニット、ギルバート&ジョージですね。時代的には本当に駆け出し時代の2人だと思います。

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日本のエフェメラ

太平洋戦争が終わって10年くらい、1950年代になると日本も欧米のアートの潮流とほぼリアルタイムに連動していきます。

「エフェメラ:印刷物と表現」展(KeMCo, 慶應義塾大学)

▲動く美術作品(キネティックチェーン)で知られるスイスのアーティスト、ジャン・ティンゲリーの展覧会。

南画廊という日本橋にあった伝説のギャラリーが制作した展覧会カタログです。

驚くことに7インチシングル(ヴァイナルのレコード)が付属しています。しかも、現代音楽家でオノ・ヨーコの元夫でもある一柳慧(いちやなぎ・とし)が音響構成をしています。どんな音なのか聴いてみたいですね。

上に見えるのはスイスのダダイスト、クルト・シュヴィッタースの展覧会カタログです。

「エフェメラ:印刷物と表現」展(KeMCo, 慶應義塾大学)

▲これも50年代から60年代にかけての南画廊の展覧会カタログ。

サム・フランシスにティンゲリーにケイト・ミレットにフォートリエ。

「エフェメラ:印刷物と表現」展(KeMCo, 慶應義塾大学)

▲壁に並んでいるのは70年代の南画廊の展覧会カタログです。

日本も画廊も経済的に豊かになったことを反映してか、カタログも豪華な造りになっていることが分かります。

「エフェメラ:印刷物と表現」展(KeMCo, 慶應義塾大学)

▲南画廊の展覧会案内状。

荒川修作、飯田善國、宇佐美圭司、中西夏之、三木富雄、クレス・オルデンバーグ、山口勝弘そして今回二人展を同時開催している河口龍夫と教科書レベルの名前が並んでいます。

続いて日本の現代芸術の一つの大きな拠点でもあった草月会館と草月アートセンター。

「エフェメラ:印刷物と表現」展、《WORKS OF YOKO ONO – 小野洋子作品発表会》, 1962, (KeMCo, 慶應義塾大学)

▲1962年5月24日に草月会館で開催された小野洋子(オノ・ヨーコ)の《小野洋子作品発表会》の案内。

ヨーコのメッセージとアーティストたちの名前がびっしり書かれていて、これだけで小野洋子の作品になっているのがスゴいです。

「エフェメラ:印刷物と表現」展(KeMCo, 慶應義塾大学)

▲草月会館ホールでは様々なライブやコンサートも開催されるのでジョン・ケージや高橋悠治、当時はまだ小野洋子の夫だった一柳慧といった面々のリサイタル案内状。

「エフェメラ:印刷物と表現」展(KeMCo, 慶應義塾大学)

▲これは草月アートセンターが主催するイベントのポスター。

コンサート、舞踊、映画など多岐にわたっています。

「エフェメラ:印刷物と表現」展(KeMCo, 慶應義塾大学)

▲このように決して広くない展示室にエフェメラ(印刷物)が展示されているのですが、とにかく情報量が膨大です。

じっくり時間を取って訪問したいです。その代わり今から半世紀前、60年代から70年代の世界と日本の美術や音楽の最先端の雰囲気とそれを作ったアーティストたちの活動の様子がよく分かります。

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ROOM2 – 二人展

同じフロアのルーム2では河口龍夫と冨井大裕の「二人展」を同時開催中です。

▲日本のコンセプチュアル・アートの先駆者の一人、河口龍夫と既製品を使った立体作品を作る冨井大裕との組み合わせ。

「エフェメラ:印刷物と表現」展(KeMCo, 慶應義塾大学)

▲壁に並ぶ河口龍夫の作品。

河口龍夫、「エフェメラ:印刷物と表現」展(KeMCo, 慶應義塾大学)

▲1998年の水戸芸術館現代美術ギャラリーでの展覧会「河口龍夫 − 封印された時間」のポスターを再利用した作品は今回の「エフェメラ」展のアンチテーゼともいえるもの。

冨井大裕、「エフェメラ:印刷物と表現」展(KeMCo, 慶應義塾大学)

▲床に設置された展示台に並ぶのは冨井大裕の作品。

紙幣を含む印刷物を素材にしたもので、一つ一つが個別の作品です。

冨井大裕、《another piece(KO-1)》、「エフェメラ:印刷物と表現」展(KeMCo, 慶應義塾大学)

▲このような立体の面白さ感を出した作品です。

▲ 1Fエントランスホールの突き当りでは映像が上映されていますし、自身の記憶に残るエフェメラを紹介する企画も行われています。

さらに2Fのオープンデポでは ”エフェメラとは” を考察する映像(というかプレゼンテーション)も上映されています。

これらの映像も全部見ようとすると軽く2時間コースになりそうです。

でも現代アートファンや戦後の世界のアートシーンの歴史に興味がある人には見逃せない展覧会です。

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KeMCoの場所とアクセス

実は正確にはKeMCoの場所は三田キャンパス内ではないかもしれません。

▲赤羽橋からだと桜田通りを札の辻方面へ向かい、慶應の東門も通り過ぎ、マルエツプチのその先の建物がKeMCoです。”東別館” とありますが三田キャンパス内からアクセスすることはできません。

写真は桜田通りの歩道から見たところ。出入り口はミラー張りになっていて一瞬入り方が分からないかもしれません。

KeMCoは特に慶應出身でない一般の人でも訪問することができますし、現代美術展もシリーズ化されていて新しいアートスポットとして利用していきたいですね。

エフェメラ 基本情報

名称 エフェメラ:印刷物と記憶
会場 KeMCo
会期 2024年3月18日(月) 〜 5月10日(金)
時間 11:00 − 18:00
料金 無料
休館日 土日祝 (3月30日(土)、4月20日(土)は開館)
4月1日(月)、4月30日(火)〜5月2日(木)は休館
予約 不要
撮影 撮影可

KeMCo 基本情報

名称 KeMCo (Keio Museum Commons)
住所 港区三田2-15-45
最寄駅 三田駅、赤羽橋駅
休館日 土日祝
時間 展覧会によって異なる

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