大巻伸嗣の《真空のゆらぎ》
乃木坂の国立新美術館で大規模インスタレーションで知られる現代美術家、大巻伸嗣(おおまき・しんじ)の大規模個展《大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ》が開催されています。
「存在するとはいかなることか」という問いから作り出される大巻伸嗣の空間は観る人の身体の感覚を刺激します。一度見たら忘れられないインスタレーションをいくつも発表してきた大巻伸嗣の最新の作品を見る、いや体験できる展覧会です。
しかも、この展覧会は観覧料無料なのです。誰でも予約なしにふらっと国立新美術館に入館し無料で《真空のゆらぎ》展を鑑賞できるのです。
さらに、2023年11月5日(日)、つまり文化の日の連休の最後の日曜日にはダンサーによるパフォーマンスが行われ、それも無料で鑑賞することができます。
▲こんな太っ腹な展覧会の開幕に先駆けて行われたプレビューに参加できたので、各作品を紹介するとともに、ダンスパフォーマンスの一部も紹介します。
《真空のゆらぎ》展の会期は2023年11月1日(水)から12月25日(月)まで。イルミネーションやホリデーシーズンのディナーやパーティーなどで六本木を訪れる機会が増える時期ですので、併せてこの感動的な《真空のゆらぎ》展も見ておきたいですね。
この記事では《大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ》展の見どころと注意点を紹介します。
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《Gravity and Grace》
会場の最初に目にするのが2016年に最初の作品が発表された《Gravity and Grace》シリーズの最新作です。
タイトルを無理やり日本語にすると「重力と恩寵」でしょうか。また、展覧会のキービジュアルにも使われていて視覚的に強烈なイメージを残す作品です。
▲細長い展示室の奥に置かれています。
天井まで届きそうな巨大な作品で、周囲の人間と比べるとそのサイズが分かると思います。
▲近寄って見ると単に巨大で光る物体ではではなく、文様が彫られた内部から光を発していることが分かります。
その文様も動物や植物に混じって、猿から進歩する人類の姿も。
直立し歩き始め、さらに武器となる棍棒を持った人類がさらに手にするのは・・・それがたぶんこの作品。つまり原子炉容器と原子力の火。
▲内部では強烈な光を放つミラーが上下しています。たぶん燃料棒と核エネルギーのメタファーです。
進化し棍棒を持つようになった人類が次に持ったのが原子力の火。そんな批評性を持った作品なのですね。
そしてその作品自体も大量の電気を消費することで実現しているという自己批評も含んでいます。
▲作品の周囲の床面には様々な警句が英語や日本語でテーピングされていて、光が反射することで読めるようになっています。
さらに詩も朗読されているので、目で作品を見て、耳で詩を聞き、さらに足元の警句を読んで。まさに五感を使いまくって作品を鑑賞しなければなりません。
《Gravity and Grace ̶ moment 2023》
五感をフル稼働した作品の次は回廊に展示された《Gravity and Grace ̶ moment 2023》という作品。
▲フォトグラムという印画紙の上に直接ものを置いて焼き付ける写真技法による作品です。
大型の印画紙の上に身体を横たえて制作されたもののようです。
この回廊の突き当りを右に行くとこの展覧会のための作品や展覧会構成を検討した際のドローイング、それと大巻伸嗣のこれまでの舞台芸術や様々なコラボレーションの資料が展示されているスペースです。
突き当りを左へ行くと次の作品。たぶんこの展覧会のもう一つのクライマックスです。
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《Liminal Air Time ̶ Space 真空のゆらぎ》
展覧会のタイトルにもなっている《真空のゆらぎ》。
これも広い展示スペースを専有する巨大な作品です。
▲幅が36.8mという巨大なポリエステルの布がファンで煽られて揺らいでいます。
真っ暗な室内にライトは天窓からの光だけ。時々LEDのライトが照射されるだけ。
そしてサウンドは波が砕けたり砂が擦れる海の音。
布がうねる波のようでもあり、なにか不思議な生物のようでもある空間です。
▲サイズ感はこんな感じ。
布のサイズは幅が36.8m、奥行き15mだそうです。ファンの風で揺らいでいるので時には人の身長の2倍以上、軽く3mくらいまで吹き上げられます。
ダンサーによるパフォーマンス
《真空のゆらぎ》だけでも劇的な空間なのですが、ここでダンサーによるパフォーマンスが行われます。
▲プレビューの日は女性による詩の朗読に続いて下着1枚のダンサーが登場し、舞踏のようなパフォーマンスが繰り広げられ感動させられました。
▲一般公開後の最初のパフォーマンスは11月5日(日)の17:00〜18:00でダンサーは大宮 大奨(おおみや だいすけ)。(終了しました)
ダンスパフォーマンスのスケジュール
ダンサーによるパフォーマンスの今後の予定は次の通りです。
開催日 | 時間 | ダンサー | 会場 |
11月18日(土) | 13:00〜17:30で2,3回 | 鈴木竜 | Liminal Air Space |
11月26日(日) | 11:00〜16:30で2,3回 |
鈴木竜 |
Liminal Air Space |
11月26日(日) | 11:00〜16:30で2,3回 |
子どもたち | Gravity and Grace |
12月1日(金) | 14:00と19:00の2回 | 鈴木竜 | Liminal Air Space |
12月2日(土) | 11:00 | 米沢唯/木下嘉人 | Liminal Air Space |
12月9日(土) | 11:00 | 鈴木竜 | Liminal Air Space |
12月9日(土) | 12:00 | 子どもたち | Gravity and Grace |
12月15日(金) | 14:00と19:00の2回 | 鈴木竜 | Liminal Air Space |
12月16日(土) | 未定 | 白井剛 | 未定 |
12月25日(月) | 15:00と17:00の2回 | 鈴木竜 | Liminal Air Space |
もちろんパフォーマンスを観るのも展覧会同様に無料です。
プレビューの日のパフォーマンスを観た感じでは、何年か後には伝説として語られるような大巻伸嗣とダンサーのコラボレーションパフォーマンスになるのではないかと期待しています。
なおパフォーマンスの動画撮影も禁止です。
また国立新美術館のイベント案内には ”ダンサーによるパフォーマンス(1)” とあるので、もしかしたら会期中に同じようなパフォーマンスが何回か開催されるのかもしれません。分かり次第このページに情報を追記します。
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その他の作品
《Gravity and Grace》と《Liminal Air Time ̶ Space 真空のゆらぎ》だけでもくたくたになりますが、さらに映像作品やドローイング作品も展示されています。
▲《Rustle of Existence》という17分ちょっとの映像作品。
埴谷雄高からの影響で人間の存在を言語から考察するという着想を得、自宅裏の映像に思索を重ねた実験的な作品です。
▲これまでほとんど発表してこなかったドローイング作品も大量に出展されています。
一つ一つはドローイング作品ですが大量に並ぶとインスタレーションになるのですね。
見どころと注意事項
《大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ》展の見どころと注意点です。
見どころ
やはり《Gravity and Grace》と《Liminal Air Time ̶ Space 真空のゆらぎ》の2つの巨大作品は時間をたっぷり使って鑑賞したいです。
そして《Liminal Air Time ̶ Space 真空のゆらぎ》とダンサーとのコラボレーションによるパフォーマンスも見逃せません。まずは11月5日のパフォーマンス。もし見逃してしまったら次のパフォーマンスがあるかチェックを欠かさないように。
注意事項
ここまで書いてきたことをまとめますね。
・展示室内は静止画については撮影可能です。動画撮影は全面的にNGです。
・手を触れてOKな作品はありません。
・立体作品もあるのでリュックや大きなバッグなどは展示室に入る前にロッカーにしまっておきましょう。
・《Liminal Air Time ̶ Space 真空のゆらぎ》は床の白いテープより先は立入禁止です。展示室内が暗くて見落としがちなので注意しましょう。
ミュージアムショップ
お決まりのミュージアムショップです。
▲図録は一般販売は11月20日からですが会場では既に販売しています。
図録以外にもポストカード、Tシャツ、トートバッグなど定番のグッズはひと通りあるようです。
大巻伸嗣 真空のゆらぎ
¥3,080 (2025-01-17 02:26 GMT +09:00 時点 - 詳細はこちら価格および発送可能時期は表示された日付/時刻の時点のものであり、変更される場合があります。本商品の購入においては、購入の時点で当該の Amazon サイトに表示されている価格および発送可能時期の情報が適用されます。)国立新美術館の場所とアクセス
《大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ》展が開催されている国立新美術館の場所は六本木。
ただ最寄駅でいえば地下鉄千代田線の乃木坂駅です。6番出口から新美術館直結です。
六本木の交差点からなら、外苑東通りを青山方面へ向かい東京ミッドタウンの先の交差点を左へ曲がればすぐですし、慣れた人なら龍土町美術館通りに入ってブルーボトルの前を過ぎて行けば近道もできます。
また、六本木ヒルズからも六本木通りを渡ってホテル六本木の横の小路をくねくね下っていくとあっという間に新美術館到着です。
これまでも感動的なインスタレーション作品を数多く発表している大巻伸嗣の、今回は一つの区切りになりそうな予感がする展覧会です。
こんな展覧会が無料、またイルミネーションやホリデーシーズンの開催ということで、六本木へ来たら新美術館まで足を運んでみて欲しいです。
また11月5日(日)のダンスパフォーマンスは必見。新しい伝説を目にすることになると思います。
大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ 基本情報
名称 | 大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ |
会場 | 国立新美術館 |
会期 | 2023年11月1日(水) 〜 12月25日(月) |
時間 | 10:00 − 18:00 (金土は20:00まで) |
観覧料 | 無料 |
予約 | 不要 |
撮影 | 写真撮影可能、動画は撮影禁止 |
国立新美術館 基本情報
名称 | 国立新美術館 |
住所 | 港区六本木 7-22-2 |
最寄駅 | 乃木坂駅、六本木駅 |
休館日 | 火曜日 |
時間 | 10:00 − 18:00 (会期中の金土は20:00まで) |