カメラ・オブスクラから都市風景へ。写真美術館で開催中の《即興 ホンマタカシ》はビートルズの曲へのオマージュ

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《即興 ホンマタカシ》 Revolution 9: Homma Takashi

90年代からイギリスのカルチャー誌「i-D」上で活動するなど単なる商業写真というジャンルにとどまらず写真家のホンマタカシ。

その日本の美術館としては10年ぶりとなる個展が恵比寿の東京都写真美術館で開催されています。

写真展のタイトルは《即興 ホンマタカシ》、英語タイトルでは “Revolution 9: Homma Takashi” 。この10年あまりで制作してきた作品を中心にした展示されています。

英語タイトルの Revolution 9、あるいはレボリューション9と聞くと誰もがビートルズの通称ホワイトアルバムの曲を想起すると思いますが、実際ホンマタカシはビートルズの曲へのオマージュとしてこの展覧会を構成しているようです。

▲《即興 ホンマタカシ》展の会期は2023年10月6日(金)から2024年1月21日(日)まで。

会期は長いですが早めに訪問して写真美術館の3つの展覧会をまとめて鑑賞することをおすすめします。というのは写真美術館で同時期に開催されている《風景論以後》、《TOPコレクション 何を見る?》と併せて見るとその深い意味が分かるという仕掛けになっているからです。

《何を見る?》展が10月15日まで、《風景論以後》展は11月5日で閉幕ですからそれまでに訪問したいですね。

写真展の様子はもっとレポートしたいところですが、残念ながら展示室内は撮影禁止です。

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The Narcissitic City

「即興 ホンマカタシ」展で大きなボリュームを占めるのが「The Narcissitic City」シリーズです。

この展覧会は写真美術館で開催される写真家の展覧会としては珍しく、展示室内の写真撮影が可能です。ただし動画撮影はNGです。

建築物の一室をピンホールカメラに仕立て、カメラ・オブスクラの技術を用いて世界各都市の風景を撮影したものです。

写真技術の始まりはピンホールカメラでそれが持ち運び式のカメラへと進歩、Evolutionしたのですが、それをDevolutionさせてみようという試みです。

▲撮影対象となっているはホンマタカシが生きてきた現代の都市の風景、さにらザハ・ハディド、磯崎新あるいは丹下健三といった建築家たちの代表的建築などです。

▲でもピンホールカメラで撮影するので画像は上下左右が逆になっています。

そのため見たことがあるようで実は見ていない風景の画像が得られるのです。

富士山と抽象写真

後半はここ10年あまりで制作された作品が展示されています。

▲風景写真や人物、それに抽象写真などバラエティ豊かです。

特に富士山はお気に入りのモチーフのようです。

Camera Obscura Studies

前半の展示室と後半の展示室をつなぐ繋ぎエリアにも作品が展示されています。

▲四角い壁に囲まれたエリアの四方の壁にはニューヨーク市の風景《NY》、青山から六本木の風景を撮った《Camera Obscura Studies <青山→六本木、建築で建築を撮る>》が展示されています。

これも建築物の一室からピンホールカメラで他の建築物を撮ったものです。

中央に展示されているのは《Seeing Itself》というミラーを使ったインスタレーション。即興というか偶然性に支配されながら周囲の作品を鑑賞できるというものです。

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Revolution 9

会場の中央には中に入れない小部屋が設置され、ピンホールに見立てた小穴から中を覗き込んで鑑賞します。

▲小穴の向こうに見えるのは「The Narcissitic City」シリーズの《Revolution》という作品です。

▲別の小穴から除くと「9」という文字が見えます。これも「The Narcissitic City」シリーズのは《No.9》という作品です。

この小部屋の中にはアップライトピアノやスティールドラムが置かれていて、ときどきランダムに音楽の即興パフォーマンスが行われるそうです。

ビートルズの「レボリューション9」は現代音楽のミュージック・コンクレートという手法を取り入れて制作されています。即興でなくコラージュですね。

ホンマタカシも様々な対象や技法をコラージュしてこの展覧会を構成してみたのだそうです。だからRevolution 9。

ビートルズのRevolution 9が収録された「The Beatles(通称ホワイトアルバム)」はこちら。ブルースやヘビーなロック、現代音楽まで詰め込まれた誰も異論がないはずのロックバンドとしてのビートルズの最高傑作です。


併せて観たい写真展

最初に紹介したように《即興 ホンマタカシ》展と他の展覧会を併せて観ると大きなテーマが見えてきます。

▲3階で開催されているのは《TOPコレクション 何が見える? 「覗き見る」まなざしの系譜》です。

写真とそれを見るための技術の歴史をたどるものなのですが、その流れをホンマタカシがDevolutionしたのが《即興 ホンマタカシ》展で大きくフィーチャーされている「The Narcissitic City」シリーズなのです。

▲地下で開催されているのは《風景論以後》。

《即興 ホンマタカシ》で見ることのできるのは都市の風景ですが《風景論以後》では1970年から現在に至るまでの作家たちによる様々な風景。特に元赤軍派の映画監督、足立正生による《赤軍-P.F.L.P 世界戦争宣言》に出てくるパレスチナの荒野の映像はホンマタカシが捉えた現代の都市の風景とは対極にある風景。

ホンマタカシが撮る風景を観た後に、こんどは2000年前に人類が見ていたのと変わらない人間の原風景ともいえるパレスチナの荒れ地の風景を見ることで、《風景論以後》展も《即興 ホンマタカシ》展も完結するのだと思います。

とにかく3階〜2階〜地下と展覧会を巡るとホンマタカシを軸にしてテーマが現れるという構造なのです。これは時間を取って3つ併せて観に行くしかないでしょう

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写美のミュージアムカフェ「フロムトップ」

写真展で疲れたらミュージアムカフェで一息いれたいところ。

写美のミュージアムカフェ、以前は代官山のメゾン・イチが入っていましたがパンデミックの顧客減少のため撤退。今は吉祥寺のカフェが「フロムトップ」として入っています

▲センスの良いカップに入ったコーヒー

相変わらずテラス席も利用できますし、写美での鑑賞の前後にどうぞ。美術館利用者でなくてもカフェは利用可能です。

ガーデンプレイスのカフェ

恵比寿ガーデンプレイスの三越の跡には多くのカフェも出店しています。

写美のミュージアムカフェも良いのですが、ガーデンプレイスの今話題のカフェを訪問してみるのも良いのではないでしょうか。

▲センタープラザ1Fのノースフェイスの向かいには「VERVE COFFEE恵比寿」。アメリカのサンタクルーズ発祥のサードウェーブ系コーヒーショップです。

あまり知られていませんが、飯倉片町にも近い六本木店はいつも満席状態が続く超人気店です。

▲希少性では恵比寿ガーデンプレイスのカフェスタンド「BLUE NOTE PLACE Stand」も。

南青山のジャズ・クラブ「ブルーノート東京」系列のカフェスタンドです。

普通のカフェの値段でガーデンプレイスの一等地のテラスが利用できるうえに、ニューオーリンズ風のドーナツ「ベニエ」が食べられるのが嬉しいです

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東京都写真美術館へのアプローチ

東京都写真美術館(写美)へのアプローチはなかなか劇的なのでそれも紹介します。

▲恵比寿駅から「恵比寿スカイウォーク(動く歩道)」で恵比寿ガーデンプレイスまで来て、アメリカ橋の信号を渡ったら山手線沿いに進むと東京都写真美術館の建物が見えてきます。

”TOP MUSEUM” とある建物が写美です。このまま建物の右側を進んでも入館できますが、まずは左のアーチの下からアプローチするのがおすすめです。

▲アーチの下を進むと写美の入口です。

床の文様とか空間構成とか格好いいですね。平日はビジネスパーソンが行き交うのでこんなに人のいない写真は撮れませんが、休日はたいていこんな感じです。

ここを真っ直ぐ進みながら右手を見ると・・・

▲写美の建物の外壁に写真壁画があります。

これはフランスの写真家ロベール・ドアノーの「パリ市庁舎前のキス」という作品。誰もが一度は目にしたことがある写真ですがこうして大きく引き伸ばされるとまた印象が異なります。

▲これもあまりに有名なロバート・キャパの「NORMANDY 6JUNE 1944」。

ノルマンディー半島のオマハビーチに上陸するアメリカ軍兵士。アメリカやイギリスはこうして自らの存亡をかけて全体主義と戦ったんですね。

▲日本の写真作家 植田正治(うえだしょうじ)の「妻のいる砂丘風景」。

鳥取を拠点にシュールな作品を取り続け、晩年になるほど評価が高まった作家です。

ちなみに福山雅治の「HELLO」のジャケット写真も植田正治です

▲外壁の写真壁画を見てテンションを高めながら展覧会へ向かう。写真美術館での鑑賞のルーティーンにしたいですね。

ただこのアプローチだと雨や雪の日は大変です。そんな日は恵比寿スカイウォークの終点ですぐに下りエスカレーターに乗って、グラススクエアやガーデンプレイスタワーの下を抜けて写美に行くのが良いでしょう。恵比寿駅からまったく濡れることなく写美に到着できます。

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東京都写真美術館のアクセス

このように恵比寿駅から歩くのが一番ラクだしスムーズだと思います。

▲クルマの場合は恵比寿ガーデンプレイスの駐車場が利用できますが、特に割引制度もなく割高かもしれません

東京都写真美術館についてはこちらにも情報をまとめてあります。参考にどうぞ。

即興 ホンマタカシ 基本情報

展覧会名 即興 ホンマタカシ
会期 2023年10月6日(金) 〜 2024年1月21日(日)
会場 東京都写真美術館 2F
料金 一般 700円、学生 540円、中高生・65歳以上 350円
予約 日時指定予約推奨 (オンライン予約には会員登録が必要です)
写真撮影 撮影可能

施設名 東京都写真美術館
住所 目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
最寄駅 恵比寿駅
休館日 月曜日 (月曜日の祝休日の場合は開館し翌平日休館)
開館時間 10:00 – 18:00 (木金は20:00まで)
予約 予約不要
写真撮影 原則禁止
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