200年前の盲目の大学者が残した業績を今も引き継ぐ渋谷の「塙保己一 史料館」

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塙保己一史料館

江戸時代の盲目の国学者 塙保己一(はなわ ほきいち)が編纂した古典叢書「群書類従(ぐんしょるいじゅう)」の原本が保管されている「塙保己一史料館」が渋谷の広尾高校裏、日本の国史・国学研究で定評のある國學院大學の近くにあります。

一見古いお役所みたいな外観の建物は国の登録有形文化財。保管している群書類従の原本(版木)は国の重要文化財。

そしてこの史料館の開設にはあの渋沢栄一も大きく関わっているのです。

▲翼を広げたような荘厳な建物が塙保己一史料館です。

入り口の正面に区の掲示板が目立つように建てられているのはご愛嬌ですね

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塙保己一

1746年に今の埼玉県で生まれ、1821年に亡くなった塙保己一。2021年は没後200年でした。

▲幼い頃に病気で失明するも学問の道を志し、24歳で国学者の賀茂真淵(かもの まぶち)に入門し、41歳で群書類従の最初の巻「今昔物語」を刊行し、その後亡くなるまでに666冊からなる群書類従を出版し続けた偉大な国学者です。

人に読んでもらった書物をすべて暗記するという驚異的な記憶力で、日本に残る数万冊の古文献を学び、その膨大な古典から後世に残すべきと考えた666冊を「群書類従」として出版しています。

あのヘレン・ケラーも全盲の学者の先達として塙保己一を尊敬していたそうで、戦前に来日した際にはここを訪れ塙保己一の坐像に実際に触れています

また、国内外の史料の収集や研究を行う「東京大学史料編纂所」は、塙保己一が古文献を収集、保管していた学問所「和学講談所」がその源流で、塙保己一の仕事は現代にも引き継がれているのです。

群書類従

日本の古代から江戸時代初期までの史書や文学作品を収めているのが群書類従です。

▲保存庫に置かれている群書類従の見本と塙保己一の坐像。

群書類従は和紙に印刷され和綴じで製本されています。タイトルには「文正記」と「新撰長禄寛正記」と書かれています。

ずいぶん新しく見えますが、なんと、群書類従は今でも版木から印刷、製本してもらって購入することができるのです。

江戸時代の版木なのに、重要文化財なのに、今でも現役なのです。

▲これがその版木です。

紙に黒い文字が印刷さるよう、凹凸の凸状に文字を残して周りを掘っています。よくある木版画の逆ですね。もちろん文字もこうして見ると裏文字になっています。

版木に使われているのは山桜。とても硬いので保存や耐久性に優れているのだそうです。また墨が塗られるので虫に食われることもなく200年経っても現役いられるのでしょう。

また1枚の版木に掘られている文字は原則として縦20字で横20行。つまり400字詰め原稿用紙と同じです。

実は現代でも一般的に使われている原稿用紙の20字×20字というのは、群書類従が始まりなのだそうです。

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原版保管庫

塙保己一史料館の最大の見どころは重要文化財でもある群書類従の原版が収めている原版保管庫でしょう。

総冊数666冊の群書類従の版木17,224枚、ページ数にして約34,000ページ分の版木と塙保己一が出版した他の書物の版木が保管されています。

▲ズラッと並ぶ棚に版木が収められています。

背中に巻番号とページ番号が書かれています。

これは今も要望によって摺ることがあるので分かりやすくするために書かれているそうです。

▲本棚というか版木棚が奥まで続いています。

入館料100円を払えば1階の保管庫はほぼ自由に見学することができます。特に忙しくなければ理事長さんからたいへん面白く興味深いお話を伺うこともできます。

▲これは奥の通路から窓の方を見たところ。

版木棚は左右にもこのように広がっているので、その数の多さが分かりますね。

こんな広い保管庫が1階の他に2階にも同じ広さのものがあるそうです(2階が見学不可)。

今はこの群書類従は一部あたり7,000円から、納期1ヶ月で磨り立てを頒布しています。

▲これは館内に展示されている塙保己一の銅像。

ヘレン・ケラーが触れたという銅像です。

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史料館の内部

この群書類従を保管する史料館を建設するにあたり、塙保己一と同郷の渋沢栄一が中心になって寄付を募っています。

1927年に完成ということはもうじき100年になろうという古い建物。登録有形文化財というのも納得です。

▲史料館の正式な名称は「温故学会会館」なのでキャプションにもそう書かれていますね。

左から3人目が渋沢栄一。

左端は温故学会の理事の齋藤茂三郎氏。東京に空襲がありここ塙保己一史料館にも焼夷弾が落ちたそうですが、その焼夷弾を拾って敷地の外に放り投げ、施設を火災から守ったという武勇伝の持ち主です

▲2階にはこんな大広間があり、時おり勉強会や講座などが開催されています。

直近だと「歴史と文化の散策ウォーキング(2022.3.13)」というものがありますね。渋谷・松濤・円山町・道玄坂を巡るものだそうです。

▲これは1階の原版保管庫の入り口です

▲そしてこっちは2階の原版保管庫のドア。こちらは立ち入ることはできません

史料館(温故学会会館)

特に名のある建築家が手掛けたものではありませんが、昭和初期のモダンな建築です。

▲関東大震災後に設計・建築されたものなので、耐震性などもそれなり。

また東京大空襲にも齋藤茂三郎氏の活躍などもあり耐え抜いています。

2000年に文化庁から登録有形文化財の指定を受けています。

▲コンクリートの階段に手すり。

100年近く前のものとは思えません。しっかり造ると長持ちするのですね。

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塙保己一史料館の場所

最寄り駅は渋谷駅です。都営バスの「学03」系統(日赤医療センター行き)に乗り「國學院大學前」で降りてそのまま信号も渡り200mほど先です。

隣は縁結びスポットとして有名な「渋谷氷川神社」。また史料館の向かいは広尾中学校なので、平昌冬季五輪のメダリストで北京冬季五輪にも出場している原大智くんの母校ですね。たぶん応援幕が出ています。

▲恵比寿駅から都営バスの「学06」系統に乗って「広尾高校前」で降り、広尾高校の裏に回っても行けます。渋谷駅よりこっちの方が近い気がしますね。

▲古いんだけどなんか格好良い不思議な建物。と思っていたら築100年近い登録有形文化財の建物。

館内には盲目の偉大な国学者による日本の古典の叢書の原版となる重要文化財の版木、しかも200年前の近代印刷技術以前のものなのに今なお現役。貴重な資料がしっかり守られ引き継がれていることにも感動です。

100円で見学できるのがもったいないくらい充実の史料館でした。

近くに行く機会があったらぜひ見学を。今は土日も開いていることが多いそうです。

塙保己一史料館 基本情報

施設名 塙保己一史料館
住所 渋谷区東 2-9-1
最寄駅 渋谷駅
開館日 平日 (土日も開館の場合あり)
開館時間 9:00 – 17:00
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