明治神宮外苑の再開発
坂本龍一が亡くなる直前に再開発の見直しを訴えたり、樹木の伐採本数がよく分からなかったり賛否ある明治神宮外苑地区の再開発問題。
計画通りに再開発が進むと5年後の2028年には神宮外苑の様子がすっかり変わり、再開発が完了する2036年には国立競技場と絵画館以外は今の姿を留めないほどに変わっていそうです。
再開発工事は2023年3月22日に着工してしまったので、記録のために着工直後の神宮外苑をひと通り回ってみました。
散歩がてら、今後も不定期に再開発工事の様子を記録していこうと思います。
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神宮第二球場の解体
再開発工事でまず行われるのが神宮第二球場の解体です。
予定では神宮第二球場の跡地に新しくラグビー場(新秩父宮ラグビー場)を建設するのだそうです。
▲既に工事用の仮囲いが設置され、敷地内は立入禁止になっています。
▲1961年竣工ですから築60年以上。最近は老朽化も目立っていたようですが、再開発計画があったので特に補修も行われず利用し続けていたようです。
1塁側のスタンド上に100打席以上が設置されるという大規模なものです。ただこの練習場も球場自体の解体に伴い、すでに営業を終了しています。
神宮第二球場の解体工事終了日は2024年4月30日。その日までにはここは更地になっているはずです。
写真奥に見える照明塔は神宮球場のもの。そのさらに先に見えるビルが伊藤忠商事の本社ビル。
その伊藤忠のビルも2038年には200m近い超高層ビルに建て替えられる予定だそうです。
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樹木伐採(移植)が行われる建国記念文庫
今回行ってみて驚いたのが建国記念文庫の森の工事が始まっていたこと。
▲明治神宮の「建国記念文庫」という施設とそれを囲む雑木林、それと駐輪場があるのですが、林ごとフェンスで囲われ内部で工事が始まっていました。
▲写真で奥に見えるのは言わずとしれた国立競技場。右のフェンスで囲まれている部分が建国記念文庫の森の南側です。
歩道上に桜がはみ出ていますけど、これもそのうち見られなくなってしまうのでしょう。
ここと神宮第二球場の敷地を使って新秩父宮ラグビー場になる予定です。
▲神宮外苑でも樹木の数が多い場所ですが、そうかぁここも再開発しちゃうんですね。
ともかく2023年4月時点で再開発工事が着工しているのは神宮第二球場と建国記念文庫の森でした。
そして、多くの再開発反対派が木を切るなと騒いでいるのはこの建国記念文庫の森の雑木林のことなんですよね。坂本龍一を筆頭に神宮内苑の森と勘違いしていますが。
▲100年前から明治神宮が手入れをして保存してきた神宮内苑の森。ここを維持、管理する費用を捻出するために明治神宮は外苑を貸し出しているんですよね。
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軟式グラウンドやスワローズショップ
再開発の最後に整備されそうなのが軟式グラウンドやスワローズの公式ショップがある絵画館前のエリアです。
軟式野球場
看板には総合球技場とありますが、実際はほとんど野球場。
▲東京オリンピックの時も何か施設を作っていましたが、ちゃんと原状回復し野球のグラウンドとして使用されています。
最終的には外苑テニスクラブのテニスコートがここに移転してくるみたいです。
スワローズ公式ショップとつば九郎
東京の野球ファンが気になるのはスワローズのショップがどうなるか。
スワローズファンが気になるのはつば九郎の家がどうなるか。
▲スワローズの公式ショップ、正式名称「東京ヤクルトスワローズOfficial Goods Shopつば九郎店」はちゃんと営業していました。
でもこれは新しい神宮球場内に移転するんじゃないでしょうか。ということは、あと10年はここで営業していそうです。
ここも公式ショップ同様、あと10年はこの場所でしょう。そして新しい神宮球場かその周辺に移転するのではないでしょうか。ただ移転時にはつば九郎とスワローズ間で揉めるんだろうなぁ。
神宮バッティングドーム
明治神宮外苑打撃練習場という立派な名前ですがバッティングセンターです。
▲WBCのバナーなどがあって野球景気に湧いています。平日でもけっこうお客さんが入っています。
神宮球場でプロ野球の試合がある日なんかは相当混んでいるのではないでしょうか。村上選手になった気分でバットを振った熱くなりたいですね。
でもこのバッティングセンターは再開発でどうなるのでしょう。
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神宮球場
神宮球場こと「明治神宮野球場」。
この球場は、移転する秩父宮ラグビー場と外苑テニスクラブの跡地へ移転する予定で、2031年に竣工、2032年から野球場として再開します。
▲竣工は1926年(大正15年)。100年近い歴史がある大規模競技場ですから建築的にはけっこう貴重です。
昭和はおろか大正時代から、野球だけでなく戦争や娯楽まで様々な用途で使われてきた日本の歴史が刻まれた建築物です。
秩父宮ラグビー場
この再開発で真っ先に移転するのが秩父宮ラグビー場。
▲神宮第二球場と建国記念文庫の森の跡地に秩父宮ラグビー場が移転し、新秩父宮ラグビー場として再開するのが2028年。そこから解体工事を始め、更地になったところに神宮球場が移転してきます。
▲イチョウ並木から秩父宮ラグビー場へ続くこの短いイチョウ並木は伐採されちゃうんでしょうね。このイチョウ並木はかなりお気に入りだったので残念です。
イチョウ並木
神宮外苑を代表する名所のイチョウ並木。毎年11月からの紅葉の時期には多くの見物客を集めます。
▲今、イチョウ並木の西側はテニスコートになっていてたっぷり陽が当たるのですが、テニスコートが新神宮球場になるとやはり日当たりは少なくなりますよね。
イチョウ並木は伐採しない、きちんと保全するということですが、景観を含めちょっと心配です。
右側の並木越しに見えているビルが伊藤忠商事の本社ビル。これが200mの超高層ビルになります。その隣のオラクルのビルは一体になって整備はされるけどビル自体は残るみたいです。日本オラクルといっても実際は本国オラクルの意向が強いので、ラリー・エリソン(とサフラ・キャッツ)に事情を説明して巻き込む力は明治神宮にも三井不動産にも無かったのでしょう。
ロイヤルガーデンカフェ、キハチ、シェイクシャック
イチョウ並木に沿ってロイヤルガーデンカフェ、キハチ(KIHACHI)というお洒落カフェの両巨頭、それとシェイクシャックの3店舗がありますが、これらはどうなるのでしょうか。
▲図面を見るとこの辺りは新神宮球場の敷地の一部になるようです。
新秩父宮ラグビー場が完成する2028年以降に今の秩父宮ラグビー場の解体が始まりますから、その頃にテナント3店も撤退ということになるのでしょうか。
イチョウ並木とセットだからロイヤルガーデンカフェを利用する意義があるので、例え新しい球場内などへ移転してもほとんど利用しないでしょうね。
ロイヤルガーデンカフェやキハチで、目の前のイチョウ並木や外苑の通りを眺めながらカフェや食事ができるのはあと数年。その間はヘビロテで利用してあげたいですね。
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再開発の概要
明治神宮外苑の再開発と聞いて、国立競技場や絵画館も含めた全体を再開発するのかと思っていたのですが、実際には南は青山通り、北は神宮第二球場と軟式グラウンド、東はイチョウ並木、西はスタジアム通りに囲まれたエリアの再開発でした。
要するに明治神宮の所有する敷地内ということのようです。ちなみに明治神宮の氏子総代とデベロッパーである三井不動産の会長(当時)が同一人物ということなので、まぁ内輪での再開発計画ということですね。また国立競技場を見下ろすように建つ「三井ガーデンホテル神宮外苑の杜プレミア」の土地も明治神宮が所有しています。
それぞれの施設がどのように変わるのかまとめてみます。
神宮球場
現在の秩父宮ラグビー場と外苑テニスクラブの場所に移転しホテルも併設。
完成は2031年、供用は2032年予定。
神宮第二球場と外苑ゴルフクラブ西練習場
廃止。
秩父宮ラグビー場
現在の神宮第二球場と建国記念文庫の森の場所に新秩父宮ラグビー場として移転。
完成は2028年の予定。
外苑テニスクラブ
現在の軟式グラウンドの場所に移転(?)
2036年完成予定。
軟式グラウンド(軟式野球場)
廃止
室内球技場
現在の神宮球場の場所に複合棟Bの一部として移転。
2035年完成予定。
伊藤忠商事本社ビル
事務所棟として地上38階、約190mの超高層ビルへ建て替え。
2028年完成予定。
複合棟A
現在の秩父宮ラグビー場敷地に新築される地上40階、約185mの超高層オフィスビル。
2032年完成予定。
複合棟B
現在の神宮球場の敷地に新築される約80mの高層ビル。サービスアパートメントと室内球技場。
2035年完成予定。
ロイヤルガーデンカフェ、キハチ、シェイクシャック
不明。
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再開発のスケジュール
時系列で見ていくと次のようなスケジュールになります。
2023年
・建国記念文庫撤去
・神宮第二球場解体開始
2024年
・神宮第二球場解体完了
2028年
・新秩父宮ラグビー場完成
・事務所棟(伊藤忠商事ビル)完成
2032年
・新神宮球場完成
・複合棟A(超高ビル)完成
2035年
・複合棟B完成
・中央広場完成
2036年
・テニス場他の絵画館前エリア完成
・再開発完了
ラグビー場と伊藤忠のビルが完成するのが5年後、全部完成するのは10年以上先という長大な計画です。その時自分が何歳になるっているのか思わず計算してしまうくらいです。
再開発工事中のイチョウ並木がどうなるのか、外苑を使った様々なイベントがどうなるのか、外苑のいつもの散歩やジョギングコースがどうなるのか。実際その時にならないと分からないことばかりです。
明治神宮外苑の最新の状況は大きな変化があればその都度記事にしていこうと思います。
参考リンク
最後に再開発に関する参考情報をまとめておきます。なんと、公式サイトまで用意されていました。
神宮外苑地区まちづくり公式サイト
https://www.jingugaienmachidukuri.jp/
https://www.jingugaienmachidukuri.jp/green/
東京都都市整備局
https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/bosai/toshi_saisei/saisei07.htm
https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/bosai/toshi_saisei/saisei07_qa.html
三井不動産
https://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/news/2023/0217/