いま恵比寿の写真美術館で観られる2つの写真展。土門拳の「古寺巡礼」と「深瀬昌久レトロスペクティブ」。その見どころは?

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東京都写真美術館

写美の愛称で知られる東京都写真美術館。恵比寿ガーデンプレイスにあって写真専門としては日本で初めての美術館です。

2023年の春、ここ写美では二人の日本の伝説的な写真家の展覧会が開催されています。

一人は土門拳、もう一人は深瀬昌久。対照的な2人の写真家の代表作を観られる機会です。リニューアルされた恵比寿ガーデンプレイスの探索も兼ねて春休みに足を運んでみてはどうでしょう

▲恵比寿駅から「恵比寿スカイウォーク(動く歩道)」で恵比寿ガーデンプレイスまで来て、アメリカ橋の信号を渡って山手線沿いに進むと東京都写真美術館の建物が見えてきます。

アーチの中を進んだ先が写真美術館です。心躍るような劇的なアプローチ。そして床の文様とか空間構成とか格好いいですね。平日はガーデンプレイスタワーで働く外資系やIT関連のビジネスパーソンが行き交うのでこんなに人のいない写真は撮れませんが、休日はたいていこんな感じ空いています。

▲アプローチの途中には写真壁画があります。

ロベール・ドアノーの「パリ市庁舎前のキス」やロバート・キャパの「NORMANDY 6JUNE 1944」といった誰もが一度は目にしたことがあるだろう有名な写真に並んで、日本の写真作家 植田正治(うえだしょうじ)の「妻のいる砂丘風景」もあります。

鳥取を拠点にシュールな作品を取り続け、晩年になるほど評価が高まった作家です。これがあるのでアーティスティックな写真も展示される場所なのだということが強く意識させられます。

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土門拳の古寺巡礼

まず最初に「土門拳の古寺巡礼」。

日本で最も有名な写真家の一人、土門拳のライフワークでもある「古寺巡礼」の第一集が刊行されたのが1963年。刊行60周年を記念した展覧会です。

ちなみに土門拳は港区立飯倉小学校(ずいぶん前に麻布小学校と統合し閉校)に在校したこともあるそうで、麻布ガイド所縁の著名人です。

▲地階1階の展示室前です。

今回の展覧会では「古寺巡礼」に収録されたカラーの代表作と室生寺の釈迦如来坐像をはじめとするモノクロームの仏像写真など約120展が展示されています

▲これは展示室前のロビーのフォトスポット。

ちゃんと左側が空いているので、そこに立って記念写真を撮ることができます。

しかし、写真撮影が可能なのはここまで。展示室内は全面的に写真撮影も動画撮影も禁止です。

展示されている作品については実際に訪問して確かめてみてください。

土門拳記念館

飯倉小学校に入学した土門拳ですが出生地は山形県酒田市。

いまそこには土門拳記念館があり、土門作品7万点が収蔵されています。

▲飯盛山公園の池の畔に建つ土門拳記念館。

直線的な外観、正面には水面・・・建物の設計は谷口吉生です。なんでも父親の谷口吉郎と土門拳が親しかったのだそうです。

▲中庭に置かれているのはイサム・ノグチの彫刻作品「土門さん」、庭園の作庭は勅使河原宏、銘板やチケットは亀倉雄策という日本のオールスター的な才能が結集した美術館です。

池の向こうに桜が見えますが、この写真を撮ったのはゴールデンウィークの時期。酒田ではその時期が桜の時期なのです。

写真美術館で土門拳を観たなら、次は酒田、土門拳記念館への旅行などいかがでしょう。

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深瀬昌久1961-1991 レトロスペクティブ

2012年に亡くなってから10年以上、しかし今も再評価が進み残された作品に対する関心は高まるばかりの伝説的な写真家、深瀬昌久の大回顧展です。

しかも浅野忠信主演、マーク・ギル監督による伝記映画が製作中というタイミングでの回顧展ですから、観るなら今しかない! そんな展覧会です。

▲深瀬昌久は1934年に北海道の美深町(びふかちょう)の写真館で跡継ぎとして生まれています。しかし跡を継いで写真師となるか写真家となるかの選択で後者を選び、東京に出て日大芸術学部に入学します。

そして1960年代から写真家としての活動を始め、荒木経惟や細江英公、森山大道らと同列に語られるほどの活躍をしていたカルト的な写真家です。

▲当時の妻である洋子を被写体にした「洋子」シリーズ、美深の一家を撮った「家族」シリーズ、代表作でもある「烏(鴉)(Ravens)」、裸の自画像「ブクブク」などで高い評価を得るものの、1992年に不慮の事故でカメラを使えなくなり写真家としての活動を終えています。

今回の展覧会ではその深瀬昌久の代表作シリーズを網羅した、まさにレトロスペクティブな展覧会です。

なお、この展覧会は写真撮影も動画撮影も禁止です。土門拳のようなフォトスポットも用意されていません。唯一撮影できるのは2F展示室エレベーターホールのポスターだけ。「洋子」シリーズの一連の作品で、勤務先の画廊へ出勤する洋子をアパート(草加松原団地)の窓から撮ったものです。

2022年にマーク・ギル監督、浅野忠信と瀧内公美が主演の映画「Ravens」が2022年春にクランクインするという情報があり、iMDB(Amazon傘下の映画データベース)によると今も制作中のようです。もしかしたら今回の展覧会も映画の公開予定に合わせて企画されたものかもしれません。

映画の公開は未定のようですが、深瀬昌久の主要な作品を全部見られる「1961-1991 レトロスペクティブ」展は良い機会です。伝説の(もしかしたら不運の)写真家、深瀬昌久の回顧展を見ておきましょう

世界的に評価の高い深瀬昌久なので海外でも写真集が出版されています。ただ今回の展覧会の図録も作品集の決定版となりそうです。

Amazonで購入可能な作品をいくつか紹介します。

60年代からずっとプライベートな写真を撮り続け、でもプライベートだからこそ普遍的な射程の長いテーマとなっているのが深瀬昌久の写真作品の魅力です。そんな深瀬昌久の大回顧展とも言える「1961-1991 レトロスペクティブ」展、2023年春のおすすめの展覧会です。

さらに写美からも近い恵比寿のギャラリーMEMでも5月21日までの会期で深瀬昌久の写真展「眼差しと遊戯」が開催されます。MEMでの展覧会は無料ですので写美で回顧展を観るのに併せてそちらもどうでしょうか

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土門拳と深瀬昌久

「土門拳の古寺巡礼」の会期は3月18日から5月14日まで、「深瀬昌久レトロスペクティブ」は3月3日から6月4日まで。

5月14日まで会期が重なっているので、訪問するなら5月14日までが良いかもしれません。

▲王道の写真家とカルトな写真家、それぞれの代表的な作品が観られる機会ですから、できれば両方を観ておきたいですね。

写美ではセットの入場券も販売しているのでそれを購入するとお得です

深瀬昌久展 | 眼差しと遊戯

恵比寿のギャラリーMEM(エムイーエム)では2023年4月15日(土)から5月21日(日)までの会期で「深瀬昌久展 | 眼差しと遊戯」が開催されています。

こちらは入場無料、写真撮影も可能です。

 

▲この展覧会では「鴉」、「洋子」、「サスケ」という代表的なシリーズからセレクトされた写真、それと深瀬昌久関連の資料などが展示されています。

▲写美に比べれば展示される作品の数は少ないですが、その代わりとても濃密な写真が並んでいます。

MEMはNADiff a/p/a/r/tのビルの3F。写真美術館からビール坂を下って10分ほどのところです。

写美と併せてどうぞなのですが、5月3日から7日まではGW休廊になります。GWに訪問するなら前半です。

写美のミュージアムカフェ「フロムトップ」

写真展で疲れたらミュージアムカフェで一息いれたいところ。

写美のミュージアムカフェ、以前は代官山のメゾン・イチが入っていましたがパンデミックの顧客減少のため撤退。今は吉祥寺のカフェが「フロムトップ」として入っています

▲センスの良いカップに入ったコーヒー

相変わらずテラス席も利用できますし、写美での鑑賞の前後にどうぞ。美術館利用者でなくてもカフェは利用可能です。

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リニューアルした恵比寿ガーデンプレイス

写真美術館のある恵比寿ガーデンプレイスは開業から30年近く経つこともあり、2022年に大幅なリニューアルがされています。有名な恵比寿三越が撤退したり、新しいブランドが入ったりして以前とはかなり様子が変わっています。

写真美術館の訪問前後に新しくなった恵比寿ガーデンプレイスを探索すると面白いと思います。また写美で鑑賞中、写真に興味がないパートナーを遊ばせておくにもぴったりです。

リニューアルした恵比寿ガーデンプレイスの概要やおすすめスポット、お土産などはこちらの記事が詳しいです。

土門拳の古寺巡礼展 基本情報

タイトル 土門拳の古寺巡礼
会場 東京都写真美術館
会期 2023年3月18日(土) 〜 5月14日(日)
休館日 月曜日 (5月1日は開館)
開館時間 10:00〜18:00
料金 一般 1,100円、学生・65歳以上 900円、中高生 700円
事前予約 日時指定予約推奨

深瀬昌久レトロスペクティブ 基本情報

タイトル 深瀬昌久 1961-1991 レトロスペクティブ
会場 東京都写真美術館
会期 2023年3月3日(金) 〜 6月4日(日)
休館日 月曜日 (5月1日は開館)
開館時間 10:00〜18:00
料金 一般 700円、学生 500円、中高生・65歳以上 350円
事前予約 日時指定予約推奨

東京都写真美術館 基本情報

住所 目黒区三田 1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
最寄駅 恵比寿駅から徒歩約7分
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