渋谷だから開催できた、文化的ジェンダーを超える人々の展覧会「装いの力 − 異性装の日本史」@松濤美術館(閉幕)

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松濤美術館「装いの力 − 異性装の日本史」

渋谷の松濤美術館で2022年9月から10月30日までの開催されている「装いの力ー異性装の日本史」展。性の越境を可能とする「装いの力」について考えていみようという展覧会です。

男らしい/女らしさとは何なのか、伝統的な性区分で規定された装いを超える”異性装” の歴史を振り返りながら、現代の異性装の裏に見える人間の存在そのものへの讃歌までを一気に見せる、公立美術館とは思えないような攻めた展覧会です。

「ちがいをちからに変える街。」を標榜し、同性婚も認められるような多様性を推進している渋谷とその区立美術館である松濤美術館だからこそ実現できた企画です。

▲開催期間は9月3日から10月30日までの約2ヶ月間ですが、10月2日までの前期と10月4日からの後期に大きく別れています。

さらに前期も後期も2週間ごとに一部の展示が変わるという忙しい展覧会です。気になる人は2週間ごとに訪問しないといけません。

正直この秋に東京で開催される展覧会の中では白眉だと思っています。

毎週金曜日は夜20時まで開館していますから、仕事帰りに時間を取ってでも訪問するのをおすすめします

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古代から江戸時代の異性装

展覧会は第1会場(地下1階)からスタート。

▲第1会場のメインビジュアルは「巴御前」

武者の姿で木曽義仲と一緒に戦った女性です。2022年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では元AKB48の秋元才加さんが巴御前を演じていました。

▲第1会場では「1章 日本のいにしえの異性装」、「2章 戦う女性 − 女武者」、「3章 ”美しい”男性 − 若衆」、「4章 江戸の異性装 − 歌舞伎」、「5章 江戸の異性装 物語の登場人物・祭礼」とう構成で展示が行われています。

日本の古事記ではヤマトタケルが女装して熊襲兄弟を襲うのですから国の始まりから異性装の伝統があるんですよね。

また異性装というと歌舞伎の女形ですが、その成立過程もかなり複雑なものだったようです。女性NGだったから男が女装してという単純なものではなかったのですね。これはこの展覧会で始めて知りました

この第1会場の展示は前期と後期、さらにその中でも2週間ごとに展示替えがあります。

近現代の異性装

第2会場は美術館の2階。

▲「6章 近代における異性装」、「7章 現代における異性装」そして「8章 現代から未来へと続く異性装」という構成です。

6章の近代というのは明治時代以降。異性装や同性愛が精神的な病とみなされていた時代ですね。

7章の現代は戦後の時代から高度成長期くらいまで。でもまだ”ゲイボーイ” みたいな呼称で興味の対象としてしか見られていなかった時代です。

▲第2会場のキービジュアルはブリジット・バルドー。でもバルドーが通天閣の下でポーズ取るのかな? どこか変ですね。

じつは森村泰昌の「セルフポートレイト/バルドーとしての私2」です。

森村泰昌作品も第2会場に登場していますから

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記念撮影はドラァグ・クイーンたちと

第2会場入り口には会場内で唯一の撮影可能スポット、「記念撮影パネル」が設置されています。

▲ギリシャ神話に出てくるような絵をバックに3人のドラァグ・クィーンがいます。

貝殻の前に立ってポーズを取れば準備OK。

できるだけ変な顔をして撮影に臨みましょう。

▲こういう場での撮影は普通はフラッシュNGですが、この撮影パネルは逆にフラッシュをONにして撮影します。

この澄ました顔したクィーンも、フラッシュを焚いて撮影すると一変。

▲じつはこんな顔でした。

▲他の2人も同じ。ノーフラッシュのすまし顔とフラッシュ時の変顔(素顔?)との落差がおかしいですね。

ここでもフラッシュのありなしで、最低2枚は記念写真を撮ってみましょう。

ちなみに展示室内は撮影禁止です。もちろん撮影禁止の表示がある場所と立ち入り禁止区域も撮影禁止です。

階段、回廊、ブリッジは撮影可能ですが、動画撮影、フラッシュの使用、三脚/一脚、自撮り棒の使用は禁止です

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展示作品例

展示室内は撮影NGですが、どのような作品が展示されていたか、利用可能な画像などを使って紹介します。

▲会場内の案内表示使われているこれは豊原国周の錦絵。歌舞伎の女形を描いたものです。

日本史に現れる異性装として誰もが真っ先に思い浮かぶのは女形でしょう。

▲同じく会場内の案内図に使われているこれは月岡芳年の錦絵。

芸者衆に女装した男性だと思われますが、この作品は後期からの展示です。

▲これは大正から昭和にかけて活躍した高畠華宵(たかばたけ かしょう)の少女画。

少女向け雑誌「少女の友」の口絵ですが、黒い衣装の人物は ”男装の麗人” ですね。でもこの程度の倒錯なら昭和初期でも普通に少女雑誌に登場していのですね。

▲で、これはさっきのBB(べべ)に扮した森村泰昌。バルドーがあるのですから当然マリリンも展示されています

そして女性が男性の衣装をまとう「リボンの騎士」や「ベルサイユのばら」。逆に男の娘の代表「ストップ!!ひばりくん!」なども展示されています。

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映像やサウンド

映像作品なども展示されています。

▲「8章 現代から未来へと続く異性装」では京都メトロを中心に活動する ”DIAMONDS ARE FOREVER” の絢爛豪華なインスタレーションも。

そのインスタレーション用に制作されたCDもあり、オンラインで視聴することができます。

QRコードは会場でしか配布していないようなので、QRコードが印刷されたチラシをもらって帰るのを忘れずに。また会場での視聴はご遠慮くださいとのことです。

▲ピーター(池畑慎之介)のデビュー作で実験映画の松本俊夫の長編作でもあるカルト映画「薔薇の葬列」も。

会場で流れるのは予告編だけですが、1960年代末の新宿の空気感を合わせて見ると良いかもしれません。

▲他にも東郷健と天井桟敷による ”ゲイ・リヴォリューションのためのレコード”「薔薇門」やロッキー・ホラー・ショーの日本版とかの資料展示もあります。

▲異性装に含めてよいのかわかりませんが、大野一雄の資料も展示されています。

やはり7章、8章は圧巻ですね。ダイバーシティや性自認がどうとか言われるようになるずっと前から、自身の存在をかけてアピールしてきた人たちの貴重な記録です。

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関連グッズと関連資料

最後、販売されている関連グッズと、入手できる関連資料を紹介します。

▲DIAMONDS ARE FOREVERのTシャツ。

3色ありますがラメ入りのブラックだけ値段が高く、売り切れのサイズも出てきています。

▲日本でダイバーシティとかドラァグ・クィーンを語る時に避けて通れないダム・タイプの故古橋悌二。ダムタイムの「S/N」は会場で流れていますし、松濤美術館の地下ホールでの上映会もありました(締切済み)。

古橋悌二の「メモリアル」など異性装や性の多様化に関する書籍なども販売されているので、良い機会ですし目を通してみたいですね。

またDIAMONDS ARE FOREVERのインスタレーションではスーザン・ソンタグの「《キャンプ》についてのノート」からの引用があったりました。”キャンプ”のさらに過剰な実装例がDIAMONDS ARE FOREVERなんでしょうね。

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松濤美術館の場所と渋谷駅前

松濤なので最寄り駅でいえば京王井の頭線の神泉駅になります。

入り組んだ住宅街の中を通ることになりますが、案内が充実しているので迷うことはないと思います。神泉駅から徒歩5分です。

▲でも、渋谷駅からも普通に歩けます。なんと、渋谷駅前には「装い力 − 異性装の日本史」展の大きな看板が出ているではありませんか。知ってました? 渋谷区としてもこの展覧会を区にとっての重要なイベントとして認識しているのでしょう。

ここから今年いっぱいでなくなる東急本店を通り ”松濤文化村ストリート” を500mほど歩くのが一番わかり易い松濤美術館への道順でしょう。

また美術館に駐車場はありませんが周辺にはいくつもパーキングがあるのでクルマでも大丈夫です。

あと隈研吾が設計したトイレがある「鍋島松濤公園」もすぐ近くです。

装いの力 − 異性装の日本史 基本情報

名称 装いの力 − 異性装の日本史
会場 渋谷区立松濤美術館
会期 前期 2022年9月3日(土)〜10月2日(日)
後期 2022年10月4日(火)〜10月30日(日)
入館料 一般 1,000円、大学生 800円、高校生・65歳以上 500円、小中 100円
予約 平日は予約不要
週末と最終週は日時指定予約制

渋谷区立松濤美術館 基本情報

施設名 渋谷区立松濤美術館
住所 渋谷区松濤 2-14-14
最寄駅 井の頭線神泉駅、渋谷駅
休館日 月曜日
開館時間 10:00 – 18:00
入館料 展覧会による。金曜日は渋谷区民無料
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