Chim↑Pom展:ハッピースプリング
六本木の森美術館(六本木ヒルズ内)で始まった「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」。日本のアート・コレクティブ(アート集団)であるChim↑Pom(チンポム)の代表作や新作が展示される回顧展です。
何かとお騒がせもあったあのChim↑Pomも ”回顧” されるほど活動を続けているんですね。
と思いきや、この回顧展開催中の4月27日から「Chim↑Pom from Smappa!Group」とユニット名に改名しています。
▲東京ではずいぶん久しぶりにも感じるChim↑Pomの展覧会ということもあり、オープニング初日から多くの観客が詰めかけていました。
▲この写真は5月中旬の平日の会場。会期も残り少なって平日でもとても混んでいるようになりました。
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▲週末だけでなく平日でも入場規制がかかって入場待ちの行列ができることもあります。週末はずっとこんな状態です。
▲中に入っても行列。これは公衆電話で会話を聞く「オレオレ」の順番を待つ行列です。
▲実は行列は2列になっていて、左が「オレオレ」を待つ行列、右は「「性欲電気変換装置エロキテル6号機」の順番を待つ行列です。
▲ただ入場規制で会場内の人数に制限がかかっているのと、入口近くの作品に人気が集中しているので、「道」などの作品は行列になるようなことはありません。
この「ハッピースプリング」が始まってから10回は足を運んでいますが、後半になってどんどん話題になってお客さなんが増えています。
Chim↑Pomの展覧会行かなくちゃと考えている人、煽るわけでじゃないですけど、もう残り少ないのですぐにでも出かけた方が良さそうです。
Chim↑Pom(チンポム)
Chim↑Pomと書いて”チンポム” と読みます。2005年に結成されたアート集団で、原子力/原発、フェミニズム、格差、貧困など社会的問題にも積極的にあからさまなメッセージを発信している、日本では珍しい集団です。
渋谷駅の岡本太郎の壁画「明日の神話」事件、広島での「ピカ」事件など物議を醸す作品も多いので、そうした話題を目にしたこともあるでしょう。
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ハッピースプリング会場
会場に行ってまずビックリするのがその構成だと思います。
まるで工事現場のような会場に置かれているのは「ビルバーガー」という作品。
解体されたビルのパーツで作ったハンバーガーですね。
かなり初期の作品です。
▲ネズミの剥製を黄色く彩色し頬に赤い丸、背中に黒い縞を施し尻尾はジグザグな「スーパー★ラット」の代わり?に展示されているネズミの剥製。
「スーパー★ラット」を諸般大人の事情でここには展示できなかったみたい・・
かと思いきや、ちゃんと会場にスーパーラットが展示されていました。
よく探さないと見つからないので探してみてください。何匹もいますよ。
梯子の上には丸い穴が空いていてどこかに繋がっているようです。
ということで、手指をしっかり消毒して梯子を上ってみましょう。
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「道」
上に登ると広い空間が拡がっていました。
▲アスファルトが敷かれたここは「道」。この写真は開幕初日に訪れた時のもの。最初はこうでした。
この空間自体が私有地でも公道でもない「道」とみなした作品で、「道」の利用方法にも独自のレギュレーションが定められています。
会期中にはこのスペースを使ったイベントなども企画されています。
▲開幕初日はなかったのにいつの間にか追加されていた作品? オブジェ?
開幕後にエリィがこの場でサイン会をして、その記念(?)に置かれたみたいですね。
エリィの連載が掲載されている文芸雑誌「新潮」。段ボールにはバックナンバーやコピー用紙に無造作に書かれたエリィのサインも突っ込まれていました。
それとエリィのサイン入り「はい、こんにちは」を売ると書いてありますね。
ご自由にお座りくださいと書かれているので、ありがたく利用させてもらいました。
とにかく展示点数も多くて内容も多いので疲れるんですよね。
▲「一緒に Pray for Ulraine」。こんなパフォーマンスも行われていたようです。
こうしたフットワークの軽さもChim↑Pomらしいです。
増殖しカオス化する「道」
▲いろいんなパフォーマンスが行われ開幕1ヶ月でこんなになっています。5月末の閉幕時にはどうなっているのでしょうか。
▲「給水所」というのも追加されています。向こうの自転車も何かのパフォーマンスの痕跡ですね。
▲相撲の土俵みたいなのも2つ出来ていました。 ”エリィと相撲を取ろう!” みたいなパフォーマンスをしたのかもしれません。
被害に遭われた方の名前は ”キクチ” さんらしいです。
ウッドベースと鍵盤ハーモニカ(ピアニカ)とドラムのトリオが演奏していて、真ん中では暗黒舞踏を想起するパフォーマーがいたり、派手にバック転するパフォーマーがいたり。あとパソコン作業しているフリをしているパフォーマーもいれば、なにかカードに絵やメッセージを描いているパフォーマーもいたり。
要するにフェリーニ的な道化とフリークスな世界を演出したいのかなぁ。
▲左の寝転がっている人は寝ているのではなくて「固まって動かない人」を演じているパフォーマーです。
向こうで腕立て伏せしているように見えるのは「踊り狂いながらChim↑Pomの宣伝をする人」を演じているようですね。
▲帰り際にもう一度みたら寝転がっている人は寝る向きを変えていました。腕立て伏せの人は逆立ちをしていました。
この2人はこの日だけの登場(もしかしたら単なる一般客かも)だと思います。日によっていろいろなイベントがこの「道」で行われているみたいです。
Chim↑Pomメンバーの即身仏になるというパフォーマンスの様子を彫刻にした作品です。
これは「道」の一角から穴を覗き込んで鑑賞します。
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明日の神話と岡本太郎
Chim↑Pomの名前が広く報道されたのは、渋谷駅の岡本太郎の壁画「明日の神話」にベニヤ板の作品を付け加えた事件でしょう。
▲岡本太郎の原水爆をテーマにした作品であり最高傑作とも言われる「明日の神話」。これが渋谷駅に展示されるようになるまでの経緯も一つの物語ができるくらいです。
そんな作品に福島での原発事故を想起させる場面が描かれたベニヤ板が付け加えれたのがその事件。
その作品「LEVEL7 feat.『明日の神話』」も展示されています。
また写真で手前に見えているのは福島第一原発で撮影された「レッドカード」という作品です。
▲この事件をきっかけに南青山の岡本太郎記念館でChim↑Pomによる「PAVILION」展が開催され、その時に岡本太郎記念館の壁に ”殺すな” という文字が描かれました。
もちろん岡本太郎の「殺すな」のオマージュです。
左の写真はつい最近のもの。だいぶかすれましたがまだ読めます。
右のは3年くらい前。まだだいぶ文字が残っていましたね。
東京で常設され無料で観られるChim↑Pom作品なので、六本木ヒルズから足を延ばして岡本太郎記念館もどうぞ。六本木ヒルズから ”ちぃばす” を使って 「南青山六丁目」で降りればすぐです。
▲「日本のアートは10年おくれている。世界のアートは7、8年おくれている」。
2008年に恵比寿のアートスペース「NADiff a/p/a/r/t」にギャラリーが開設された時のプロジェクトのものです。
▲さらに10年後の2018年に同じ場所で「日本のアートは」を開催していて、これはその時に抜き出した床の一部。これは今も恵比寿のNADiff a/p/a/r/t に常設展示されているので機会があったら探してみてください。
▲切り出した穴の方にもしっかり Chim↑Pomのサインがあります。
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ヒロシマ
もう一つの物議を醸した作品が「ヒロシマの空をピカッとさせる」。
▲原爆ドームの上空に「ピカッ」という文字を飛行機雲で描くという作品です。
もちろん良識ある人たちからは大顰蹙ですが、Chim↑Pomとしての現状への想いというかプロテストがあるからこその作品ですね。
▲平和のシンボルにもなった折り鶴を山のように積み上げた作品「パビリオン」。
中に入ることもできます。
▲ヒロシマはChim↑Pomにとってもずっとテーマになっている重い場所。
会場内にはパソコンが置かれたブースがいくつも設置されています。パソコンにはこれまでのChim↑Pomの活動を報じたメディア、Chim↑Pomへの批評などがPDFが保存されていて、それを自由に閲覧できるようになっています。
今回の展覧会「ハッピースプリング」でもヒロシマをテーマにした作品が多く展示されています。
▲これは広島に投下された原爆の残り火を絶やさず燃やし続けた「平和の火」を使った「We Don’t Know God」という作品。
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Chim↑Pomの代表作
他にも代表作と呼べるような作品が展示されています。
中に入って遊ぶことができる体験型インスタレーション。
空いていればすぐ体験できますがそうでなければ時間予約が必要です。
▲右側の黒いボックスが「性欲電気変換装置 エロキテル6号機」。果てることのない人間のエロパワーを電気に変換してエネルギー問題を解決しようとする機械。
左側の大きな街灯を点灯させることができます。
▲会場内に貼られているピンクチラシ(風俗への勧誘チラシ)に電話番号が書かれているので、そこに電話するとエロキテルが動いて街灯が光るというインスタレーションです。また上のフロア「道」に置かれた街灯も一緒に光ります。
見ていると、何だか分からないままスルーしている人の方が多いけど、やってみると楽しいですよ。
▲「USA ビジター・センター」というツリーハウスから「ジ・アザー・サイド」の映像を観ているところ。
いかにもアメリカ的な名前の安全な建物から、貧困や格差を象徴するメキシコ国境の様子を見るという皮肉が効いた作品ですね。
福島県の帰還困難区域内で開催されているけど一般の人々は本展を実際に訪れることができない “観に行くことができない” 展覧会。私たちはその様子を想像するしかありません。
ここでモニターに表示されているのは Don’t Follow the WindのWebサイト。実際にパソコンやスマホからアクセスすることができます。サイトにアクセスして2015 や2020をクリック(タップ)するとメッセージを聞くことができるので試してみてください。
▲東京の景色(夜景)を見ながら福島の展覧会を想像するという作品です。
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Chim↑Pomの新作
ハッピースプリング展では全部で7点の新作が展示されています。
▲2020年の(ほぼ)ロックダウンされた東京の街をビルボードに感光させた「May, 2020, Tokyo」。
少し前に東京都写真美術館で展示されていましたね。
▲これはエリィのモノローグが聴けるサウンド・インスタレーション。
金三昧(カネザンマイ)
そしてChim↑Pom自身も批評の対象です。
▲展示スペースを出たミュージアムショップには軽自動車が売られていました。
名付けて 「Chim↑Pom Car」。
アートを生業とする美術館、それに乗っかる自分たち自身。そんな構図に自戒を込めての作品でしょうか。
そしてボンネットが開いているんだけど、エンジンがない!
下に積まれているのはエリィの写真集「エリイはいつも気持ち悪い」。ガチャが当たると写真集が貰えるのかもしれません。逆に外れだと在庫処分で写真集と押し付けられるのかもしれませんが。
▲あと展覧会のカタログにはLPレコードが付いているようです。
オーディオガイドが収録されるようですが、オーディオガイドのリミックスってなんでしょう?
でもLPが付いて2,450円というのは大判振る舞いですね。
なお、このカタログは第一巻。会期終了後に、会期中のイベントなども含んだ完全版カタログが第二巻として刊行されるそうです。
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くらいんぐみゅーじあむ
画期的なことに、会場内の展示エリア手前の場所に「くらいんぐみゅーじあむ」という託児所が開設されています。
子育て中の人々が気軽に美術館を訪れアートを鑑賞することができるようにというプロジェクト。
今のところ開所日は金土日の3日間で予約も必要です。ただクラウドファウンディングの達成金額によっては最大週6日まで開所することができるそうです。
子どもが小さいからと二の足を踏んでいる方、ハッピースプリング展には託児所がありますよ。
虎ノ門の共同プロジェクト・スペース
今回の「ハッピースプリング」展、実は会場は森美術館だけではありません。もう1ヶ所サテライト的な会場があります。
展覧会を開催するまでに美術館とChim↑Pomとの間で立場や見解の相違があり、それについて様々な立場から見解を語る場とする目的で「ミュージアム+アーティスト共同プロジェクト・スペース」が設けられています。
タイトルは「排除されても駆除されない」
They can exclude us, but they can’t exterminate us.
We are Super Rat
なんとも挑戦的なタイトルです。
まだ開幕したばかりなので映像作品《ハイパーラット》、《スーパーラット》(これは森美術館会場でも上映しています)、それと黄色くて頬に赤い丸、背中に黒い縞を施し尻尾はジグザグな「スーパー★ラット」。スーパーラットがいるし内部は撮影禁止です。
▲プロジェクト・スペース会場への入場自体は無料ですが、森美術館で「ハッピースプリング」を鑑賞した人だけが入場可能です。
さらに入場には予約が必要で、その予約ができるのは森美術館の特設カウンターだけ。そこで訪問したい日にちと11, 12, 13, 14, 15, 16時のどの時間かを指定して予約をします。
森美術館で入場予約券をもらったら自分でプロジェクト・スペース会場へ予約した日時に訪問します。
▲場所は虎ノ門ヒルズのすぐ近く。入場予約券の裏面に詳しい行き方が書かれているのでまず迷うことはないと思います。
森美術館からだと日比谷線の虎ノ門ヒルズ駅まで移動なので案内通りに30分で移動することができます。
こちらの会場は総入れ替え制なので1日で60人くらいしか入場できなさそうです。絶対見たいという人は早めに森美術館で予約しておくのが確実でしょう。
それよりもう一か所会場あるということを忘れずに。ハッピースプリング展を鑑賞予定の際は、この虎ノ門会場も見る前提で予定を立ててくださいね。
Chim↑Pomの作品
Chim↑Pomを勉強してから行くか、観てから気なる本を買うか。
Chim↑Pomの著作や作品集などはAmazonからも購入できます。
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チケット情報、アクセス
チケット購入方法
森美術館のチケットの入手方法は2つ。
一つは六本木ヒルズのチケットサイトで購入する方法。最初に会員登録をするかヒルズIDが必要なのが面倒ですが、いったん登録すればHILLS APP(ヒルズアプリ)を使った入場ができるので便利です。
iOS版ヒルズアプリ(App Store)
Android版ヒルズアプリ(Google Play)
もう一つは六本木ヒルズ森タワー3階の美術館・展望台チケットで購入する方法です。ただし当日枠に空きがある場合だけです。
あと森美術館の「MAMC(メンバーシッププログラム)」に入れば予約不要で入館することができます。森美術館を年に2回以上訪問するならMAMCへの入会も検討してみてください。
森美術館へのアクセス
まず六本木ヒルズへのアクセスですが最寄り駅は日比谷線六本木駅。六本木ヒルズ側改札(広尾側)から出れば直結です。
大江戸線六本木駅を利用の場合はいったん地上に出て六本木ヒルズに向かいます。
また渋谷駅から都営バスの都01系統で新橋行きに乗り「六本木駅前」で降りればほぼ向かいが六本木ヒルズですし、「RH01六本木ヒルズ行き」なら文字通り六本木ヒルズ直行です。利用しやすいルートを使ってください。
六本木ヒルズに着いたら蜘蛛みたいなオブジェ「ママン」がある66プラザに出て大屋根広場を目指してください。映画館や大屋根広場の手前の小さい丸い建物(ミュージアムコーン)が美術館入り口です。週末ならたいてい行列しているか、付近でここだけヒルズのスタッフが立っているのですぐに分かると思います。
▲そしてミュージアムコーンから3Fに上ってブリッジを渡り、チケット・インフォメーションで入館手続きします(紙チケットの場合)。
春休みからゴールデンウィーク明けまで3ヶ月の会期ですが、閉幕が近づけばどんどん混み合うのがこうした展覧会です。
少しでも空いている早い時期に訪問して、ゆっくりじっくりChim↑Pomのメッセージを感じ取りたいですね。
Chim↑Pom展:ハッピースプリング 基本情報
名称 | Chim↑Pom展:ハッピースプリング |
会場 | 六本木ヒルズ内 森美術館 |
会期 | 2022年2月28日 〜 5月29日 会期中は無休 |
開館時間 | 10:00 – 22:00 (火曜日のみ17:00まで) |
入館料 | 大人1,600円、高校大学1,100円、4歳〜中学500円、65歳〜1,300円 (平日 オンライン料金) 土・日・祝や窓口購入は別料金 料金詳細はこちらから |