日本の人形がアートの中心に躍り出るまでの歴史を辿る展覧会「私たちは何者?ボーダレス・ドールズ」@松濤美術館

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松濤美術館「私たちは何者?ボーダレス・ドールズ」

渋谷の松濤美術館で2023年7月1日から8月27日(日)まで開催されている「私たちは何者?ボーダレス・ドールズ」展。日本での人形の歴史を振り返ることで人間と芸術のあり方まで見えてくる、そんな展覧会です。

雛人形、呪い人形、フィギュア。さらに生人形(いき・にんぎょう)や蠟人形、マネキンなど多様な種類の人形を振り返ることで日本の立体美術の流れを振り返っています。

▲開催期間は7月から8月末の約2ヶ月間ですが、7月30日までの前期と8月1日からの後期に別れて、一部展示替えがあります。

まずは前期の展示を鑑賞してみました。

毎週金曜日は夜20時まで開館していますから、夏休みを使ったアート巡りはもちろん、仕事帰りの美術鑑賞にも最適です

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2階展示室

この展覧会は展示室内の撮影は禁止です。

展覧会が始まる2階展示室から展示内容を紹介します。

▲2階へ上がるエレベーターの案内板。

人形が美術作品として認知され始めた20世紀初頭の作品が使われていますが、展示も平安時代から戦後のリカちゃん人形まで、各時代の日本の人形が展示されています。

展示構成は

第1章 それはヒトか、ヒトガタか

第2章 社会に組み込まれる人形、社会をつくる人形

第3章 「彫刻」の登場、「彫刻家」の登場

第4章 美術作品としての人形 − 人形芸術運動

第5章 戦争と人形

第6章 夢と、憧れと、大人の本気と

竹久夢二が制作した人形やその影響を受けた中原淳一の人形など意外なものもありますし、平櫛田中(ひらくし・でんちゅう)のような彫刻家の ”美術品” としての人形などもあって、バリエーションの豊かさは驚くばかりです。

▲展覧会では古代から20世紀末までの人形が展示されていますが、中には今のモラルからすれば到底許容できないようなものもあります。ただ、人形の歴史をありのままに紹介するという企画者の意図もありそのまま展示されています。

地下1階展示室

2階で古代から戦後の高度成長期直前までの人形を鑑賞したら次は地下1階の展示室へ。

▲地下展示室での展示は次の3章からなる構成。

第7章 まるでそこに「いる」人形 − 生人形

第8章 商業 ☓ 人形 ☓ 彫刻 = マネキン

第10章 ヒトガタはヒトガタ

ここでは江戸時代に見世物として発展した生々しい「生人形(いきにんぎょう)」、彫刻家の協力を得て商業ベースで制作されたマネキンなどの大型の人形が紹介されています。

▲地下1階展示室前にはフォトスポットがあって記念撮影ができるようになっています。

この第2会場の最後は60年代に耽美的な球体関節人形で大きな影響を与えた四谷シモンの人形、ロシアのウクライナ侵攻を受けて制作されたドストエフスキーの蝋人形などとともに村上隆とBOME(海洋堂)によるフィギュが並んでいます。

特に村上隆のフィギュアは”スーパーフラット”な日本の浮世絵やオタク文化の要素を人形として結実させ、新しいアート表現として世に問うた画期的なもの。

それまで見てきた人形たちが、人間を表現する芸術手段だったということを再認識させるという構成だったということが最後の最後で理解できる構成です。

毎回斬新な視点からアートと人間の関わりを見せてくれる最近の松濤美術館らしい素晴らしい展覧会でした。

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18禁の人形たち

地下1階の第2会場を見終わったら最後は1階展示室で第9章です。

▲案内してくれるのは、いわゆるラブドールの「アンジェ・つばさ」。

9章のタイトルは「ピュグマリオンの愛と欲望を映し出せ!」。ピュグマリオンは彫刻の女性像に恋をしたギリシャ神話に出てくるキプロスの王様。ということで内容も何となく想像が付きますね

▲会場は1階。ロッカーの隣のドアを開けて入ります。

性的な表現を含む人形が展示されているので高校生を含む18歳未満は見られません。

ラブドールというある特定の目的のために製作された人形、それと秘宝館に展示されていた精巧だけどなんとなくユーモラスな人形が展示されています。

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関連グッズと関連資料

最後、販売されている図録を紹介します。

▲今回の「私たちは何者?ボーダレス・ドールズ」が販売されています。

松濤美術館を設計した異端の建築家、白井晟一グッズが多くて本展関連はこの図録くらいです。

人形というと呪い人形とか、いつの間にか髪が伸びているとか、魂が入ってしまうので捨てるときはお寺や神社でとかいろいろ奇譚が伝えられていますが、この展覧会にも注意事項があります。

不可解な現象や霊的現象が身の回りに発生しても今回の展示、イベントとは一切関わりがありません

だそうです。展覧会の鑑賞は自己責任でどうぞ!

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松濤美術館の場所とアクセス

松濤なので最寄り駅でいえば京王井の頭線の神泉駅になります。

入り組んだ住宅街の中を通ることになりますが、案内が充実しているので迷うことはないと思います。神泉駅から徒歩5分です。

渋谷駅から閉店した東急本店前まで行って ”松濤文化村ストリート” を500mほど歩くのが一番わかり易い松濤美術館への道順でしょう。

また美術館に駐車場はありませんが周辺にはいくつもパーキングがあるのでクルマでも大丈夫です。

あと隈研吾が設計したトイレがある「鍋島松濤公園」もすぐ近くです。

私たちは何者?ボーダレス・ドールズ 基本情報

名称 私たちは何者?ボーダレス・ドールズ
会場 渋谷区立松濤美術館
会期 前期 2023年7月1日(土)〜7月30日(日)
後期 2023年8月1日(火)〜8月27日(日)
入館料 一般 1,000円、大学生 800円、高校生・65歳以上 500円、小中 100円
土・日曜日、祝休日及び夏休み期間は小中学生無料
毎週金曜日は渋谷区民無料
予約 平日は予約不要
週末と最終週は日時指定予約制

渋谷区立松濤美術館 基本情報

施設名 渋谷区立松濤美術館
住所 渋谷区松濤 2-14-14
最寄駅 井の頭線神泉駅、渋谷駅
休館日 月曜日
開館時間 10:00 – 18:00 (金曜日は20:00まで)
入館料 展覧会による。金曜日は渋谷区民無料
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