南青山は骨董通りのギャラリー「AKIO NAGASAWA AOYAMA」とそこで開催中の写真家ヴィヴィアン・マイヤー(Vivian Maier) ”Portrait”展 を紹介します。
AKIO NAGASAWAは写真集を主体に出版していて、ギャラリーが銀座と南青山にあります。
銀座の方は大御所系、南青山の方は新進、マイナーな写真家の展示を行っているようです。
今回はアメリカの女性写真家ヴィヴィアン・マイヤー(Vivian Maier)の展覧会ということで駆けつけました。
ちなみにこのギャラリーが開いているのは木曜、金曜、土曜日だけ。行ける時に行かないとヴィヴィアン・マイヤーが見れない!
ヴィヴィアン・マイヤーとは?
1950年代からアメリカのストリートとそこに集い人々を撮りつづけてきたストリート写真家です。
でも無名な写真家というよりむしろ世間にはまったく知られていない一般人でした。
その存在が知られるようになったのは死後の2007年頃から。
John Maloofという人の ”VIVIAN MAIER – HER DISCOVERED WORK” という個人ブログとFlickrに写真がアップされ始め、2010年にはかなり話題になった写真家です。
要するに10年前までは誰も知らない写真家でしたが、2011年には最初の個展が開催され、2013年には「ヴィヴィアン・マイヤーを探して」という映画が公開(日本公開は2015年)。一部では注目の写真家というわけです。
実は私たちは10年前にその存在を知り、たぶん日本で最初にヴィヴィアン・マイヤーを紹介しているんですよね。当時の記事から引用します。
実際にブログに掲載されている写真を見てもらうと分かるが、1950年代から90年代にかけてのアメリカの、特にシカゴの人々が主な被写体。
まるで、もう一つのロバート・フランクの「The Americans」のようでもある。実はVivian Maier については未だ良く分からないことが多く、ヨーロッパからの難民の娘として1926年にニューヨークに生まれ、2009年に亡くなるまで、乳母としての仕事をしながら、ひたすら写真を撮り続けていたようである。
その彼女の作品が知られるようになった経緯は、”VIVIAN MAIER – HER DISCOVERED WORK” に詳しく書かれているが、要するにオークションで売却された遺品中にあったフィルムを見てみたら、このような作品だったということ。
その数、現像済みフィルムだけで10万枚。未現像のフィルムがさらにまだ3万枚もあるそうである。ブログにアップされている写真はまだまだ一部で、これからさらに遺された写真が紹介されていくものと思われる。
また同時に、彼女の人生がどのようなものだったのか、何故これほどの写真に情熱を傾けることになったかなども徐々に明らかになっていくのだろう。<中略>
他の写真から乳母(Nanny)もしていたらしいと推測されているようだが、当時のアメリアで乳母(というか家庭教師)という職業に就いていたということは、それなりの教育を受けた知的な女性だったのだろうとも思われる。
2011年時点ではこのくらいしか分かっていなかったのですが、その後のドキュメンタリー映画「ヴィヴィアン・マイヤーを探して」では、もっと詳しいことが描かれています。
ヴィヴィアンが家庭教師をしていた子どもたちも(もう大人ですが)出てきて貴重な証言をしています。
今回は ‘Portrait” というタイトル通り、ヴィヴィアン自身が写っている写真だけの展示です。
作品としては市井の人々のスナップが多いヴィヴィアンですが、ヒッチコックが自分の映画にちょこっと登場するように、普通のスナップのようでよく見るとヴィヴィアンが写っている写真が展示されています。
ということで、思い入れのあるヴィヴィアンの写真展が比較的近所で開催されているので期待満々で訪問してきました。
AKIO NAGASAWA AOYAMA
骨董通り(正しくは高樹町通り)から少し入ったビルの2階がAKIO NAGASAWA。
1階はチョコレート屋さんですがその前を通り過ぎて階段から2階へ上がります。
▲ギャラリーのある2階へ上がる階段。ビル自体がスタイリッシュでオシャレですね。
ヴィヴィアン・マイヤーの写真たち
骨董通りから奥まった場所ということもあり、あまりお客さんはいません。
ゆっくり鑑賞することができます。
スマホでセルフィーが簡単に撮れてしまう現代と違って、カメラマンですらないヴィヴィアンはこうやって鏡やガラスを上手く使ってポートレートを撮っていたのですね。
▲ギャラリー内の反対側の作品が写り込んでしまっていますが、これはヴィヴィアンの自宅(あるいは住み込み先?)の浴室です。
この浴室は彼女の写真にたびたび登場するお馴染みの部屋です。
当時カラーフィルムで撮影しているということは、金銭的にはあまり不自由していなかったことが伺われます。
▲構図が凝っていたり、影と遠近法を上手く使っていたり。単なるスナップ写真家ではない才能が分かります。
向こう側の赤いドレスが表紙の作品が最新の写真集です。
詳しくは公式サイトをどうぞ。
▲これは家庭教師先の庭先だと思いますが、かなり変人だったヴィヴィアンのことですから単なる他人の庭先の可能性もあります。
AKIO NAGASAWA AOYAMAの場所
骨董通りといえば骨董通りなのですが奥まった場所にあるので探すのが難しいかも。
分かってしまえば表参道駅のB1出口から徒歩5分です。
目印はこの倉沢ビルのポール。
このポールの下の小路を入ります。
このビルの2階がAKIO NAGASAWA AOYAMAです。
AKIO NAGASAWAは木金土曜日しかギャラリーを開けていませんし、13時から1時間ほどお昼休みでギャラリーを閉めてしまうので、行くならお昼直前か夕方以降がベターです。
1950年代から1990年代まで、アメリカはシカゴのストリートを撮りつづけたヴィヴィアン・マイヤーの写真展は2020年11月いっぱい。
まだまだ日本での知名度は低いですが、普通の人の目線で古き良き時代だったアメリカの普通の光景とその裏の闇まで写し取ってしまった彼女の作品をぜひ見てもらいたいです。
AKIO NAGASAWA / AOYAMA
港区 南青山 5-12-3
定休日:日月火水曜日、祝日
営業時間:11:00 – 19:00